細胞性免疫、感作T細胞、移植免疫、腫瘍免疫

細胞性免疫
免疫のうち、血液に存在する抗体ではなく、T細胞(Tリンパ球)などが担当する免疫のことを細胞性免疫という。

 

・感作T細胞(感作Tリンパ球)
T細胞(Tリンパ球)のうち、抗原からの刺激によって分化され、その抗原に対応して反応を起こすものを感作T細胞(感作Tリンパ球)という。

 

感作T細胞を大きく分ける場合、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)と、マクロファージ活性T細胞(サイトカイン分裂型T細胞)との2種類に分類される。

 

 ・細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)
感作T細胞のうち、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、移植した臓器などの移植片を直接攻撃して、それを壊す働きをもつものを細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)という。

 

 ・マクロファージ活性T細胞(サイトカイン分裂型T細胞)
感作T細胞のうち、サイトカインという活性物質をつくってマクロファージを活性化させ、それによって、さまざまな細胞性免疫反応を起こすものをマクロファージ活性化T細胞(サイトカイン分裂型T細胞)という。

 

 

移植免疫

 

 移植
異常が起きた組織や臓器を、正常なものと交換することを目的として、生体がもつ組織や臓器を、別の個体、または同じ個体内での別の部分に移動させることを移植という。この場合に、移動させる組織や臓器のことを移植片という。

 

移植が行われる場合、移植片を受け取る者を受容者(レシピエント)といい、移植片を提供する者を供与者(ドナー)という。

 

移植には、自己移植同系移植同種移植異種移植の4種類がある。

 

・自己移植
同じ個体内で行われる移植のことを自己移植という。人の皮膚をその人の別の場所に移植する場合などが、自己移植にあてはまる。

 

・同系移植
遺伝子型が同じである個体の間で行われる移植のことを同系移植という。一卵性双生児の間で行われる移植などが、同系移植にあてはまる。

 

・同種移植
同じ種類で、遺伝子型が異なる個体の間で行われる移植のことを同種移植という。人の臓器を血縁関係がない他人に移植する場合などが、同種移植にあてはまる。

 

・異種移植
違う種類の個体の間で行われる移植のことを異種移植という。人以外の動物の臓器を人に移植する場合などが、異種移植にあてはまる。

 

 移植免疫(拒絶反応)
自己移植、同系移植、同種移植、異種移植の4種類の移植のうち、自己移植と同系移植での移植片は、新しい場所や生体に生着し、本来の機能を果たす。

 

一方、同種移植と異種移植での移植片は、新しい生体に移されると壊死を起こし、本来の機能を果たせなくなる。この反応を移植免疫(拒絶反応)という。

 

移植免疫は細胞性免疫の1つであり、細胞障害性T細胞(キラーT細胞)が担当する免疫である。

 

・組織適合抗原
同種移植の場合、移植片の表面にある抗原が、移植免疫を起こす原因になる。この移植片の表面にある抗原のを組織適合抗原という。

 

・主要組織適合抗原(MHC)
組織適合抗原のうち、移植が成功するかに一番強く関わり、さらに移植免疫を一番強く起こす抗原のことを主要組織適合抗原(MHC)という。

 

主要組織適合抗原は糖タンパク質であり、赤血球を除く細胞すべての表面にある。

 

 宿主対移植片反応(HVG反応)
移植免疫のうち、臓器の受容者の体が移植片を異物とみなして攻撃する反応を、宿主対移植片反応(HVG反応)という。通常起こる移植免疫は、この宿主対移植片反応となっている。

 

 移植片対宿主反応(GVH反応)
移植免疫のうち、受容者の免疫が抑えられているときに、その受容者にリンパ球が移植された場合は、そのリンパ球は受容者に拒絶されない。

 

しかし、移植されたリンパ球が、受容者がもつ組織適合抗原を感知し、受容者の細胞を傷害する。この反応を、移植片対宿主反応(GVH反応)という。

 

移植片対宿主反応(GVH反応)が起こると、肝脾腫、貧血、発熱、下痢などの症状が現れる。

 

 

腫瘍免疫
生体の細胞は、何らかの原因によって腫瘍(がん)になることがある。細胞が腫瘍細胞に変わると、その表面に腫瘍特異抗原(TSA)という抗原をもつようになる。

 

腫瘍細胞は宿主がもつ抵抗力を下げる働きをもつ。また、一般的には、腫瘍細胞自身の抗原性は低めである。これらのことから、腫瘍細胞が排除されずに留まり、腫瘍をつくる場合が多い。

 

 腫瘍免疫
腫瘍細胞に対して、それを排除するように働く免疫があり、それを腫瘍免疫という。腫瘍免疫は、細胞性免疫にあてはまる免疫である。

 

しかし、腫瘍細胞による抵抗力の低下や、腫瘍細胞自身の抗原性の低さにより、腫瘍細胞を排除できない場合も多い。