炎症の原因・経過

こちらのページでは、炎症とその原因・経過について、それぞれ解説していく。

 

炎症

組織が傷害された場合、それに対して組織が起こす反応を炎症という。炎症は、体の組織自身が起こす防御反応となっている。

 

炎症の5徴候

炎症の徴候には、発熱、発赤、腫脹、疼痛、機能障害があげられる。これら5つをまとめて炎症の5徴候という。

 

炎症の原因

炎症の原因となるもののうち、主なものを以下に示す。

 

化学的な因子

化学物質によって障害された場合に、炎症が引き起こされる。これには、酸などによって起こる腐食、特定の金属などによって起こる中毒などがあてはまる。

 

物理的な因子

高熱(やけどを生じる)、低温(凍傷を生じる)、放射能、電気などの刺激が一定の大きさで与えられた場合、これらが原因となって、炎症が引き起こされる。

 

感染症

病原性をもつ細菌やウイルスなどの微生物が感染した場合に、炎症を引き起こすことがある。

 

炎症の経過

炎症を、その経過によって大きく分類する場合、急性炎症と慢性炎症とに分けることができる。

 

●急性炎症
すぐに治まり、経過が早い炎症のことを急性炎症という。

 

●慢性炎症
その炎症の原因を取り除くのに時間がかかる場合の炎症や、長い間組織が傷害を受けている場合の炎症のことを慢性炎症という。慢性炎症は、長い間持続する。

 

炎症細胞

炎症を起こしている場所へと集合し、炎症に関わる細胞のことを炎症細胞という。炎症細胞になりうる細胞には、好中球、マクロファージ、リンパ球が存在する。

 

炎症細胞のうち、主に急性期で確認されるものには、好中球があげられる。一方、主に慢性期で確認されるものには、マクロファージやリンパ球があげられる。

 

炎症の経過の区分

炎症が発生してから治まるまでは、ほぼ決まった経過で進む。炎症の経過は、以下のように3つに区切って考えることができる。

 

1.組織が傷害される

組織が特定の外因により傷害を受けた場合、ロイコトリエンやヒスタミンなどの化学伝達物質が、壊された細胞などから出る。

 

このとき、壊された細胞などから出た化学伝達物質が、炎症メディエーター(炎症仲介物質)として作用する。その結果、炎症が起こる。

 

2.炎症細胞が浸潤する、血漿が滲出する

壊れた細胞などから出た炎症メディエーターのうち、ヒスタミンなどは、血管を拡張させて血流を遅くする。これによって、血液の流れが増える。そして、発熱と発赤の徴候が、炎症を起こした場所に現れる。

 

さらに、ヒスタミンなどの作用で、毛細血管がもつ内皮細胞が収縮する。そして、細胞と細胞とのすき間である細胞間隙を広くする。このため、血管の透過性が亢進した状態となる。

 

血管の透過性が亢進したことで、血液に含まれる血漿は、血液からもれ出る。すると、組織間液の量が増えて、組織が腫脹を起こす。

 

一方、血漿内に存在するホルモンであるブラジキニンの作用、組織間液の量が増えたことによる組織圧の上昇によって、痛覚受容体が刺激を受ける。それにより、痛み(疼痛:とうつう)が生じる。

 

また、炎症メディエーターのうちのロイコトリエンなどの作用により、死んだ細胞や異物などを取り込んで処理する貪食作用を行える好中球などの遊走が促される。さらに、炎症を起こした場所に炎症細胞が集められる。

 

炎症を起こした場所に集められた好中球などの炎症細胞からは、活性酵素リソソーム酵素などの酵素が出る。すると、炎症がより強められる。

 

3.組織が修復される

急性期における炎症の反応と組織に与えられる障害が、それぞれ落ち着いた場合、壊れた組織の治癒と、壊死した組織や残された有害物質の除去がそれぞれ行われる。これらの働きを修復という。

 

修復が行なわれる際の主な存在として、結合組織の中心的な構成細胞である線維芽細胞の他、慢性期の炎症細胞であるマクロファージリンパ球などがあげられる。

 

線維芽細胞は膠原線維を形成する。そして、傷ついた組織の傷を埋めて治す。マクロファージは、残った壊死細胞や異物を貪食作用で処理する。リンパ球は、病原を除去するために働く。

 

●肉芽組織(にくげそしき)
炎症の経過における組織の修復過程では、組織を修復させるのに必要な物質を運んだり、処理された物を運んだりする必要がある。こうした物質の運搬を行うために、毛細血管が数多くつくられる。

 

上記のような、組織の修復が行なわれる際に新しく生成され、数多くの毛細血管をもつ組織のことを、肉芽組織(にくげそしき)という。肉芽組織は、柔らかくて赤いふくらみの組織として、傷口などで確認できる。

 

●瘢痕組織(はんこんそしき)
組織の修復が進行するごとに、つくられた毛細血管が減っていく。そして、膠原線維の成分が増加していく。

 

組織の修復の進行に合わせて、柔らかくて赤い肉芽組織は、最後に硬くて白に近い色の組織に換わる。この硬くて白に近い色の組織を瘢痕組織(はんこんそしき)という。瘢痕組織は、膠原線維のみで構成されている。