泌尿器系の構造と働き、腎細胞がん、ウィルムス腫瘍、膀胱がん

泌尿器系の構造と働き

 

 腎臓の構造
腎臓は、左右一対になっている。左右の腎臓の間には脊柱がある。

 

左右の腎臓のうち、どちらか一方がなくなっても、残った腎臓だけで、腎臓としての機能をしっかりと維持することができる。この場合、残った腎臓は肥大化する。これを代償性肥大という。

 

腎臓には、脊柱側に向いている部分に腎門という場所がある。腎臓のうち腎門以外の部分は、頑丈な皮膜で包み込まれている。また、この腎門を通して、血管や尿管が出入りしている。

 

腎臓のうち、腎臓の皮膜に近い部分を皮質という。反対に、腎臓の中心部に近い部分を髄質という。

 

腎臓の中には、腎小体(マルビギー小体)と尿細管とが組み合わさって存在する。腎小体は、毛細血管のかたまりである糸球体を、袋状のボウマン嚢(糸球体嚢)が包み込む形で構成されている。

 

糸球体に送られた血液は、糸球体で濾過(ろか)される。濾過された血液からは、尿の原液である原尿ができる。原尿は、糸球体から尿細管へと送られる。

 

糸球体に送られた物質が濾過されるかは、その物質の分子の大きさでほぼ決定する。分子が大きい物質であるほど、糸球体で濾過されないことが多い。

 

糸球体から尿細管に送られた原尿のうち、ほとんどが尿細管の周りの毛細血管によって再吸収される。再吸収されなかった原尿は、腎臓の中心に近いところにある腎盂という場所へと送られる。

 

腎盂に送られた尿は、尿管を通って膀胱に向かう。

 

 腎臓の働き
腎臓がもつ働きは、血圧・電解質・水の調節、体外への老廃物の排出などである。

 

 膀胱
腎盂から尿管を通って送られてきた尿は、一度、膀胱に溜め込まれる。その後、尿道を通り、体の外へと排泄される。

 

 

腎がん
悪性腫瘍のうち、腎臓から発生するものには、腎細胞がん(グラヴィッツ腫瘍)、ウィルムス腫瘍があげられる。

 

 腎細胞がん(グラヴィッツ腫瘍)
腎細胞がん(グラヴィッツ腫瘍)は、血行性転移を起こすことが多い。腎細胞がんが血行性転移した場合、肝臓や骨などの他の器官に、がんの転移巣がつくられる。

 

腎細胞がんでは、腫瘍に壊死や出血などが現れる場合がある。また、成人に発病する腎がんのうち、ほとんどが腎細胞がんとなっている。

 

・腎細胞がんの症状
腎細胞がんの場合、高カルシウム血症、血尿を生じることがある。また、赤血球をつくるのに関わっているエリスロポエチンが異常に多くつくられることがある。この結果、赤血球増殖症が引き起こされる。

 

・腎細胞がんの治療
腎細胞がんの治療法としては、腎臓摘出術といった外科的治療があげられる。

 

 ウィルムス腫瘍
腎がんに属する悪性腫瘍の1つであるウィルムス腫瘍は、幼児が発病することが多い腎がんである。

 

・ウィルムス腫瘍の症状
ウィルムス腫瘍での症状として、腹部が腫れあがることがあげられる。また、ごくわずかだが、血尿が起こる恐れもある。

 

・ウィルムス腫瘍の治療
ウィルムス腫瘍の治療として行われるものには、化学療法、放射線治療、腎臓摘出術があげられる。

 

 

膀胱がん
膀胱に生じるがんの場合、膀胱上皮からがんが生じる移行上皮がん(尿路上皮がん)であることが多い。

 

・膀胱がんの症状
膀胱がんを発病すると、排尿時に痛みを感じる排尿痛や、排尿の回数が多くなる頻尿を起こすことがある。また、
無症候性血尿が現れる。

 

・膀胱がんの治療
膀胱がんの場合、経尿道的腫瘍切除術(TUR)と尿路変更術、もしくは膀胱全摘出術などの外科的治療が、治療法としてあげられる。さらに、外科的治療に加えて、化学療法や放射線治療が行われることもある。