汗腺・エクリン腺、発汗中枢、発汗の種類、汗の成分

発汗
汗が汗腺によって分泌されることを発汗という。発汗に必要となるものには、発汗中枢発汗神経汗腺汗腺に分布している血管が、それぞれあげられる。

 

汗腺
汗腺には、エクリン腺(小汗腺)とアポクリン腺(大汗腺)の2つがある。エクリン腺は、体全体の皮膚に分布している。アポクリン腺は、腋窩などの限られた場所に分布している。

 

エクリン線とアポクリン腺については、「皮膚の構造、付属器」のページで解説している。そのため、このページではエクリン腺がもつ機能を中心に扱う。

 

 汗腺に分布している血管
汗腺には、毛細血管が数多く分布している。汗の材料は、血液を通して汗腺に送られる。汗腺の分泌管の部分は、毛細血管によって包まれている。その毛細血管の表面積は、合計で約2.8m2になる。

 

・能動汗腺
汗を分泌する汗腺を能動汗腺という。能動汗腺は体全体で約230万個ある。

 

 汗腺に分布している神経
汗腺に分布している交感神経は、興奮を汗腺へと伝達する。それによって、発汗が促進される。汗腺に分布している交感神経の節後線維(節後ニューロン)は、アセチルコリンを出すコリン作動性になっている。

 

アセチルコリンと同じ作用をもつものに、ピロカルピンがある。ピロカルピンを投与した場合にも、発汗の促進が起こる。

 

 ※節後線維(節後ニューロン)
交感神経系と副交感神経系は、それぞれ節前線維(節前ニューロン)と節後線維(節後ニューロン)とで構成されている。節前線維は、中枢から神経節までである。節後線維は、神経節から平滑筋などの効果器までである

 

 

発汗中枢
視床下部の前方部分には、発汗中枢が存在する。また、発汗中枢の下位のものが、延髄や脊髄にあるとされている。

 

発汗中枢から神経線維が出ており、その神経線維が脊髄の胸髄の側柱の部分で、交感神経(発汗神経)につながる。

 

発汗中枢と体温調節中枢とは、重なり合っている。発汗中枢は、機能的には体温調節の一部のように働く。また、発汗中枢がとくに働くのは、体温が高い場合である。

 

 

発汗の種類
人に起こる発汗は、温熱性発汗精神性発汗味覚性発汗の3つに分けられる。

 

・温熱性発汗
筋の運動や周りの気温が高いなどによって、より活発に体熱が産生されたとき、温熱性発汗が起こる。温熱性発汗は、体温の調節に関係する発汗である。

 

温熱性発汗が起こる場所は、手のひら(手掌)と足底以外の体全体である。

 

体幹の側面や四肢では、この発汗が起こりにくい。ひたい(前額)、首(頸部)、手の甲(手背)、体幹の前方部と後方部では、この発汗が起きやすい。

 

温熱性発汗が蒸発するとき、気化熱を数多く奪う。それにより、体温が上がることが抑えられる。また、体重70キロの人であれば、100gの汗の蒸発によって、約1℃体温が下がる。

 

・精神性発汗
精神性発汗は、精神的に緊張したり感動したりした場合に起こる。精神性発汗が主にみられる場所は、腋窩(えきか)、手のひら、足底である。

 

緊張によって、手のひらに汗をかく場合があるが、それがこの精神性発汗である。また、精神性発汗は、個人差がとくに激しい発汗でもある。

 

また、あまりにも緊張が激しい場合、腋窩、手のひら、足底に限らず、顔から汗が出ることがある。

 

・味覚性発汗
味覚性発汗は、辛い食べ物などの刺激性食品を食べたときに起こる。味覚性発汗が主にみられる場所は、顔である。

 

 

汗の成分、尿の成分
汗を構成する成分は、尿の構成成分に近い。しかし、尿と汗とでは、その濃度が大きく違う。汗は、尿よりも成分が薄い傾向にある。したがって、発汗による代謝産物の排出は、尿の排出ほどの効果はない。

 

発汗の速さによって、汗に含まれる塩分の濃度が違う。塩化ナトリウムの濃度は、発汗量が多くなるほど下がるとされている。

 

体の外に排出される塩分の量は、発汗が活発であるほど多くなる。そのため、発汗が起きた後は、水だけでなく塩化ナトリウムも補うことが大切である。