染色体の異常による疾患、胎児の障害

染色体の異常による疾患
染色体の異常は、新生児200人のうちの約1人に起こるとされている。

 

 常染色体異常による疾患
常染色体異常のうち、主なものの1つとして、何らかの染色体の数が1つ増えるトリソミーがある。そのため、トリソミーが起こった場合、染色体の合計は47本となる。

 

上記以外のものとして、常染色体の異常によって起こる疾患には、染色体の数は変動しないが、染色体の一部に異常を示すものがある。

 

染色体の異常による疾患には、ダウン症候群、18-トリソミー、13-トリソミーなどが存在する。それぞれ、知能障害や奇形などの症状を示す。

 

・ダウン症候群
ダウン症候群の症状としては、巨舌症、特有のやや扁平のように見える顔、知能障害などがある。さらに、白血病にかかることが多い。ダウン症候群患者のうち、約40%の患者が先天性心奇形を合併する。

 

ダウン症候群は、21番目の染色体が1つ増えた21-トリソミーである。また、染色体の異常によって引き起こされる疾患のうち、非常に多い疾患とされている。

 

ダウン症候群の原因の多くは、卵子がつくられるときに正常に分離できなかったこととされる。さらに、母親の年齢が高くなるほど、起こりやすくなる

 

母親が30歳未満であれば、出産1500回のうちの1回で発生する割合になるとされる。ここからは、母親の年齢が上がるごとに、ダウン症候群が発生しやすくなっていく。

 

母親が45歳以上の場合、出産50回のうちの1回で発生する割合になるとされている。

 

 性染色体異常による疾患
性染色体異常によって引き起こされる疾患には、ターナー症候群XXX症候群クラインフェルター症候群がある。

 

・ターナー症候群
性染色体の異常には、X染色体1つのみの状態であるX染色体モノソミー(45,X)というものがある。これをターナー症候群という。この疾患では、知能障害は確認されない。

 

ターナー症候群の患者では、外見上は女性であるものの、卵巣が形成不全になっている。

 

上記の他には、肘を伸ばしたときに正常の範囲を超えて肘が外側に反る外反肘、低身長、耳の後部から肩甲骨の外側にかけて皮膚が張る翼状頸などが確認される。

 

・XXX症候群
女性がもつ性染色体は、「XX」となっている。ここにさらにX染色体が過剰に存在するものをXXX症候群という。この疾患の症状には、知能障害がある。過剰に存在するX性染色体の数が増えるごとに、より重い知能障害となる。

 

・クラインフェルター症候群
男性がもつ性染色体は、「XY」となっている。ここにさらにX染色体が多く存在する状態(47,XXY)をクラインフェルター症候群という。この疾患では、二次性徴が十分には発現されず、生殖ができない。

 

その他の症状として、知能障害があげられる。この疾患の場合に起こる知能障害の多くは、軽いものとなっている。また、この疾患の患者の体形の特徴として、異常な長い手足をもち、女性的であることがあげられる。

 

・X性染色体やY性染色体の過剰で起こる疾患
X性染色体やY性染色体の過剰で起こる疾患のうち、X性染色体だけをもっている場合には、女性型の外見となる。一方、過剰なY性染色体がある場合には、男性の外見となる。

 

 

胎児の異常
胎児が障害を起こす原因となるものには、妊娠中の母体の疾患・薬剤の服用・感染症などがある。胎児障害を起こす原因となるもののうち、主なものを以下に示す。

 

 [胎児障害の原因の一例

 

 ・原因となる母体の疾患
 内分泌疾患、糖尿病、フェニルケトン尿症

 

 ・原因となる薬剤
 抗けいれん剤のフェニトイン、抗凝固薬のワーファリン、鎮痛剤のサリドマイド、男性ホルモン

 

 ・原因となる感染症
 ヘルペスウイルス、風疹、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、梅毒

 

 ・その他
 飲酒、放射線

 

上記のような障害因子となる原因は同じであっても、その障害因子が発生したときによって、胎児に奇形が現れるかどうかが変わる。

 

また、胎児の障害に含まれるものには、胎児の付属物の圧迫によって組織が壊される、羊水過少症などによって起こる変形などがあげられる。

 

 出生前感染症
妊娠初期の母親が風疹にかかった場合、生まれる子には、白内障、知的障害、難聴、先天性心奇形などの異常が確認されることがある。このことを、先天性風疹症候群という。

 

これは、母親の体に存在するウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、それによって胎児が障害されることで起こる。そのため、ワクチンの予防接種などで予防することが大切である。

 

風疹以外の疾患のうち、胎盤を介して胎児に感染するものとして、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、梅毒、トキソプラズマがあげられる。

 

 アルコールによって起こる障害
妊娠中のどの期間であっても、アルコールを摂ることは、胎児に障害を起こす原因となってしまう。アルコールの摂取によって胎児に起こる障害には、知能障害や成長障害などがある。このことを、胎児アルコール症候群という。

 

胎児アルコール症候群を避けるためにも、アルコールを好む人にはつらいかもしれないが、妊娠中はアルコールの摂取を控えることが大切である。

 

 薬剤によって起こる障害
妊娠初期の母親が、鎮痛剤の1種で睡眠薬として使われていたサリドマイドという薬剤を服用し、それによって、生まれた子供が手足が短い奇形であるアザラシ状奇形になることが、1960年代のヨーロッパで多発した。

 

この事件により、サリドマイドは使用禁止となった。

 

上記の事件のことから、妊娠中は、できる限り薬剤の投与を行わないようにするのが大切である。そして、薬剤を使用しなければならない場合には、安全を確認できてはじめて使用することが望ましい。

 

 放射線による障害
生物が、放射線の照射を受けた場合、その生物に何らかの障害が発生する場合がある。

 

放射線の照射を受けることで、悪性腫瘍(白血病など)の発病が多くなる。また、女性の場合には不妊流産の危険性が上がる。

 

上記のことから、放射線の照射を受けるのは、必要最小限にするのが望ましい。また、妊娠中の女性の場合には、放射線の照射を受けない方が良いといえる。