病原性、感染から発病まで、感染経路の種類

人の体内に病原性を持った微生物が入り込み、そこで増殖を行うことを感染という。このとき、感染された人のことを宿主という。感染によって、引き起こされる疾患のことを感染症という。

 

病原性
人などの動物に対して、感染症を起こす原因となる性質を病原性という。病原性をもつ微生物のことを病原体という。病原体がもつ病原性に関係するものには、組織侵入性感染性毒素の産生などがあげられる。

 

 組織侵入性
病原性をもつ微生物(病原体)は、宿主の細胞を壊し、宿主の組織の中に侵入する。そして、組織の内部で増殖を行う。この性質を組織侵入性という。組織の内部で病原体が増殖することで、宿主に病的な異常が起こる。

 

 感染性
微生物がもつ特徴として、決まった種類の動物のみに対して感染することがあげられる。その動物に感染することで、その動物との共生状態をつくったり、その動物に感染症を引き起こしたりする。

 

上記のように、決まった種類の動物だけに対して、病原体が病原性を示すことを感染性という。

 

 毒素
毒素は、外毒素内毒素(エンドトキシン)とに分けられる。

 

・外毒素
特定の細菌には、毒素をつくる性質がある。つくられた毒素の毒性により、宿主の体が被害を受ける。このように、その細菌の体(菌体)の外に出される毒素のことを外毒素という。

 

・内毒素(エンドトキシン)
細菌のなかには、自身の細胞壁に毒素を含んでいるものがいる。このように、細菌の体の中に存在する毒素を内毒素(エンドトキシン)という。

 

 

感染から発病まで

 

 潜伏期
病原体が感染しても、すぐには感染症は起こらない。感染してから感染症が起こるまでには、一定の期間がかかる。そして、この期間中は、症状が現れない。この期間のことを潜伏期という。

 

潜伏期は、その病原体によってさまざまである。

 

 不顕性感染
病原体に感染しても、長期間、感染症を起こさず、症状が現れないままの場合がある。この状態のことを不顕性感染という。

 

また、病原体に感染したことで感染症が引き起こされた状態を顕性感染と呼び、不顕性感染と区別する場合もある。

 

・無症候性キャリア(健康保菌者)
不顕性感染の状態を保ち続けている宿主のことを無症候性キャリア(健康保菌者)という。

 

 感染源
病原体を放出する源になっている状態の個体などを感染源という。感染源にあてはまるものには、感染症の患者、感染症の患者の排泄物、無症候性キャリア(健康保菌者)などがあげられる。

 

・人畜共通感染症(動物由来感染症)
人以外の動物が、病原体に感染し、感染源になる場合もある。感染症のうち、動物から人へと移るものを人畜共通感染症(動物由来感染症)という。

 

 流行
特定の感染症の患者が、ある一部の地域で数多く確認されることがある。この現象を流行という。

 

強い感染力や強い病原性をもつ病原体の場合、人から人へと感染していき、その感染症の流行を一時的に引き起こす恐れがある。

 

 

感染経路の種類
病原体が、どのように感染するかの経路のことを感染経路という。感染経路には、さまざまなものがある。

 

・経気道感染
患者のくしゃみなどに含まれる病原体を吸い込んだことで起こる感染を経気道感染という。

 

・経口感染
病原体が含まれた食物や水分を摂った場合などで起こる感染を経口感染という。

 

・接触感染
病原体の感染源や、病原体に汚染されたものに触れた場合、その病原体に感染する。このことを接触感染という。

 

・経皮感染
ダニなどの体内に含まれた病原体が、そのダニに咬まれた動物の傷口からその動物に侵入し、その動物に感染することがある。このことを経皮感染という。

 

また、上記のダニのように、体内に病原体を含んで運び、他の動物にその病原体を感染させる動物のことを媒介動物という。

 

・飛沫感染
感染症の患者などのくしゃみ、咳(せき)、発声などで放出された飛沫(ひまつ)を吸い込んだ場合、病原体に感染することがある。これを飛沫感染という。

 

・空気感染(飛沫核感染)
感染症の患者などから放出された飛沫核という小さな粒子が空気に浮かんでおり、それを吸い込んだ場合に感染することがある。これを空気感染(飛沫核感染)という。

 

・水平感染
動物から動物へ、人から人へなどのように病原体が感染することを水平感染という。

 

・垂直感染
母親がもつ病原体が、母親からその胎児や新生児へと感染することを垂直感染という。垂直感染には、産道感染経胎盤感染とがある。

 

 ・産道感染
母親がもつ病原体が、胎児が産道を通り抜ける場合に、母親の血液などを通して、胎児や新生児に感染することを産道感染という。

 

 ・経胎盤感染
母親がもつ病原体が、胎盤を通して胎児に感染することを経胎盤感染という。

 

 体内における病原体の拡散
病原体によっては、一部の組織などで増殖するだけにとどまらず、その病原体が、血管やリンパ管を通して宿主の体全体に広く散らばる(拡散する)場合もある。

 

・菌血症、敗血症
細菌が血管の中に入り込んで、宿主の体中に広く散らばった状態を菌血症という。また、菌血症によって、体全体に重い症状が現れる場合がある。この状態のことを敗血症という。

 

宿主の体内の感染巣から血管内へと、病原性をもつ細菌が多量に送られ続けている場合、宿主の血管内で白血球が増加したり、宿主が発熱を起こしたりする。

 

・ウイルス血症
血管の中へと侵入したウイルスが、宿主の体全体に広く散らばった状態のことをウイルス血症という。