核心温、熱産生、熱放散

体温(核心温、深部温)

 

 核心部と体温
体には、周りの環境の温度が変わっても、温度が変わらない場所がある。この場所を核心部という。

 

そして、核心部の温度のことを、体温(核心温、深部温)という。体温は個人差が大きい。そのため、1人ひとりが自分の体温を、ある程度把握しておくことが望ましい。

 

・外殻部、外殻温
体には、周りの環境の温度が変わった場合に、温度が変わる場所も存在する。その場所のことを外殻部という。そして、外殻部の温度のことを、外殻温という。

 

・体温の変化
体温は、個人差だけでなく、年齢や1日の時間帯などによっても変わってくる。また、成人よりも、小児の方が0.2~0.5℃ほど体温が高い傾向にある。その一方で、成人に比べて高齢者の体温は、少し低めである。

 

日中の場合、体温は1℃以内で変化する。また、体温は日の出に一番低くなり、日が暮れたときに一番高くなる。

 

・直腸温、口腔温、腋窩温
実際には、核心部の温度そのものを測ることはできない。そこで、核心温の代わりに、核心部の温度に近いとされている場所で体温を測定する。

 

その場所は、温度が高い順に直腸口腔腋窩(えきか)の3つである。それぞれの温度のことを、直腸温口腔温腋窩温という。それぞれの温度ごとの大体の差は、以下のようになっている。

 

 ・直腸温は、口腔温よりも0.4~0.6℃ほど高い

 

 ・直腸温は、腋窩温よりも0.8~0.9℃ほど高い

 

 ・寝た状態のとき、口腔温は、腋窩温よりも0.2~0.3℃高い

 

 ・イスに座った状態のとき、口腔温は、腋窩温よりも0.3~0.5℃高い

 

 

熱産生
体の中での熱の産生と、体の外への熱の放散は、バランスを保つように調節されている。そのため、人間の体温(核心温、深部温)は、つねに一定範囲の中に維持されており、周りの気温の変化に影響されない。

 

 組織での熱の産生
体の中の細胞や組織の物質代謝すべてにおいて、それぞれ熱が産生される。そして、糖質、タンパク質、脂質が熱をつくるための源となる。それぞれの栄養素ごとに生じる熱量は、以下のようになる。

 

 ・糖質1gにつき、4.1キロカロリー

 

 ・タンパク質1gにつき、4.1キロカロリー

 

 ・脂質1gにつき、9.3キロカロリー

 

組織によって、生じる熱の量は違う。皮膚や骨などの、代謝の少ない場所では、熱の産生量が少なくなる。一方、肝臓や骨格筋などの、代謝が多い場所では、熱の産生量が多くなる。
 
 特異動的作用(食事性誘発性産熱反応)
代謝は、食べ物を摂ることによって高められる。この作用のことを、特異動的作用(食事性誘発性産熱反応)という。

 

 

熱放散
体にある組織が熱を生じると、その組織に通っている血液に生じた熱が伝わる。これによって、その場所の血液温度が上がる。そして、この血液が体全体を循環することで、均等に体の熱が分けられる。

 

また、血液が皮膚の近くを通る場合、体の中よりも冷えた外の空気によって、体の熱が外に放散する。皮膚の場合、発汗などでも体内の熱が放散する。

 

 蒸発
水分1g蒸発するごとに、約0.58キロカロリーの気化熱が、体の外に出ていく。このように、蒸発が起こることで、体内の熱が失われることになる。

 

体の表面で起こる水分蒸発には、発汗不感蒸散とがある。体よりもその周りの気温の方が高い場合、体の熱を多く出そうとして発汗が起こる。

 

一方、不感蒸散は、つねに行われ続けている。そして、不感蒸散は、体温調節とは無関係である。

 

 放射
違う温度をもつ、触れていない物の方へ熱が伝わることを、放射という。皮膚温よりも低い温度の物体に対してのみ、皮膚からの放射が起こる。それにより、体の熱が外に出る。

 

 伝導、対流
皮膚の表面などから、それに接する空気を伝達することで、体の熱が外に出ていくことを伝導という。

 

皮膚温や呼気温よりも外の気温が低い場合のみ、伝導が起こる。また、伝導によって出ていく熱の量が少なくなるのは、皮膚の周りの空気が動かない場合である。

 

しかし、皮膚温によって皮膚に接する空気が温められた場合、皮膚の周りの空気がつねに入れかわり続ける対流の状態になる。この空気の対流により、非常に多くの熱を失うことになる。

 

伝導と対流によって減少する熱の量は、体を運動させたり風が吹いたりした場合、さらに多くなる。