>筋緊張、運動時における体の変化、酸素負債

筋の緊張
骨格筋は、軽く張った状態をたえず保ち続けている。筋のこの状態のことを、筋の緊張という。そして、神経から送られた刺激による細かい強縮と、筋の独自の弾性によって、筋の緊張が起こっている。

 

筋の緊張は、収縮力が小さい。そのため、筋の緊張だけでは運動を起こせない。そして、ほとんど熱が発生せず、酸素もわずかしか消費されない。また、筋の緊張では、強縮が続く場合と違って疲労を起こすことがない。

 

上記のことは、筋の緊張が起こっているときに、末梢の筋に対して、たえず中枢神経からの刺激が与えられ続けていることで起こる。

 

 筋緊張の調節
脳あるいは脊髄の中枢神経の中には、筋緊張の調節を行う中枢が存在する。

 

脊髄にある筋の運動に関係する神経細胞として、前角細胞がある。前角細胞や末梢神経が障害された場合、筋の緊張が弱まって筋弛緩が引き起こされる。

 

筋緊張を調節する中枢神経そのものが障害された場合、筋の緊張が亢進される。それによって、筋固縮や筋けい縮などが引き起こされる。

 

長時間の作業などによって、肩こりが起こることがある。肩こりとは、肩の筋の緊張が亢進されている感覚のことである。

 

寒い環境にいると、筋の緊張が自動的に強められる。これにより、筋の緊張によって発生する熱の量も増える。このとき発生した熱は、体温を保つための助けとなる。

 

 筋がもつ被刺激性
刺激を与えられた筋が収縮を起こす場合、その被刺激性には、体液に含まれている電解質(イオン)の組成が大きく関わる。

 

 ※被刺激性 … 被刺激性が高くなると、小さい刺激でも反応するようになる。

 

血液に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)の濃度やマグネシウムイオン(Mg2+)の濃度が低下するとき、筋の被刺激性が高められるために起こる。

 

筋の被刺激性が高い状態になると、与えられた刺激が小さくてもそれに反応して収縮を起こす。これにより、筋のけいれんであるテタニーが、低カルシウム血症の場合に引き起こされる。

 

また、骨格筋の感覚がなくなったり、骨格筋の力が抜けたりするなどの症状は、低カリウム血症の場合に起こることがある。

 

 

運動時における体の変化
運動を行っているとき、心拍出量が増えて呼吸が促される。すると、筋の血流の量が増加する。それにより、筋に送られる酸素の量も増加する。その結果、筋でつくられたさまざまな代謝産物を、速めに取り除くことができる。

 

筋には、つねに予備の酸素があるわけではない。そして血液によって、筋に必要となる酸素がつねに補われている。そして、血液から補われる酸素の量だけでも、普通に生活を送るときの筋の活動であれば十分にまかなえる量である。

 

筋の活動に必要な酸素を補うことができない状態としては、無酸素運動などの激しい運動を行うときがあげられる。このとき、心臓からより多くの血流が送られてきたとしても、筋は十分な酸素が得られない。

 

筋の収縮には酸素が必要となる。しかし、筋に酸素がない場合でも、ある程度の時間であれば、筋は収縮することができる。

 

激しい運動などにより、乳酸がつくられる。つくられた乳酸は、筋に溜め込まれる。そして、運動が終わった後、筋に溜まっていた乳酸のいくつかは、取り入れた酸素によって酸化する。残った乳酸は、グリコーゲンに変化する。

 

筋に発生した乳酸のうちの一部は、血液に送られる。そのあと、肺や肝臓に乳酸がそれぞれ送られ、そこで処理が行われる。

 

 筋の酸素負債
運動するとき、筋は酸素が不足した状態で収縮を行う。運動が終わった後、足りなかった分多くの酸素を補って、筋に溜まった乳酸などの物質の処理を行う。このことを、筋の酸素負債という。

 

運動が終わった直後では、呼吸が激しい状態がしばらく続く。このようになるのは、酸素が不足した状態から早く抜け出すために、体が酸素をなるべく多く補給しようとするからである。

 

 筋肥大
くり返し運動を続けた場合、筋線維の太さが増していく。そして、筋の張力も増えてくる。

 

筋のこの状態のことを、作業性筋肥大(運動性筋肥大)という。また、筋が肥大した場合であっても、筋線維の数が増えるわけではないといわれている。

 

同じ運動量で筋肥大の効果を高めたい場合、長い時間で軽い負荷の運動を行うより、短い時間で重い負荷の運動を行うのがよい。

 

 筋の萎縮
病気などで長期間寝たままの姿勢になると、筋の萎縮が引き起こされる。これを、廃用性萎縮という。廃用性萎縮になると、筋が短縮したり、筋の張力が弱くなったりする。