真菌と細菌の違い、真菌の形態

こちらのページでは、「真菌と細菌の違い」と「真菌の形態」について、それぞれ解説していく。

 

真菌と細菌の違い

真菌には細菌と違うところがいくつかある。そのうち、主なものを以下に示す。

 

●細菌

核膜 : なし
染色体 : 1つ
小胞体 : なし
ミトコンドリア : なし
細胞壁の主な成分 : ペプチドグリカン

 

●真菌

核膜 : あり
染色体 : 複数
小胞体 : あり
ミトコンドリア : あり
細胞壁の主な成分 : βグルカン、キチン、マンナン

 

真菌の形態

真菌の基本となる形には、糸状である菌糸と、球形の細胞である酵母様細胞とがある。

 

菌糸

 

真菌の多くは、胞子をつくる(「胞子」についてはこのページの下の方で解説している)。

 

真菌が再生を行う場合、まず真菌の胞子が発芽する。発芽した真菌の胞子は、端の部分から、菌糸を形成しつつ成長を行う。

 

真菌の成長は、伸びている菌糸のそれぞれの末端部分から始まる。この末端部分での成長のことを末端成長という。

 

菌糸は、伸び続けても分裂することはない。菌糸は、多数の枝分かれをつくる。そして、菌糸同士がからまるように集まって、菌糸体という菌糸のかたまりを形成する。

 

菌糸のうち、動物や植物の内側や培地に入り込み、栄養を取り入れるものを栄養菌糸という。また、外側に向かって増えている菌糸のことを気中菌糸という。

 

酵母様細胞

 

真菌には、球のような形の細胞である酵母、あるいは酵母様細胞の形態をとる酵母型真菌が存在する。

 

酵母は、基本的には出芽という方法で増殖する。出芽の場合、細胞の表面の一部分が外側に突き出る。その部分は、小型の細胞(娘細胞)になる。

 

さらに、もともとの細胞(母細胞)の中の核が分裂し、そのうちの1つが娘細胞の中に送られる。娘細胞はしだいに大きくなる。ある程度の大きさになった娘細胞は、母細胞から切り離される。

 

出芽酵母

 

出芽の方法によって増殖する酵母のことを出芽酵母という。

 

分裂酵母

 

細菌と同じように二分裂によって、分裂することで増える酵母も存在する。その酵母のことを分裂酵母という。

 

仮性菌糸

 

酵母型真菌には、培養の環境によって、菌糸のように長く伸びた形を示すものが存在する。この菌糸のようなものを仮性菌糸という。仮性菌糸は本物の菌糸ではない

 

二形性

 

真菌の形態には、菌糸の形態である菌糸型と、酵母の形態である酵母型とが存在する。真菌のほとんどは、自身のおかれた環境によっては、菌糸型と酵母型との2つの形態をとる場合がある。

 

菌糸型と酵母型の2つの形態をとる場合があることを、二形性という。

 

胞子

 

ほとんどの真菌が、胞子をつくる。胞子の形は真菌によって異なる。胞子の存在は、真菌の増殖などに大きく関わるものである。

 

胞子の種類を大きく分けると、有性胞子無性胞子とに大別できる。

 

有性胞子

 

真菌は、動物と同じく性別がある。違う性別をもつ真菌同士の接合によって、それぞれの染色体が混ざり合って、有性胞子が形成される。有性胞子の種類には、卵胞子子嚢胞子接合胞子担子胞子がある。

 

無性胞子

 

無性胞子には、以下のような種類が存在する。

 

 [胞子嚢胞子]
胞子嚢胞子の場合、菌糸から胞子嚢柄という側枝が伸びている。胞子嚢柄には、袋の形をした胞子嚢がつくられる。胞子嚢の内部で、胞子が数多く発生する。

 

 [分生子]
分生子の場合、菌糸から分生子柄というものが伸びている。そして、分生子柄の先端で胞子がつくられる。この胞子が成熟した場合、その胞子は離れる。

 

胞子の形成の仕方によって、分生子は以下のような種類に分けられる。

 

 ・分芽型分生子
 分生子の先端部がふくらんで、胞子が生成される。

 

 ・切断型分生子
 分生子の先端部が切り離されるような形で、胞子が生成される。

 

 ・分節方分生子
 分生子柄が切り離されることで、胞子が生成される。

 

 ・フィアロ型分生子
 分生子の内側の方に向けて、胞子が生成される。

 

 ・トレト型分生子
 分生子柄の先端部にある小さい穴から、胞子が生成される。

 

 ・シンポジオ型分生子
 分生子柄の末端部分に胞子が生成され、胞子を形成する場所が前方に移動する形で胞子をつくっていく。

 

 ・硬膜分生子
 菌糸の中間部や末端部分で、厚めの膜をもつ胞子が生成される。

 

細胞壁

細菌と同じく、真菌にも細胞壁がある。真菌がもつ細胞壁の主な成分として、βグルカンキチンマンナンの3つがあげられる。

 

βグルカンは、グルコースとグルコサミンとの化合物である。キチンは、N-アセチルグルコサミンの化合物である。マンナンは、マンノースの化合物である。

 

また、細菌の細胞壁と違い、真菌の細胞壁にはペプチドグリカンが含まれていない