タンパク質の性質、ペプチド結合
タンパク質は、大量のアミノ酸が結合したものである。タンパク質を構成するアミノ酸は、20種類存在する。
タンパク質の構造について
ペプチド結合
アミノ酸同士の結合を、ペプチド結合という。アミノ酸同士の間にある、アミノ基(-NH₂)とカルボキシル基(-COOH)の水分子がなくなることで結合がおこる。
2つ以上のアミノ酸がペプチド結合したものをペプチドという。ペプチドの中で、アミノ酸の数が10個以下のものをオリゴペプチドという。オリゴペプチドよりも多くのアミノ酸がペプチド結合したものは、ポリペプチドという。数十個以上のアミノ酸を含み、特定の立体構造をもつポリペプチドをタンパク質という。
ペプチド結合に関わっていないアミノ基をもつアミノ酸を、N末端アミノ酸(アミノ末端アミノ酸)という。ペプチド結合に関わっていないカルボキシル基をもつアミノ酸をC末端アミノ酸(カルボキシル末端アミノ酸)という。
タンパク質の構造表現について
タンパク質の構造表現には、一次構造、二次構造、三次構造、四次構造がある。
・一次構造
タンパク質の中のアミノ酸の並び方のことを一次構造という。アミノ酸に番号をつけるときは、N末端アミノ酸が1番、C末端アミノ酸が最後になる。
・二次構造
タンパク質の中で、ペプチド鎖に規則的な並び方が見られる構造のことを、二次構造という。ペプチド鎖がらせん状のαへリックス構造と、ペプチド鎖が2本以上横に並んでいるβ構造などがある。
これらの構造によって、ペプチド鎖の間に水素結合が数多くつくられる。
※水素結合
水素結合とは、水酸基(-OH)などの水素(陽子)供与体と、ケトン基()などの陽子受容体との結合である。
・三次構造
それぞれのタンパク質がもつ、ポリペプチド鎖が複雑に組み合わさった立体構造のことを、三次構造という。
こうした立体構造に関係する非共有結合には、水素結合、酸性と塩基性のそれぞれのアミノ酸の側鎖の結合である静電結合、疎水性アミノ酸同士の結合である疎水結合、となり合う原子や分子同士の結合であるファンデルワールス力などがある。
・四次構造
ポリペプチド鎖2本以上で成り立っているタンパク質をオリゴマータンパク質という。そして、オリゴマータンパク質の立体構造のことを四次構造という。
また、オリゴマータンパク質がもつそれぞれのポリペプチド鎖のことを、サブユニットという。
タンパク質の分け方について
組成での分け方
組成によって分ける場合、アミノ酸だけでつくられた単純タンパク質と、アミノ酸以外の物質も構成成分とする複合タンパク質の2つに分けられる。
複合タンパク質には、以下のようにさまざまな種類がある。
・糖タンパク質
ペプチド鎖にあるレオニン(スレオニン)残基の水酸基(-OH)、セリン残基の水酸基(-OH)、アスパラギン残基のアミド基(-CONH2)の3つのどれかに糖が結合したタンパク質を糖タンパク質という。
・リポタンパク質
リポタンパク質は、タンパク質と脂質の複合体である。組成している成分は、トリグリセリド(TG)、コレステロール、リン脂質、アポリポタンパク質である。
リポタンパク質は、リン脂質とコレステロールによっておおわれ、その表面には、アポリポタンパク質がある。
リポタンパク質には、キロミクロン、VLDL、LDL、HDLの4つがある。
リポタンパク質の名称 | TG | コレステロール | リン脂質 | アポリポタンパク質 |
キロミクロン | 約 87% | 約 5% | 約 7% | 約 1% |
VLDL | 約 57% | 約 19% | 約 15% | 約 9% |
LDL | 約 9% | 約 50% | 約 21% | 約 20% |
HDL | 約 6% | 約 19% | 約 30% | 約 45% |
キロミクロンは、小腸でつくられるリポタンパク質であり、血中に食事で摂った脂質を運ぶ。
VLDL(超低比重リポタンパク質)は、肝臓でつくられるリポタンパク質であり、末梢の組織にトリグリセリド(TG)を運ぶ。
LDL(低比重リポタンパク質)は、代謝によってVLDLが変化したリポタンパク質であり、末梢の組織にコレステロールを運ぶ。
HDL(高比重リポタンパク質)は、肝臓と小腸などでつくられるリポタンパク質であり、肝臓に余分になったコレステロールを運ぶ。
・核タンパク質
核酸とタンパク質が非共有結合してできたタンパク質を核タンパク質という。
・リンタンパク質
タンパク質にエステルの形になったリン酸が結合したタンパク質をリンタンパク質という。リン酸は、チロシン・セリン・トレオニンのいずれかの残基の水酸基(-OH)に結合する。
・ヘムタンパク質
ヘムを含むタンパク質をヘムタンパク質という。ヘムとは、ビニル基、メチル基、プロピオン基の側鎖をもつプロトポルフィリンⅨの二価鉄錯体である。ヘムタンパク質には、ヘモグロビンなどが含まれる。
・金属タンパク質
タンパク質と金属が結合してできたタンパク質を金属タンパク質という。鉄を含むフェリチンや、カルシウムを含むα-アミラーゼなどがある。
・フラビンタンパク質
FMN(フラビンモノヌクレオチド)かFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)のどちらかが、タンパク質と結合してできたタンパク質をフラビンタンパク質という。FMNとFADは、どちらもビタミンB2補酵素型にあてはまる。
役割による分け方
・酵素
生体での反応の触媒になる役割をもつものを酵素という。酵素には、デンプンの加水分解の反応を速くするα-アミラーゼ、タンパク質の加水分解の反応を速くするペプシンなどが存在する。
・構造タンパク質
生体の構造を維持する役割をもつタンパク質を構造タンパク質という。構造タンパク質には、毛や爪などの成分となるケラチン、骨や軟骨の成分となるコラーゲンなどが存在する。
・防御タンパク質
細菌などの外敵が生体に入ってきたときにつくられ、生体を守る役割をもつタンパク質を防御タンパク質という。防御タンパク質には、ウイルス感染に反応してつくられるインターフェロンや、細菌などの抗原に反応してつくられる免疫グロブリン(抗体)などが存在する。
・調節タンパク質
生体の機能や細胞の調節を行なうタンパク質を調節タンパク質という。調節タンパク質には、生体の維持に関わるポリペプチドホルモンや、DNAの転写に関わる転写因子などが存在する。
・収縮性タンパク質
筋肉を収縮を行うときの本体となるタンパク質を収縮性タンパク質という。収縮性タンパク質には、アクチン、ミオシンの2つが存在し、互いに作用し合うことでATPを消費して筋肉を収縮できる。
・滋養タンパク質
新生児の成長などの栄養源になる役割をもつタンパク質を滋養タンパク質という。滋養タンパク質には、卵白の主成分である卵白アルブミン、動物の乳中にあるカゼインなどが存在する。
・輸送タンパク質
物質を運ぶ役割をもつタンパク質を輸送タンパク質という。輸送タンパク質には、赤血球に存在するヘモグロビンなどが存在する。
・受容体タンパク質(レセプタータンパク質)
神経伝達物質やホルモンなどを感知して、細胞に反応をおこさせる役割をもつタンパク質を受容体タンパク質(レセプタータンパク質)という。受容体タンパク質には、細胞内と細胞膜に存在するホルモン受容体や、細胞膜に存在するサイトカイン受容体などがある。