炎症の型(滲出性炎・増殖性炎・特異性炎)
炎症には、いくつかの型が存在する。
滲出性炎
炎症のうち、血管内の成分の滲出(しんしゅつ、「にじみ出ること」)が、比較的強く起こるものを滲出性炎という。
滲出性炎は、滲出する成分の種類によっていくつかに分けられる。
●カタル
粘膜に起こった滲出性炎のことを、カタルという。
カタルは、滲出する成分によって分類でき、膿性カタル、粘液性カタル、漿液性カタルなどがある。
また、アレルギー性鼻炎は、漿液性カタルにあてはまる。
漿液性炎
凝固因子の1種にトロンビンがある。トロンビンの働きで、血液に含まれるフィブリノゲンが線維素(フィブリン)となる。
血漿(けっしょう 「血液の細胞以外の成分のこと」)のうち、線維素(フィブリン)以外の成分を血清(けっせい)という。
そして、この血清に近い成分をもつ液体を漿液(しょうえき)という。
主に滲出する物質が漿液となっている炎症のことを漿液性炎という。
漿液性炎にあてはまるものには、虫刺されのときの皮膚の腫れ、火傷した状態の皮膚の水ぶくれ(水疱:すいほう)などがある。
線維素性炎
炎症のうち、線維素(フィブリン)が多く析出(せきしゅつ、「溶液から個体が分かれて出ること」)する特徴をもつものを線維素性炎という。
線維素性炎にあてはまるものには、ジフテリア、線維素製心膜炎が存在する。
ジフテリアとは、「粘膜における線維素性炎」である。粘膜での線維素性炎の場合、粘膜の表面が、滲出(しんしゅつ)した線維素と壊死した物質によっておおわれる。
上記のことから、粘膜での線維素性炎のことを、偽膜性炎(ぎまくせいえん)という場合もある。
出血性炎
激しい出血を起こす炎症のことを出血性炎という。出血性炎にあてはまる疾患として、インフルエンザ肺炎があげられる。
化膿性炎
好中球が浸潤(しんじゅん)することが中心となっている炎症を化膿性炎(かのうせいえん)という。
化膿性炎にあてはまるものには、膿瘍(のうよう)、蜂巣炎(ほうそうえん 「フレグモーネ、蜂窩織炎:ほうかしきえん」とも呼ぶ)があげられる。
●膿瘍
壊死したものや好中球の集まりを膿汁(のうじゅう)という。膿汁は、黄色に近い色を示し、粘り気がある。
この膿汁が、組織の一部が欠けて新しくできた空洞の中に溜まった状態を膿瘍(のうよう)という。
●蓄膿
膿汁が、体にもともと存在する空洞に溜まっている状態を蓄膿(ちくのう)という。蓄膿にあてはまるものには、副鼻腔炎などがあげられる。
●蜂巣炎(ほうかえん フレグモーネ、蜂窩織炎:ほうかしきえん)
浮腫の発生と好中球の浸潤が広い範囲で起こることを特徴とする炎症として、蜂巣炎(ほうかえん フレグモーネ、蜂窩織炎:ほうかしきえん)がある。
蜂巣炎が確認される疾患として、急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)があげられる。
壊疽性炎
壊死のうち、嫌気性菌の感染などを含む独特な形態のもの壊疽(えそ)という。
そして、激しい壊疽を示す炎症のことを壊疽性炎(えそせいえん)という。壊疽性炎は、急性虫垂炎が治療されずに進んだ場合に確認されることがある。
増殖性炎
炎症のうち、細胞が増殖することを特徴にもつものを増殖性炎という。
増殖性炎にあてはまる疾患には、肺線維症(はいせんいしょう)や肝硬変症(かんこうへんしょう)があげられる。
特異性炎(肉芽腫性炎)
特殊な組織である肉芽腫(にくげしゅ)がつくられる増殖性炎のことを、特異性炎(肉芽腫性炎)という。
※ 肉芽腫(にくげしゅ)
類上皮細胞が、球のように集まった状態のもののこと
特異性炎にあてはまる疾患には、ハンセン病や結核などがあげられる。
●肉芽腫、類上皮細胞
異物などを取り込んだマクロファージが、取り込んだものを消化できないといった場合、そのマクロファージは類上皮細胞に変わる。
類上皮細胞は、紡錘形(ぼうすいけい 「レモンのような形」)をしている。
類上皮細胞は、異物などを包み込んで、その物質を周りの組織から隔絶(かくぜつ)させる。
類上皮細胞が、球のように集まった状態のものを肉芽腫(にくげしゅ)という。