肝炎ウイルス(A型・B型・C型・D型・E型)

A型肝炎ウイルス(HAV)
A型肝炎ウイルスは、RNAをもつウイルスである。この肝炎ウイルスは、ホルマリンによって不活性化されるが抗原性が残るため、この性質を応用して不活化ワクチンをつくることができる。

 

 A型肝炎ウイルスの感染経路
A型肝炎ウイルスは便口感染を起こし、肝細胞で増殖を行う。増殖したウイルスは、胆汁と胆管を経て、便に混じって排出される。

 

 A型肝炎ウイルスの病原性
A型肝炎ウイルスに感染した場合、2~6週間ほどの潜伏期の後に、A型肝炎を発病する。発病する際には、38℃を超える発熱が起こる。この発熱と同時に、嘔吐、食欲不振、悪心、肝腫大などが引き起こされる。

 

 A型肝炎ウイルスに対する予防法
A型肝炎ワクチンの予防接種が、予防法としてあげられる。

 

 

B型肝炎ウイルス(HBV)
B型肝炎ウイルスは、DNAをもつウイルスである。また、新生児、乳児、免疫不全の成人がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した場合、HBVキャリアーとなる。

 

 B型肝炎ウイルスの感染源
B型肝炎患者やHBVキャリアーが感染源となる。B型肝炎の感染経路には、出産時における母から胎児への感染、性交による感染、血液を通して行われる医療行為などがあげられる。

 

 B型肝炎ウイルスの病原性
B型肝炎ウイルスが血液を通して感染した場合に、B型肝炎が引き起こされる。

 

B型肝炎のうち、急性のものでは、感染して60日ほどの潜伏期の後で発病するか、症状が起こらない不顕性感染となる。慢性のものでは、肝がんや肝硬変などに症状が進むことがある。

 

 B型肝炎ウイルスに対する予防法
遺伝子組み換え成分ワクチンであるB型肝炎ワクチンなどの予防接種が、予防法としてあげられる。

 

 

C型肝炎ウイルス(HCV)
C型肝炎ウイルスは、RNAウイルスである。

 

 C型肝炎ウイルスの感染経路
C型肝炎ウイルスは、主に血液を介して感染する。

 

 C型肝炎ウイルスの病原性
C型肝炎ウイルスによって、C型肝炎が引き起こされる。

 

C型肝炎ウイルスに感染した場合、2~16週間ほどの潜伏期をおいてC型肝炎が発病する。C型肝炎には、急性のものと慢性のものとがある。

 

急性C型肝炎の場合、現れる症状は軽いとされる。しかし、急性のC型肝炎の患者のほとんどは、慢性のC型肝炎にかかるか、C型肝炎ウイルスの保菌者(キャリアー)となる。

 

慢性C型肝炎の場合、肝硬変や肝がんが起こるとされる。

 

 C型肝炎ウイルスに対する治療法
インターフェロン療法が、治療法としてあげられる。

 

 C型肝炎ウイルスに対する予防法
予防法としては、他人の血液にはむやみに触れないように、注意を向けることがあげられる。

 

 

D型肝炎ウイルス(HDV)
D型肝炎ウイルスは、一本鎖のRNAをもつウイルスである。

 

 D型肝炎ウイルスの感染
D型肝炎ウイルスが感染するのは、B型肝炎ウイルスと一緒に同時感染する場合と、B型肝炎ウイルスの保菌者にD型肝炎ウイルスが重複感染する場合のどちらかである。

 

 D型肝炎ウイルスの病原性
D型肝炎ウイルスに感染した場合、3~20週間ほどの潜伏期の後に、D型肝炎を急に発病する。D型肝炎は重症化することが多く、劇症肝炎になることも珍しくない。

 

 D型肝炎ウイルスに対する予防法
B型肝炎ウイルスに感染していない状態であれば、B型肝炎ワクチンの予防接種が可能となっている。この予防接種が、D型肝炎ウイルスに対する予防法にもなる。

 

HBVキャリアーの場合には、ワクチンの予防接種ができないため、血液に対して注意することだけが、D型肝炎ウイルスに対する予防法となる。

 

 

E型肝炎ウイルス(HEV)
E型肝炎ウイルスは、一本鎖RNAをもつウイルスである。

 

 E型肝炎ウイルスの感染経路
E型肝炎ウイルスは、便口感染を経路として感染する。また、E型肝炎ウイルスの感染力は、A型感染ウイルスのものよりも低いとされている。

 

上記のことから、E型肝炎ウイルスが感染を起こすのに必要なウイルスの数は、A型肝炎ウイルスの場合よりも多い。

 

 E型肝炎ウイルス病原性
E型肝炎ウイルスに感染した場合、2~9週間ほどの潜伏期の後に、E型肝炎を発病する。病気の進行が早めで、劇症化が起こりやすい。また、A型肝炎よりも致命率が高い。

 

 E型肝炎ウイルスに対する予防法
血漿を使った化学療法薬の投与などが、予防法としてあげられる。また、その化学療法薬に使う血漿は、E型肝炎ウイルスの浸淫地の住民のものでなければ、予防効果が期待できない。