壊死、アポトーシス、変性

細胞の死
細胞に高度の障害が与えられ、その細胞が元通りに治せない状態になると、その細胞は死に至る。こうした細胞の死には、壊死アポトーシスとがあげられる。

 

壊死
高度な障害が細胞に与えられることで、その細胞が死ぬことを壊死という。壊死した細胞の核は、崩壊か凝縮を起こす。そして、細胞内に含まれるリソソーム酵素の作用で、細胞核は原形を失う。このことを、自己融解という。

 

壊死を大きく分類すると、凝固壊死液化壊死(融解壊死)との2つに分けられる。

 

・凝固壊死
高度の変性が、細胞質のタンパク質に起こると、その細胞は、自身の輪郭の部分を残して壊死を起こす。これを凝固壊死という。貧血性の梗塞などの場合に、凝固壊死が引き起こされる。

 

・液化壊死(融解壊死)
リソソーム酵素の作用によって、細胞核が原形を失う自己融解が起こる。そして、より高度の自己融解が発生したとき、それを液化壊死(融解壊死)という。

 

脂肪組織が多くタンパク質が少ない場合には、液化壊死が引き起こされる。

 

・乾酪壊死
結核結節の場合に確認される壊死は、その外見がチーズ(乾酪:かんらく)に似ている。この壊死のことを乾酪壊死という。乾酪壊死は、凝固壊死と液化壊死のそれぞれの特徴をもっている。

 

・壊疽(えそ)
広い範囲で組織の壊死が発生し、さらに壊死した組織が腐ってしまう変化のことを壊疽(えそ)という。壊疽を起こした部分は、悪臭が出る。また、嫌気性の菌に感染された場合、壊疽が現れることが多い。

 

 ・糖尿病性壊疽
糖尿病の場合、動脈での硬化性の変化と末梢神経の障害が起こった場合に、動脈で循環障害が発生する。すると、下肢の先端部分に潰瘍ができる。

 

この状態になった場合に治療するのが遅くなると、広い範囲で組織の壊死が発生し、やがて壊疽を起こす恐れがある。こうした壊疽のことを、糖尿病性壊疽という。

 

 

アポトーシス
特定の信号が、細胞の外部から細胞の内部へと送られ、細胞が自発的に壊れることをアポトーシスという。複数の細胞が、構成している組織ごと死亡する壊死と違い、アポトーシスは、1つの細胞ごとで単独で起こる細胞の死である。

 

アポトーシスにあてはまるものとして、個体発生の際の、胎児の手の指と指との間にある水かきの消失があげられる。これは、水かきの部分の細胞が、アポトーシスによって手から消失しているのである。

 

上記以外で、アポトーシスが関係するものとして、放射線の照射、ウイルスの感染、抗がん剤の使用などの場合に起こる細胞の死があげられる。

 

 

変性
細胞が特定の損傷を受け、その細胞が元の状態に回復できる場合に、その細胞がもつ機能や形態に変化が起こることがある。この変化のことを変性という。

 

損傷によって変性を起こした細胞は、一般的には、ナトリウムと水分とが溜まって腫大を起こす。これは、損傷を受けて変性した細胞がもつナトリウムポンプの作用が不十分になるために起こる。

 

その一方で、処理できない老廃物が細胞内で溜め込まれる。

 

ある程度の時間が経っていくことで、変性を起こした細胞の機能や構造は、しだいに正常に戻っていく。