クエン酸回路、ミトコンドリア

クエン酸回路
解糖系によって生成されたピルビン酸はミトコンドリアに入る。そして、ピルビン酸はピルビン酸脱水素酵素によってCO2を外されてアセチルCoAに変化する。その後、アセチルCoAがクエン酸回路へと進んで代謝される。

 

クエン酸回路の反応は、ミトコンドリアの内膜にある酵素1つと、ミトコンドリアのマトリックスという場所にある酵素7つの合計8つの酵素によって行なわれる。

 

 クエン酸回路の反応経路
クエン酸回路の反応経路は、以下のようになっている。

 

1番目:ピルビン酸からつくられたアセチルCoAが、クエン酸回路に進む。

 

このとき、アセチルCoAのアセチル基がクエン酸合成酵素によってオキサロ酢酸へと移動することでクエン酸が生成される反応が、最初の反応としておこる。

 

2番目:アコニット酸ヒドラターゼによって、クエン酸が水を失い、cis-アコニット酸に変化する。その後、cis-アコニット酸が、アコニット酸ヒドラターゼのはたらきで水と反応をおこす。それによって、cis-アコニット酸がイソクエン酸に変化する。

 

3番目:イソクエン酸脱水素酵素のはたらきで、イソクエン酸が酸化と同時にCO2を外されて(酸化的脱炭酸反応)、α-ケトグルタル酸に変化する。

 

4番目:2-オキソグルタル酸脱水素酵素によって、α-ケトグルタル酸が酸化的脱炭酸反応を受け、スクシニルCoAに変化する。

 

また、2-オキソグルタル酸脱水素酵素には必要な補酵素がある。それぞれ、CoASH(補酵素A)・NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)・FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)・TAD(チアミン二リン酸)・リポ酸の5つである。

 

5番目:コハク酸-CoAリガーゼのはたらきで、スクシニルCoAが加水分解を受けてコハク酸に変化する。その際、GDP(グアノシン二リン酸)がリン酸化されてGTP(グアノシン三リン酸)に変化する。

 

GTPは、ADP(アデノシン二リン酸)をATP(アデノシン三リン酸)に変えられる。

 

6番目:コハク酸脱水素酵素によってコハク酸が酸化され、フマル酸に変化する。コハク酸脱水素酵素は、NADやNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を補酵素にしない。その代わりに、FADを補酵素にする。

 

7番目:フマル酸がフマル酸ヒドラターゼによって水を得て、リンゴ酸へと変化する。

 

8番目:リンゴ酸脱水素酵素によってリンゴ酸が酸化されて、オキサロ酢酸に変化する。ここでつくられたオキサロ酢酸が1番目の反応に使われる。

 

 クエン酸回路の式
クエン酸回路の反応前は アセチルCoA + 3NAD + FAD + GDP + Pi + 2H₂O の式で表すことができる。

 

また、反応後は 2CO₂ + CoASH + 3NADH + 3H⁺ + FADH₂ + GTP の式で表すことができる。

 

 クエン酸回路の中間体
クエン酸回路に存在する中間体は、特定の化合物や生理作用の材料になる場合がある。

 

・アスパラギン酸 → オキサロ酢酸から生成される

 

・α-ケトグルタル酸 → グルタミン酸から生成される

 

・ポルフィリンの生合成 → スクシニルCoAが、その材料になる

 

上記のような別の反応がおこることで、クエン酸回路の中間体が減少した場合、オキサロ酢酸の濃度が低下する。その結果、クエン酸回路の反応がスムーズに進みにくくなる。

 

これを避けるには、中間体をつねに供給し続けなければならない。そのうち、ピルビン酸キナーゼのはたらきによってピルビン酸からオキサロ酢酸を補う反応が、1番重要なものとなっている。