心臓の内圧の変化、心音

心臓の内圧の変化
心周期によって、心房の内部と心室の内部のそれぞれの圧は異なる。血液を心房から心室へ、心室から動脈へと送るのには、心臓の内圧の変化が関与している。

 

 等容性収縮期
心臓の収縮が始まると、左心室と右心室のそれぞれの内圧が上がる。これにより、房室弁(僧帽弁と三尖弁の2つ)が閉じる。房室弁が閉じることで、心臓の収縮がさらに進行する。すると、心室の内圧が上がる。

 

心室の内圧が動脈の内圧よりも高くなると、すでに閉じていた動脈弁(大動脈弁と肺動脈弁の2つ)が開く。ここまでを、等容性収縮期という。等容性収縮期の間では、心室の中の血液の量は変化しない。

 

 駆出期
等容性収縮期の次には、駆出期が続く。血液が心室から送り出されている期間のことを、駆出期という。

 

 等容性拡張期
駆出期の次には、等容性拡張期が続く。

 

心臓が拡張を開始した場合、心室の内圧が下がる。心室の内圧が下がることで、最初に動脈弁が閉じられる。そこからさらに内圧が下がっていく。心室の内圧が心房圧よりも低くなると、房室弁が開かれる。

 

 充満期
心房から心室に血液が満たされている間の期間のことを、充満期という。そして充満期から、また等容性収縮期へと戻り、心周期がくり返し行われる。

 

 心不全による心臓の内圧の異常
心不全になると、心筋の収縮の力が弱まる。さらに、収縮期になっても、大動脈の圧力に抵抗するため、十分に血液を送り出せなくなる。

 

さらに、拡張期では、大量の血液が心房から心室へと送られる。それによって、心室拡張末期圧が高まる。この場合、左室拡張末期圧が20mmHg以下にならない限り、心拍出量が増えることになる。

 

 

心音
心臓の拍動によって発生する音を心音という。通常の場合、心音にはⅠ音Ⅱ音とが存在する。また、心音を聞く方法として、聴診器を使う、前胸壁に直接耳をあてるなどの方法がある。

 

 Ⅰ音
Ⅰ音は、低くて鈍い音であり、振動数は約60Hzとなっている。Ⅰ音が一番大きく聞こえる場所は、心尖部である。Ⅰ音は、以下の音の組み合わせである。

 

 ・動脈弁(肺動脈弁と大動脈弁)が開く音

 

 ・心室収縮の初期に房室弁(僧帽弁と三尖弁)が閉じる音

 

 Ⅱ音
Ⅱ音は、短くて高めの音であり、振動数は約100Hzとなっている。Ⅱ音が一番大きく聞こえる場所は、動脈弁が存在する心基部である。

 

拡張期が始まるときに、動脈弁である肺動脈弁と大動脈弁の2つが、一斉に閉じることでⅡ音が発生する。

 

・肺動脈音
Ⅱ音のうち、肺動脈弁が閉じることで聞こえる音が肺動脈音である。肺高血圧症の患者や、若年者の場合、この肺動脈音が大きく聞こえる。

 

・大動脈音
Ⅱ音のうち、大動脈弁が閉じることで聞こえる音が大動脈音である。高血圧症を引き起こした場合、この大動脈音がより大きく聞こえる。

 

 心雑音
心音とは別の雑音が聞こえる場合がある。この雑音のことを心雑音という。心雑音は、弁膜障害による弁膜の狭窄が起きた場合などで聞こえることがある。

 

狭窄した弁を通過する血液が不規則に流れることで、弁膜の狭窄による心雑音が発生する。また、房室弁の狭窄の場合には、拡張期に心雑音が生じる。一方、動脈弁の狭窄の場合には、収縮期に心雑音が生じる。