赤痢菌、肺炎杆菌、ペスト菌、腸炎エルシニア、偽結核菌

赤痢菌
赤痢菌は、グラム陰性の通性嫌気性杆菌である。鞭毛(べん毛)、芽胞、莢膜(きょう膜)をもっていない。高熱や消毒液に弱い性質をもつ。

 

 赤痢菌の病原性
赤痢菌が含まれた食品を食べるといった、経口感染によって赤痢が引き起こされる。

 

感染した赤痢菌は、粘膜の細胞の中に入り込んで増殖を行う。そして、大腸の粘膜に多くの潰瘍をつくり、下痢などの症状が引き起こされる。

 

赤痢によって起こる下痢には、血液などが混じっており、便が赤色っぽくなる場合がある。

 

 赤痢菌に対する予防法
水道がしっかりと整備されている地域では、赤痢菌の感染は起こりにくいとされている。しかしながら、個人ごとに衛生管理に気をつけることが望ましい。

 

 

肺炎杆菌
肺炎杆菌は、グラム陰性で通性嫌気性の杆菌である。鞭毛(べん毛)と芽胞をもっていないが、莢膜(きょう膜)をもつ。口腔、上気道、腸管などに存在する常在細菌である。

 

肺炎杆菌には、ペニシリン系抗生物質などのいくつかの抗生物質に対する抵抗性が備わっている。そのため、日和見感染を引き起こす場合がある。

 

 肺炎杆菌の病原性
肺炎杆菌は、肺炎、髄膜炎、腹膜炎などの炎症、尿路感染症などの感染症、敗血症などの疾患を引き起こす原因となる。

 

 肺炎杆菌に対する治療
肺炎杆菌に対する治療法として、抗生物質の投与があげられる。

 

 

ペスト菌
ペスト菌は、グラム陰性であり、通性嫌気性の杆菌である。鞭毛(べん毛)と芽胞をもっていない。消毒液、乾燥、高温、日光などに弱い性質をもつ。また、ペスト菌の菌体の周りには、エンベロープというものが存在する。

 

 ペスト菌の病原性
ペスト菌は、ネズミなどのげっ歯類の動物に感染している。これらの動物に感染しているペスト菌は、ノミの吸血によって媒介される。ペスト菌によって、人に引き起こされる疾患には、腺ペスト肺ペストがあげられる。

 

・腺ペスト
腺ペストの場合、ノミの吸血によってペスト菌が皮膚から侵入する。そして、侵入したペスト菌によって、リンパ節に出血性の炎症が起こる。さらに、リンパ節腫が引き起こされる。

 

さらに、ペスト菌は血液を介して体中に広く散らばる。そして、肝臓や肺などの内臓にも出血性の炎症を起こす。最終的に、ペスト菌は血液中で増殖し、患者を死に至らせる。

 

・肺ペスト
肺ペストの場合、ペスト菌によって肺に炎症が生じる。その患者の咳などの飛沫には、ペスト菌が含まれている。その飛沫によって、ペスト菌の感染が広げられる。気道などから感染を起こし、出血性の肺炎を引き起こす。

 

 ペスト菌に対する治療
ペスト菌に対する治療法として、抗生物質の投与があげられる。

 

 ペスト菌に対する予防法
ペスト菌が流行している地域では、ネズミの駆除やワクチンの接種などの予防法がとられる。

 

 

腸炎エルシニア
腸炎エルシニアは、グラム陰性を示す通性嫌気性杆菌である。ペスト菌よりもやや大きめのサイズをもつ。哺乳類の動物が、腸炎エルシニアの保菌者となる。腸炎エルシニアは、食中毒の原因となる。

 

腸炎エルシニアが人に感染した場合、感染した人に急性大腸炎を引き起こす。腸炎エルシニアによる急性大腸炎の症状は、虫垂炎の症状に似ている。

 

 腸炎エルシニアに対する治療
腸炎エルシニアに対する治療としては、抗生物質の投与があげられる。

 

 

偽結核菌
偽結核菌は、ネズミなどのげっ歯類に感染する細菌である。まれにではあるが、人に感染することがある。

 

 偽結核菌の病原性
偽結核菌は、ネズミなどのげっ歯類の動物に感染する。偽結核菌に感染した動物の脾臓(ひぞう)と肝臓には、結核のような病変が現れる。