骨髄の造血、血球の成熟、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
骨髄の造血
骨髄は造血の機能をもち、赤血球、白血球、血小板の生成を行う。小児がもつ骨髄の場合、骨髄における造血細胞が占める割合が高い。そこから年齢を重ねるごとに、骨髄における脂肪細胞が占める割合が増えていく。
大腿骨などの長管骨にある骨髄の場合、体から遠い方(遠位部)から順に、脂肪細胞への置き換えが進められる。また、造血細胞が残される場所として、骨盤骨や椎骨などがあげられる。
造血細胞の種類
造血細胞には、赤芽系細胞、顆粒球系細胞、単球系細胞、リンパ系細胞、骨髄巨核球が存在する。
・赤芽球系細胞
赤芽球系細胞は、赤血球を生成する。
・顆粒球系細胞、単球系細胞、リンパ系細胞
顆粒球系細胞、単球系細胞、リンパ系細胞は、それぞれ白血球を生成する。
・骨髄巨核球
骨髄巨核球は、血小板を生成する。
造血幹細胞の分化に関わるもの
赤芽系細胞、顆粒球系細胞、単球系細胞、リンパ系細胞、骨髄巨核球の5種類の造血細胞は、それぞれ造血幹細胞から分化して生成される。
また、造血幹細胞の分化に大きく関わるものとして、造血誘導因子、骨髄の微小環境がある。
・造血誘導因子
造血誘導因子には、インターロイキン、エリスロポエチンが存在する。
・骨髄の微小環境
骨髄の微小環境は、静脈洞、細網細胞、毛細血管内皮細胞などで構成されている。
血球の成熟
それぞれの血球が成熟する過程は、その血球の種類ごとに異なっている。
・赤血球系細胞が成熟する過程
赤血球系細胞は、幹細胞→前赤芽球→好塩基性赤芽球→多染性赤芽球→正染性赤芽球→網状赤血球→赤血球の順番で成熟する。
上記の過程のうち、体の組織や機能に関係する状態で末梢の血液に含まれるのは、網状赤血球以降の赤血球系細胞である。
・顆粒球系細胞が成熟する過程
顆粒球系細胞は、幹細胞→骨髄芽球→前骨髄球→骨髄球→後骨髄球→杆状核球→分葉核球の順番で成熟する。
・単球系細胞が成熟する過程
単球系細胞は、幹細胞→単芽球→前単球→単球の順番で成熟する。
・リンパ球の成熟
リンパ球には、Tリンパ球とBリンパ球とがある。それぞれ成熟の場所が異なる。
・Tリンパ球の成熟
Tリンパ球は、胸腺で成熟する。そして、リンパ系幹細胞から成熟が進められる。
・Bリンパ球の成熟
Bリンパ球は、骨髄の微小環境の内部で分化成熟を行う。Tリンパ球と同じく、Bリンパ球も、リンパ系幹細胞から成熟が進められる。
・血小板が成熟する過程
血小板は、幹細胞→巨核芽球→前巨核球→巨核球という順番で成熟していく。そして、巨核球の一部が切り離されて、血小板が生成される。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の場合、血小板に対する抗体が血清内でつくられる。そして、脾臓(ひぞう)における、血小板を壊す作用が亢進した状態になる。
特発性血小板減少性紫斑病の治療
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療として、脾臓の摘出、薬剤の使用があげられる。これらのうち、脾臓の摘出は、抗血小板抗体がつくられる場所と、血小板が壊される場所とを取り除くために行う治療となっている。