加齢による臓器の変化

それぞれの細胞がもつ容積は、年齢を重ねるごとに狭くなる。そして、細胞の数は、細胞が死ぬことによって減る。

 

上記により、臓器の容積がしだいに狭くなり、萎縮を起こす。その結果、それぞれの臓器の機能が弱まり、個体が外部からの刺激などに対応する力も弱くなる。

 

 血管の加齢による変化
体中に通っている動脈の場合、長い期間を経て、血管壁の内側に粥腫(じゅくしゅ)という病変がつくられる粥状硬化(アテローム硬化)が進行していく。そして、動脈瘤というふくらみの発生や、動脈の狭窄などが起こる。

 

年齢を重ねるごとに、動脈の粥状硬化によって脳梗塞や心筋梗塞などを発病する危険性は高くなる。さらに、血管壁そのものが壊れやすくなり、出血を起こしやすくなる。

 

 心臓の加齢による変化
動脈は、加齢に合わせてしだいに硬くなっていく。すると、末梢の血管での抵抗が大きくなり、高血圧が引き起こされる。高血圧が進行した場合、心臓が肥大化を起こし、酸素を消費する量が増える。。

 

上記により、慢性である、動脈から送られる血液量が減る虚血を起こす場合がある。

 

高血圧が併発しなかった場合、心臓の心筋細胞が、過酸化された脂質が蓄積して褐色に見える褐色萎縮を廊下によって引き起こす。これにより、心筋細胞の機能が弱くなる。

 

 腎臓の加齢による変化
腎臓の場合、動脈硬化性の変化が高血圧に合わせて進むと、壊れて硝子化を起こした糸球体の数が増える。その結果、腎臓の重さと、機能を発揮できる糸球体の数とが、それぞれ減ることになる。

 

 骨髄の加齢による変化
骨髄の場合、年齢を重ねるごとに、造血細胞が少なくなる。さらに、骨髄において脂肪が占める割合が増える。このことから、高齢者の場合、貧血を起こすことが多くなる。

 

 リンパ組織の加齢による変化
リンパ組織の場合、年齢を重ねるごとに、萎縮していく。さらに、免疫機能を担当する主な存在の1つである、T細胞(Tリンパ球)の機能が弱まっていく。これらにより、加齢とともに免疫機能は弱まっていく。

 

高齢者の場合、感染症を起こしやすくなったり、自己抗体が現れやすくなったりする。

 

 胃の加齢による変化
胃の場合、年齢を重ねていくごとに、胃がもつ粘膜上皮が萎縮する。そして、胃の粘膜上皮が小腸の粘膜に似た上皮に変化する(腸上皮化生)。

 

上記により、消化酵素や胃酸などの分泌を行う腺が少なくなる。そして、萎縮性胃炎という状態が引き起こされる。

 

 肝臓の加齢による変化
肝臓の場合、年齢を重ねるごとに、過酸化された脂質が蓄積して褐色に見える褐色萎縮を起こす。それにより、肝臓の重さが減っていく。さらに、肝臓における、代謝の働きやタンパク質の合成などの働きも弱められる。

 

その一方で、年齢を重ねていくごとに、胆石症を引き起こす危険性が高まっていく。

 

 肺の加齢による変化
肺の場合、年齢を重ねるごとに弾力性が落ちていき、過膨張を起こす。そして、肺気腫に似た状態が引き起こされる。この状態のことを老人肺という。

 

高齢者の場合、免疫機能が弱くなっている。そのため高齢者では、いろいろな種類の病原体によって、肺炎が引き起こされる場合がある。

 

また、肺炎などの影響で肺胞が壊された場合、その肺胞は元の状態には戻らない。これにより、機能できる肺胞の容積は、徐々に狭くなっていく。

 

 脳の加齢による変化
年齢を重ねるごとに、脳にある神経細胞が減っていく。さらに、脳が萎縮を起こし、軽くなっていく。これらの変化に合わせて、短期的な記憶に関する能力や運動に関する能力が、それぞれ弱まっていく。

 

その一方で、言語や知識を理解するための能力は、より長く維持される。

 

 視覚器の加齢による変化
眼球にある水晶体タンパクは、加齢によって変性することがある。これにより、眼球の水晶体に白内障が引き起こされることがある。