血管の弾性、末梢血管における抵抗、血圧の変化の型
血管の弾性
心臓のポンプ作用によって血液が拍出されるのは、収縮期のみである。
拡張期では、血液が心臓から大動脈に流れることはない。その拡張期の場合でも、血圧が0mmHgにはならない。それにより、収縮期と拡張期の両方での血流が維持される。
これは、大動脈の弾性によって起こるもので、以下のような働きが起こる。
[収縮期の場合]
・大動脈に、拍出された血液の一部が入る。
↓
・血液が大動脈に入ることで、大動脈の中の血液の容積が増える。
↓
・大動脈内の空気が圧迫されて、血圧が上がる。
[拡張期の場合]
・血液が大動脈の内圧によって、大動脈の中の血液が押し出される。
↓
・このとき、大動脈弁は閉じられているため、末梢血管に血液が入り込む。
↓
・血圧は下がるが、血圧が0mmHgまで下がらないうちに、次の心拍出が生じる。
↓
・再び血圧が上がる。
上記のように、左心室の内圧が大動脈の弾性によって心拍ごとに変わっても、その血圧の変化は小さくなる。また、収縮期から拡張期に移る際も、末梢血流が維持される。
実際の左心室の内圧の変化と、大動脈での血液の変化は、それぞれ以下のようになる。
・左心室の内圧の変化
・収縮期 … 約120mmHg
・拡張期 … 0mmHgに近づく
・大動脈での血液の変化
・収縮期 … 約120mmHg
・拡張期 … 約70mmHg
末梢血管における抵抗
末梢血管が収縮した場合、血液が流れる経路が狭くなる。それにより、血流に対する抵抗が増える。
心臓から大動脈と末梢血管へと血液を送るには、増えた抵抗に勝つ必要がある。抵抗に勝つために、収縮期血圧が上がることになる。
拡張期の場合、大血管壁の弾性によって、末梢血管内に大動脈の血液が送られる。そのため、大動脈の血圧は下がっていく。
末梢血管が収縮した場合、末梢血管を通る血液が減って、血圧の低下が小さくなる。その結果、拡張期血圧は上がる。
血管の神経性調節と体液性調節
血管の収縮と拡張は、心臓血管中枢によって支配される。心臓血管中枢は、延髄網様体にある。
心臓血管中枢からの命令は、交感神経と副交感神経を介して、血管運動神経へと送られる。
血管運動神経は、血管壁にて分布している。また、血管運動神経には、血管収縮神経と血管拡張神経が存在する。このうち、血管収縮神経は、血管拡張神経よりも大きく影響する。
血管は、神経系に調節されるが、血液に含まれる物質にも調節される。
血管を収縮する物質には、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、バゾプレッシン、ヒスタミンなどがあげられる。
血管を拡張する物質には、乳酸、カリウム、アデノシン、ブラジキニンなどがあげられる。
また、pHが下がったり、組織の二酸化炭素分圧が上がったりした場合などでも、血管は拡張する。
血圧の変化の型
血圧の高さには、1回拍出量、大血管の弾性、末梢血管抵抗の3つの因子が関係する。この3つの因子が変化することで、脈圧にも変化がおこる。
・1回拍出量の場合
1回拍出量が大きく増えることで血圧が上がる。このとき、拡張期血圧の上昇を収縮期の血圧の上昇が超える。それによって、脈圧が増加する。
・大動脈の弾性の場合
大動脈の弾性が弱くなった場合、収縮期血圧が大きく上がる。収縮期血圧が上がった場合、細動脈が反射的に拡張をおこす。それによって、拡張期血圧が低下し、脈圧が大きく増加する。
・末梢血管抵抗の場合
末梢血管の抵抗が大きく増えると、収縮期と拡張期の両方の血圧が上がる。しかし、拡張期血圧の方が、より大きく上がる。そのため、脈圧は減少する。