遺伝情報の転写・翻訳、コドン
DNAがもつ塩基配列をもとに、タンパク質を構成するアミノ酸の配列が決定される。このときの情報のやり取りは、次のような流れで行われる。
・DNAの塩基配列
↓(転写)
・mRNAの塩基配列
↓(翻訳)
・アミノ酸の配列が決まる
転写
核の中でDNAの塩基配列が、mRNA(メッセンジャーRNA、伝令RNA)によって写し取られることを転写という。
DNAにmRNAがもつ合成酵素が結合することで、DNAの二重らせんの鎖の一部が離れる。それによって、二重らせんになっていた鎖が、1本ずつの鎖に分かれる。
mRNAの合成酵素は、1本の鎖になったDNAの遺伝情報のうち、遺伝子1つ分の範囲の塩基配列をもとにして、それに結合できる塩基配列をもつ新しいmRNAをつくる。
もとになるDNAの塩基は、それぞれ次のように置き換えられて、新しいmRNAの塩基がつくられる。
・もとになるDNAの塩基がAのとき → 新しいmRNAではUに置き換えられる。
・もとになるDNAの塩基がTのとき → 新しいmRNAではAに置き換えられる。
・もとになるDNAの塩基がGのとき → 新しいmRNAではCに置き換えられる。
・もとになるDNAの塩基がCのとき → 新しいmRNAではGに置き換えられる。
コドン
DNAの鎖を構成しており、アミノ酸1種類を指定する3つの塩基の配列のことを、トリプレットという。また、mRNAがもつ塩基配列は、DNAがもつ遺伝子1つ分の範囲の塩基配列に結合できる並び方になっている。
そのため、mRNAの塩基配列の場合も、トリプレットの形でアミノ酸が示されることになる。このmRNAの塩基配列を示すトリプレットのことを、コドンという。
コドンには、64種類の組み合わせがある。そのなかで、UAA、UGA、UAGの3つの組み合わせには、それぞれ対応できるアミノ酸が存在しない。
このように、対応できるアミノ酸をもたないコドンを終止コドン(終結コドン)という。タンパク質の合成は、終止コドンのところで終わる。
それぞれのコドンの組み合わせと、その組み合わせで示されているアミノ酸を以下の表で示す。
コドンの表
翻訳
mRNAの塩基配列をもとにアミノ酸がつくられ、そのアミノ酸が結合してタンパク質がつくられることを、翻訳という。
細胞質にあるリボソームで翻訳が行われる。また、tRNA(トランスファーRNA、転移RNA、運搬RNA)が翻訳に関わっている。
tRNAには、mRNAのコドンとつながる部分と、アミノ酸とつながる部分とがある。そして、tRNAはmRNAの塩基配列をもとに、mRNAのコドンが示しているアミノ酸を運ぶ。
アミノ酸は20種類あり、それぞれのアミノ酸に結合できる専用のtRNAが存在する。そのため、tRNAの種類は、100種類以上となっている。
mRNAのコドンとtRNAの3つの塩基配列とは、相補的な関係になっている。それによって、互いに結合することができる。mRNAのコドンとtRNAの3つの塩基配列との塩基の対応関係は、具体的には以下のようになっている。
・mRNAのコドンでのAは → 対応するtRNAの塩基はUとなる。
・mRNAのコドンでのUは → 対応するtRNAの塩基はAとなる。
・mRNAのコドンでのGは → 対応するtRNAの塩基はCとなる。
・mRNAのコドンでのCは → 対応するtRNAの塩基はGとなる。
例として、mRNAのもつコドンがフェニールアラニンを指定している場合、コドン表を確認したときに、その塩基配列はUUUかUUCとなる。
この場合、フェニールアラニンを運ぶことができるtRNAがもつ塩基配列は、AAAかAAGとなる。
・アンチコドン
上記のように、mRNAのコドンに対応できるtRNAがもつ3つの塩基の配列のことを、アンチコドンという。