電解質異常、補充液、浮腫(水腫、むくみ)

電解質異常
アシドーシスやアルカローシスだけでなく、それぞれの電解質が増えすぎたり減りすぎたりした場合も、電解質の異常に含まれる。

 

アシドーシスとアルカローシスについては、「アシドーシス・アルカローシス、脱水(水欠乏性脱水・ナトリウム欠乏性脱水)」のページで解説している。

 

 低ナトリウム血症
血清や血漿に含まれるナトリウムの濃度が下がった状態を、低ナトリウム血症という。低ナトリウム血症は、主に次のような場合に引き起こされる。

 

 ・ナトリウムの排出を増やす利尿薬を服用し、さらに、わずかな塩分しか摂らない食生活を続けている場合。

 

 ・副腎皮質の病気であり、食欲不振や低血圧などの症状を引き起こすアジソン病を発病している場合。

 

 ・下痢や嘔吐が長く続いている場合。

 

・低ナトリウム血症の症状
低ナトリウム血症が引き起こされた場合、吐き気、肉体の衰弱などの症状が現れる。また、ひどいときには、意識の低下がおこる。

 

・低ナトリウム血症の治療
濃度が高い食塩水を与えたり、水分摂取を制限したりすることが、低ナトリウム血症の治療法としてあげられる。

 

 

 高カリウム血症
血漿に含まれるカリウムの量は、4.0~5.3mEq/リットルとなっているのが普通である。血漿に含まれるカリウムの濃度が、5.0mEq/リットル以上になった状態が、高カリウム血症である。

 

高カリウム血症は、腎臓からのカリウムの排出が妨げられているときに起こることが多い。

 

高カリウム血症が進行する場合、心臓の興奮が妨げられる。これにより、心臓が止まる危険性がある。また、血漿内のカリウムの値が、8mEq/リットル以上を示す場合、心筋が収縮されない危険な状態になる。

 

・高カリウム血症の治療
高カリウム血漿の治療法としては、イオン交換樹脂の投与、透析療法があげられる。これらの治療により、血漿に含まれるカリウムの濃度を下げる。

 

 

 低カリウム血症
血漿のカリウムの値が、3.5mEq/リットル以下になった状態が、低カリウム血症である。低カリウム血症が起こる原因としては、カリウムの摂取量が少ない、カリウムの排出量が多い、副腎皮質での腫瘍があげられる。

 

・低カリウム血症の症状
低カリウム血症の症状には、意識障害、筋の無力状態などがある。

 

 

 高カルシウム血症
血液に含まれるカルシウムが濃度が、正常値よりも高い状態を高カルシウム血症という。高カルシウム血症は、主に次のような場合に引き起こされる。

 

 ・悪性腫瘍が骨に転移した場合

 

 ・上皮小体の機能が異常に亢進された場合

 

 ・ビタミンDを多く摂りすぎた場合

 

・高カルシウム血症の症状
高カルシウム血症の症状には、腎結石、嘔吐、便秘、昏睡(こんすい)状態などがあげられる。

 

 ※昏睡状態 … 痛みの刺激を与えても反応せずに眠ったままとなる状態のことを昏睡状態という。

 

 

 低カルシウム血症
血漿に含まれるカルシウムの濃度が、正常値よりも低い状態を低カルシウム血症という。低カルシウム血症は、主に次のような場合に引きおこされる。

 

 ・ビタミンDが不足した場合

 

 ・腎機能が障害された場合

 

 ・上皮小体の機能の低下

 

低カルシウム血症では、筋のけいれんであるテタニーを起こしやすくなる。

 

 

補充液
電解質を失った場合、脱水状態、アシドーシスの場合には、補充液の投与が行われることがある。補充液には、生理食塩水、ブドウ糖液、炭酸水素塩液、ハルトマン液、リンゲル液、乳酸ナトリウム液などが存在する。

 

また、体液に含まれる電解質と水の構成における変化によって、どの補充液を使用するべきかが異なる。アシドーシスの場合では、炭酸水素塩液、乳酸ナトリウム液などが使われることが多い。

 

 

浮腫(水腫、むくみ)
間質液が過剰に存在する状態を浮腫(水腫、むくみ)という。血中のタンパク質の不足、心臓や腎臓の疾患、肝硬変などによって、浮腫が引き起こされる。

 

浮腫のうち、液体が溜まる場所が胸腔であるものは胸水という。また、液体が溜まる場所が腹腔であるものは腹水という。

 

 低タンパク性浮腫
タンパク質の不足を原因とする栄養失調症の場合、血漿に含まれるタンパク質が失われる。

 

また、腎臓疾患に含まれるネフローゼ症候群の場合にも、タンパク質が尿中へと多く失われる。それによって、血漿に含まれるタンパク質が大きく失われる。

 

これらの場合、膠質浸透圧がタンパク質の不足によって低下する。それにより、末梢の毛細血管において、間質液から血管内へと移動する水が少なくなる。その結果、浮腫や腹水が引き起こされる。

 

 

 心性浮腫
心臓の疾患によって起こる浮腫を心性浮腫という。

 

心臓の疾患によって、心臓が送り出す血液の量が減った場合、腎臓に流れる血液の量が減る。それにより、腎臓にある糸球体から濾過(ろか)される尿の量が減る。その結果、水が体内に溜まってしまう。

 

腎臓の血行に異常がある場合、腎臓の働きが悪化し、ナトリウムを排出しづらくなる。その結果、ナトリウムが流れずにとどまってしまう。

 

ナトリウムには、水分と一緒に自身を体内にとどめようとする作用がある。それによって、浮腫がさらに起きやすくなる。

 

心臓の働きが低下した場合、血流が悪化してしまい、静脈圧が上昇する。それにより、間質液を戻しにくくなる。これらのことが起こるため、心臓の疾患にかかった場合に浮腫を生じる。

 

 

 腎性浮腫
腎臓の異常によっておこる浮腫を腎性浮腫という。

 

腎臓には毛細血管の集まりである糸球体がある。糸球体がもつ濾過作用が弱まった場合、尿の量が減少する。これにより、ナトリウムや水が血液の中に溜まり、組織内にナトリウムや水が移る。その結果、浮腫が引き起こされる。