脊髄・脳・伝導路の障害

脊髄の障害
脊髄の障害が起こった場合、障害された場所が支配する器官などに異常が引き起こされる。また、脊髄が一定の位置で切断された場合、切断されたところから下の部分に支配されている場所で麻痺が引き起こされる。

 

 後索の障害
後索が障害された場合、脳に対して筋、関節、腱での深部感覚が伝わらなくなる。それにより、スムーズに運動することができなくなる。

 

 ※深部感覚 … 筋、腱、関節などから伝わる位置覚、振動覚、関節での運動覚などの感覚のこと。

 

 運動神経細胞の障害
前角にある運動神経細胞が障害された場合、その場所が支配する筋の萎縮と運動麻痺が引き起こされる。このような症状をもつ疾患には、ポリオがあげられる。ポリオはワクチンで予防することができる。

 

 脊髄癆(せきずいろう)
神経梅毒における神経症状の1つとして、脊髄癆(せきずいろう)がある。脊髄癆の場合、膝蓋腱反射や排便反射などの反射が起こらなくなってしまう。

 

 

脳の障害
脳の障害には、脳腫瘍、脳血管の障害、脳の炎症などがある。

 

 脳腫瘍
脳腫瘍の場合、頭蓋の内圧が上昇する。そして、めまい、頭痛、嘔吐(おうと)などが現れることが多い。脳腫瘍が視床下部に存在する場合、太りやすくなったり、尿崩症が引き起こされたりする。

 

 脳血管の障害
脳出血や、脳塞栓と脳血栓によって起こる脳梗塞などによって、脳の血管が障害されることがある。この場合、大脳皮質や脳幹にある中枢の作用が弱まる、もしくは失われる。

 

脳動脈硬化や高血圧をもつ高齢者の場合、とくに脳血管での障害が起こりやすい。

 

 脳の炎症
脳と脊髄の表面をおおう膜として、髄膜がある。髄膜は病原菌などが原因となって炎症を起こすことがある(髄膜炎)。

 

また、流行性脳炎になった後は、下行性伝導路である錐体外路系での障害が、主として引き起こされる。それによって、筋が固まって動きにくくなったり、無意識に運動が起こったりする。これらの症状は、パーキンソン症候群にあてはまる。

 

 

伝導路の障害
伝導路の障害には、上行性伝導路のものと下行性伝導路のものがある。

 

 上行性伝導路の障害
上行性伝導路には、脊髄小脳路、脊髄視床路、長後索路などがある。

 

・脊髄小脳路の障害
脊髄小脳路が障害された場合、筋の運動における協調性の維持ができなくなる。

 

・脊髄視床路の障害
脊髄視床路が障害された場合、温度覚と痛覚が失われる。

 

・脊髄視床路と長後索路の障害
脊髄視床路に加えて長後索路が障害された場合、触覚が失われる。

 

 下行性伝導路の障害
下行性伝導路には、錐体路と錐体外路がある。

 

・錐体路の障害
錐体路が障害された場合、筋の運動麻痺が引き起こされる。また、足の底部をこすったときに、母指が背中側に曲がるバビンスキー反射という反射が現れる。

 

・錐体外路の障害
錐体外路が障害された場合、複雑な運動ができなくなったり、筋に異常な緊張が起こったりする。