消毒薬、ハロゲン化合物、煮沸消毒

消毒液
消毒液は、用途によって適するものを使用する必要がある。

 

 ハロゲン化合物

 

・ヨウ素(I₂)
ヨウ素は、殺菌力が強いが、ヨウ素イオン(I-)になると殺菌力がなくなってしまう。そして、ヨウ素を水に溶かす場合には、ヨウ素と一緒にヨウ化カリウムを入れて溶かす必要がある。ヨウ化カリウムがないと、ヨウ素は溶けない。

 

ヨウ素にエチルアルコールを混ぜたものを、ヨードチンキという。ヨウ素の殺菌力にアルコールの殺菌力が加わり、芽胞も壊すことができる。

 

ヨウ素にポリビニルピロリドンを混ぜたものを、ポビドンヨード(ヨードポリビニルピロリドン)という。ヨードチンキに比べて、やや控えめな殺菌力をもつ。

 

・塩素(Cl₂)
塩素は人体に有害であり、一般的な消毒に用いることはない。水道水の消毒に利用できる。

 

気体となっている塩素が水に溶けた場合、次亜塩素酸(HOCl)となる。次亜塩素酸が分解するとき、酸化力が強い活性酸素を生じる。この活性酸素には、殺菌作用が備わっている。

 

また、塩素がイオン化した塩素イオン(Cl-)には、殺菌作用がない。

 

・さらし粉(カルキ)(CaOCl₂)
さらし粉(カルキ)は、塩素と消石灰を混ぜることでつくられる。このとき混ぜる塩素の量は、全体の30%以上にしなければならない。さらし粉は、浴槽やプールなどの消毒の場合に利用できる。

 

・クロラミン(T)
クロラミンは有機塩素化合物であり、液体内で塩素を発生させる。この作用によって、殺菌が可能である。

 

・次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)
次亜塩素酸ナトリウムは酸化作用をもっており、その作用によって殺菌が可能である。

 

 酸化剤
酸化剤は酸素を発生させ、その酸素がもつ強い酸化作用を用いる消毒薬である。酸化剤には、過酸化水素(H₂O₂)、過酸化酢酸過マンガン酸カリウムがある。

 

 アルキル化剤

 

・ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドは、タンパク質がもつアミノ基(-NH₂)をアルキル化する働きをもち、それによってタンパク質を不活化させる。また、ホルムアルデヒドの35~37%の水溶液のことを、ホルマリンという。

 

 ※不活化 … 本来の働きが失われること。

 

・グルタルアルデヒド(グルタラール)
グルタルアルデヒド(グルタラール)は、2つのアルデヒド基(-CHO)をもつ。強い殺菌作用をもち、細菌がもつ芽胞にも効果がある。また、人体に対して強い毒性を示す。医療器具などの消毒に利用できる。

 

・エチレンオキサイド
エチレンオキサイドは、ガス滅菌に使用できるものであり、引火性と、人体に対する強い毒性をそれぞれ示す。細菌の芽胞や、さまざまな微生物に効果がある。

 

 アルコール類
アルコール類の消毒液には、エチルアルコール(エタノール)やイソプロピルアルコール(イソプロパノール)などがある。タンパク質の不活化や細胞膜の破壊といった殺菌作用を示す。細菌の芽胞には、あまり効かない。

 

また、エチルアルコールは100%のまま使用するよりも、約80%の水溶液の方が高い消毒力を示す。

 

 

煮沸消毒
沸騰した水を使って殺菌を行う方法を、煮沸(しゃふつ)消毒という。食品を殺菌するのに利用できる。また、煮沸消毒によって殺菌できる菌の温度は、菌の種類によって大きな差がある。