抗原の性質・識別

抗原の性質
体内に侵入して免疫応答を起こし、それによって発生した抗体や感作リンパ球と反応するものを抗原(免疫原)という。抗原は、決まった抗体や感作リンパ球とだけ、反応を起こす

 

抗原がもつ性質には、免疫原性反応原性(反応性)とがある。

 

・免疫原性、反応原性
抗原がもつ性質のうち、免疫応答を導く性質のことを免疫原性という。また、免疫応答で発生した抗体や感作リンパ球との反応を起こす性質のことを反応原性という。

 

・完全抗原、ハプテン(不完全抗原)
抗原のうち、免疫原性と反応原性の両方をもつものを、完全抗原という。一方、反応原性のみをもつ抗原のことを、ハプテン(不完全抗原)という。

 

ハプテンは、大きな分子量のタンパク質に結びつくことで、免疫原性を獲得する。ハプテンに免疫原性を獲得させるタンパク質のことを、キャリアータンパク(担体、キャリアー)という。

 

 抗原となるものの条件
抗原とは、以下の条件を満たした物質のことである。

 

 ・免疫系に異物(非自己)と認識される。

 

 ・約1万以上の分子量をもつ。

 

 ・体液によって溶かされる。

 

 ・独自の複雑な構造をしている。

 

糖質やタンパク質などの物質も、それぞれ抗原にあてはまる。脂質や核酸などは、基本的にはハプテンにあてはまる。

 

・抗原決定基(エピトープ)
それぞれの抗原の表面には、抗体に認識される独自の構造である抗原決定基(エピトープ)がある。

 

 

抗原の識別
免疫を担当する細胞には、T細胞(Tリンパ球)とB細胞(Bリンパ球)とが存在する。これらの細胞の表面には、抗原を識別する抗原レセプター(抗原受容体)がある。

 

これにより、識別した抗原だけを選択して、T細胞やB細胞が反応することができる。

 

成熟したT細胞の場合、ポリペプチドの鎖であるα鎖β鎖とで抗原に対応する。B細胞の場合は、抗体と同じくH鎖L鎖とで抗原に対応する。

 

それぞれの2本の鎖の先端部のことを可変部という。可変部のアミノ酸配列は、それぞれの抗原レセプター(抗原受容体)によって違う。そのため、決まった抗原とだけ結合する。

 

 抗原の提示、抗原の認識
生体内に抗原が入り込んだ場合、その抗原はマクロファージに取り込まれる。取り込まれた抗原は処理を受けて、MHC(主要組織適合抗原)と結合する。そして、その抗原がマクロファージの表面に提示される。

 

MHCの分子は、クラスⅠMHC分子クラスⅡMHC分子の2種類に分類できる。

 

クラスⅠMHC分子は、赤血球以外のすべての細胞に抗原の提示を行う。クラスⅡMHC分子は、マクロファージやB細胞などの抗原提示細胞に抗原の提示を行う。

 

・クラスⅠMHC分子、CD8分子、キラーT細胞
ウイルスなどによって抗原が細胞内でつくられた場合、その抗原にはクラスⅠMHC分子が結合する。そして、その抗原が細胞の表面に提示される。

 

このとき提示された抗原は、CD8分子をもつT細胞(キラーT細胞)に認識される。キラーT細胞は、認識した細胞に対して細胞傷害反応を起こす。

 

・クラスⅡMHC分子、CD4分子、ヘルパーT細胞
クラスⅡMHC分子CD4分子をもつT細胞(ヘルパーT細胞)に認識される。ヘルパーT細胞の種類には、Th1Th2とが存在する。

 

Th1はマクロファージ活性化T細胞であり、γインターフェロンの分泌を行ってマクロファージを活性化させる。この働きにより、ツベルクリン反応などの遅延型過敏症反応を起こす。

 

Th2は、サイトカインをつくる働きをもつ。それによって、T細胞の分化を促したり、B細胞の抗体産生を支援したりする。

 

 スーパー抗原
抗原には、自身に対応する抗原レセプターの可変部との結合でなくても、T細胞の活性化を行うものが存在する。その抗原をスーパー抗原という。

 

スーパー抗原は、処理を受けないまま、抗原提示細胞にあるクラスⅡMHC分子に結合する。そして、T細胞がもつ抗原レセプターのβ鎖によって識別される。

 

スーパー抗原のうち、細菌性のものとして、化膿レンサ球菌がもつ外毒素(SPE)、ブドウ球菌の外毒素(TSST-1)などがある。