糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群
糸球体腎炎
腎臓における炎症のうち、主に糸球体が侵されるものとして糸球体腎炎がある。
糸球体腎炎の原因、急性糸球体腎炎
糸球体腎炎は、A群β溶血性レンサ球菌(A群β溶レン菌)などの病原体が体内に侵入し、上気道などに感染することがきっかけで発病する。この場合に発病する糸球体腎炎は、急性の糸球体腎炎である。
急性糸球体腎炎の場合、成人に比べて小児に発病することが多い。また、急性糸球体腎炎が発病するのは、A群β溶血性レンサ球菌が感染してから約1~3週間後となっている。
糸球体腎炎の症状
糸球体腎炎によって、腎臓の機能が妨げられる。これによって引き起こされる症状として、タンパク尿、浮腫、血圧の上昇、血尿などの症状があげられる。
上記の他、血圧の上昇によって急性心不全が起こり、死に至る危険性がある。また、腎臓の機能の障害によって、尿へと老廃物を送り出すことができず、尿毒症を発病することもある。
・慢性腎炎
糸球体腎炎の症状の1つであるタンパク尿が、1年以上続いている場合、その糸球体腎炎は慢性腎炎と呼ばれる。
慢性腎炎の場合、病変が糸球体だけにとどまらず、尿細管にまで進行する。また、糸球体における変化も増加する傾向にある。
糸球体腎炎の治療
糸球体腎炎の治療法として、感染の予防、食塩・水分・タンパク質を制限する食事療法があげられる。
また、高血圧を起こすと、糸球体腎炎の予後が悪くなる。そのため、高血圧に対する治療として、降圧薬などの薬剤の使用が必要になる場合がある。
腎盂腎炎
腎炎のうち、細菌の感染が原因で炎症が起こるものを化膿性腎炎という。この化膿性腎炎に属する疾患の1つとして、腎盂腎炎がある。
腎盂腎炎は、男性に比べて女性が発病することが多い。これは、男性に比べて女性の方が尿道が短いことが、理由としてあげられる。
細菌が腎臓にたどり着く経路
炎症の発生に関わる細菌が腎臓にたどり着く経路には、下行性感染と上行性感染とがある。
・下行性感染
炎症の発生に関わる細菌が腎臓へとたどり着く経路のうち、血液の流れを通してたどり着く経路を下行性感染という。
・上行性感染
炎症の発生に関わる細菌が腎臓へとたどり着く経路のうち、膀胱から尿管に登ってたどり着く経路を上行性感染という。
何らかの原因(妊娠、結石など)によって尿が流れにくくなると、腎盂や尿管に尿のうっ滞ができることがある。この場合、細菌が尿管を通って、腎臓の実質や腎盂に感染し、そこに病変がつくられる恐れがある。
腎盂腎炎の症状
腎盂腎炎の症状を、急性期と慢性期とに分けて述べる。
・腎盂腎炎の急性期での症状
腎盂腎炎の急性期での症状として、背中か腰での鈍痛(にぶく重苦しい痛み)、発熱が起こる。また、腎盂腎炎の急性期では、腎臓での機能障害が確認されることは少ない。
・腎盂腎炎の慢性期での症状
腎盂腎炎の慢性期では、腎臓に存在する糸球体と尿細管とで構成されるネフロンという構造の破壊が進められる。その結果、腎不全を発病する。その一方で、症状が起こらない場合も多い。
ネフローゼ症候群
高脂血症、体全体の浮腫、低タンパク血症、高度であるタンパク尿の4つが組み合わさった症候群として、ネフローゼ症候群がある。
ネフローゼ症候群の発病
ネフローゼ症候群は、以下のようなメカニズムで発病する。
①:糸球体の基底膜にて、異常が発生する。
②:①により、尿中へと送られる血漿タンパクの量が増える。
③:②によって、高度のタンパク尿が起こる。
④:高度のタンパク尿が持続することで、血清に含まれるアルブミンの量が減る。
⑤:④によって、低タンパク血症が引き起こされる。
⑥:⑤により、血症における浸透圧が下がり、水分の再吸収が減る。
⑦:⑥により、間質液が増やされ、高度である浮腫が体全体に発生する。
また、低タンパク血症が起こることで、肝臓でのタンパク質の合成が亢進される。さらに、タンパク質の合成の亢進が関係し、肝臓での脂質の合成も亢進される。これにより、高脂血症が引き起こされる。
ネフローゼ症候群の治療
ネフローゼ症候群の治療法として、副腎皮質ステロイドという薬物を使用した内科的治療があげられる。