がんの外因・内因

がんを引き起こす原因を大きく分けると、外因(環境因子)と内因との2つに分類できる。

 

がんの外因(環境因子)

体の外に存在する化学物質やウイルスが体内に侵入した場合や、体の外からの刺激を受けた場合、それががんを引き起こす原因となることがある。

 

化学的発がん因子

化学物質の中には、体の中に入り込むことで、がんを発生する原因になるものがある。

 

職業がん

特定の化学物質に接する環境で仕事をしている人の場合、そういった環境で仕事をしていない人よりも、その化学物質によってがんを引き起こす危険性が高まる。このようながんのことを職業がんという。

 

たとえば、タールという物質を扱う仕事をする人では、タールが発がん因子となって、皮膚がんを起こす危険性が高くなる。

 

物理学的発がん因子

特定の物理的な刺激が与えられたとき、その刺激ががんを発生する原因になることがある。

 

機械的刺激

たえず与えられ続けているような機械的な刺激は、腫瘍が発生する原因になる。たとえば、つねに舌に歯が当たり続け、それによって潰瘍を起こしている人の場合、舌がんを発生する危険性が高い。

 

紫外線刺激

紫外線には、細胞を傷害する働きと、DNAに突然変異を起こさせる働きがある。このことから、紫外線は、腫瘍を発生させる原因になる。

 

放射線刺激

放射線も紫外線と同じく、細胞を傷害する働きと、DNAに突然変異を起こす働きをもつ。このことから、放射線は、腫瘍が発生する原因になる。

 

ウイルス発がん

ウイルスには、がんを発生させる原因となるものが存在する。ウイルスを遺伝子の種類で分類する場合、DNAウイルスRNAウイルスとに分けられる。

 

成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)

成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)は、成人T細胞白血病(ATL)という疾患の原因となるウイルスである。RNAウイルスであり、レトロウイルス科に属している。

 

HTLV-Ⅰは、自身がもつRNAの遺伝情報をDNAに変える働きをもつ逆転移酵素をもっている。

 

HTLV-Ⅰの逆転移酵素によって、HTLV-Ⅰ自身のRNA(ウイルスRNA)がDNAとなる。このDNAは、感染した人(宿主)の細胞の遺伝子に組み込まれる。その結果、ウイルスの粒子が産生されて、増殖が行われる。

 

 

腫瘍の内因

がんが発生することには、外因(環境因子)の他にも内因が関わっている。

 

性別

性別によって、度のがんが発生しやすいかが異なっている。男性の場合には、肺がんや食道がんが発生しやすいとされる。また、女性の場合には、甲状腺がんが発生しやすいとされる。

 

これには、性別だけでなく、生活習慣などの別の要因も関係すると考えられている。

 

年齢

通常、年齢を重ねていくごとに、がんが発生する頻度が高まっていく。40歳以上や60歳に達すると、発生する頻度が最も高くなるがんが多くなる。40歳以上の年齢のことを、一般的にはがん年齢と呼ばれる。

 

加齢によって、がん細胞に対する防御機能が低下する。また、がんを生じる原因になる遺伝子の異常が積み重なりやすくなる。このような現象が起こることから、加齢は、がんを発生する頻度を高めるとされている。

 

その一方で、がんのなかには、小児期において最も発生する頻度が高くなるものもある。

 

小児期、中年期、老年期ごとに、それぞれ発生しやすいがんについて以下に示す。

 

小児期での発生が多い主ながん

小児期での発生が多いがんには、脳腫瘍、骨軟部腫瘍、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、白血病などがあげられる。

 

中年期での発生が多い主ながん

中年期での発生が多いがんには、甲状腺がん、乳がん、子宮がんなどがあげられる。

 

老年期での発生が多い主ながん

老年期での発生が多いがんには、食道がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、胃がんの他、さまざまながんがあげられる。

 

遺伝的な要因

腫瘍のうちのほとんどが、遺伝子の異常が生まれた後で(後天的に)引き起こされるものとなっている。

 

しかし、腫瘍のうち、親がもつ遺伝子の異常が子に伝えられたことで、その子にがんが発生することがある。

 

上記のことにあてはまる腫瘍には、神経線維腫症(レックリングハウゼン病)、家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)などがあげられる。どちらの腫瘍も、ほとんど発生することがない。

 

異常染色体

がん細胞がもつ染色体には、構造や数に異常が確認される場合が多い。また、違う染色体の断片同士が互いに結合する転座などの異常は、白血病で確認される場合が多い。

 

フィラデルフィア染色体

異常染色体の1種に、フィラデルフィア染色体という染色体がある。フィラデルフィア染色体は、慢性骨髄性白血病という疾患で確認されることが多い。

 

がん家系

がんの発生が多い家系のことをがん家系という。

 

がん家系の場合、がんの発生が多いことが、その家系の生活習慣によるものなのか、遺伝子の異常によるものなのかなどといった判断を下すのは、困難である場合が多い。