頭部・頸部の筋

頭部の筋
頭部の筋には、咀嚼筋(そしゃくきん)や表情筋など、さまざまな筋が存在する。

 

 咀嚼筋(そしゃくきん)
咀嚼筋は下顎骨に停止し、4つの筋が含まれている。食物をかむなどの咀嚼運動を行う。咀嚼筋を支配するのは、三叉神経の第3枝にあたる下顎神経である。

 

・側頭筋
側頭筋は、側頭骨の外側に広がって付いている。

 

・咬筋
咬筋は、頬骨弓から下顎骨の外側の側面にかけて付いている。

 

 表情筋
表情筋は、顔の表情を構成する筋であり、顔の皮下に付いている。眼や口などの開閉を行う役割をもつ。表情筋を支配するのは、顔面神経である。

 

・眼輪筋
眼輪筋は、眼裂のまわりにある筋である。まぶた(眼瞼:がんけん)を閉じる役割をもつ。

 

・口輪筋
口輪筋は、口の周りの皮下に輪を描くように付いている筋である。口の先を細くとがらせたり、口を閉じたりする役割をもつ。

 

・頬筋
頬筋は、頬の皮下に付いている筋である。口角を外側に動かすことができる。

 

・笑筋
笑筋は、頬筋の下部にある筋である。えくぼをつくることができる。

 

・その他の表情筋
表情筋は上記以外にも存在し、後角を上げる役割をもつ口角挙筋の他、大頬骨筋や小頬骨筋など、さまざまな筋が存在する。

 

頸部の筋
頸部の筋には、浅層(表面に近い場所)のものと、深層(表面から遠い奥の場所)のものがある。頸部の浅層の筋には、胸鎖乳突筋、広頸筋がある。頸部の深層の筋群は、前頸部のものと後頸部のものに分類できる。

 

 頸部の浅層の筋

 

・胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋は、鎖骨と胸骨から起始し、側頭骨の乳様突起で停止する筋である。頭を横方向に回したり、前に動かしたりできる。胸鎖乳突筋を支配するのは副神経である。

 

・広頸筋
広頸筋は、頸部の皮下についている。表情筋でもある。

 

 前頸部の筋群
前頸部の筋群には、舌骨上筋群、舌骨下筋群がある。舌骨を通じて下顎骨を下に引くことで、顎を開くことができる。

 

・舌骨上筋群
舌骨上筋群には、顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋がある。

 

 ・顎二腹筋
顎二腹筋は、舌骨につながっている腱であり、前腹と後腹に分けられている。顎二腹筋の前腹は、下顎骨で停止し、下顎神経に支配される。顎二腹筋の後腹は、茎状突起の近くで起始し、顔面神経に支配される。

 

 ・顎舌骨筋
顎舌骨筋は、下顎体の内側の面で起始し、舌骨で停止する。口腔の底をつくり、下顎神経に支配される。

 

 ・オトガイ舌骨筋
オトガイ舌骨筋は、下顎骨のオトガイの後ろ側で起始し、舌骨で停止する。舌下神経と頸神経ワナに支配される。

 

 ・茎突舌骨筋
茎突舌骨筋は、茎状突起で起始し、舌骨で停止する。顔面神経に支配される。

 

・舌骨下筋群
舌骨下筋群には、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋、甲状舌骨筋がある。舌骨と甲状軟骨とその下側にある骨格とをつないでおり、頸神経ワナの枝に支配される。

 

 後頸部の筋群
後頸部の筋群には、斜角筋群、椎前筋群がある。斜角筋群は、頸椎と肋骨とをつなげる。椎前筋群は、脊柱の前方の面に付く。

 

・斜角筋群
斜角筋群には、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋がある。頸椎の横に出ている突起から、第1肋骨と第2肋骨に付く。第1肋骨と第2肋骨を引き上げたり、頸を横方向や前方に曲げる。頸神経叢に支配される。

 

前斜角筋と中斜角筋の間には、斜角筋隙(しゃかくきんげき)というすきまがある。このすきまには、鎖骨下動脈と腕神経叢(のうしんけいそう)が通過する。

 

・椎前筋群
椎前筋群には、頭長筋、前頭直筋、外側頭直筋、頸長筋などが存在する。頸を前に曲げたり、横に曲げたりする。頸神経叢に支配される。