高血圧症の種類(本態性高血圧症、続発性高血圧症)

体循環での動脈の血圧が高まった状態のことを高血圧症という。血圧の高さは、末梢血管の抵抗と心臓の拍出量によって決定される。

 

末梢血管の抵抗と心臓の拍出量に関係するものには、循環血漿量、環境因子、遺伝的な因子などがあげられる。

 

高血圧症の種類
高血圧症には、本態性高血圧症(一次性高血圧症)と続発性高血圧症(二次性高血圧症)とがある。

 

 本態性高血圧症(一次性高血圧症)
原因が不明である高血圧症のことを本態性高血圧症(一次性高血圧症)という。高血圧症を引き起こしたとき、そのほとんどは本態性高血圧症にあてはまる。

 

本態性高血圧症のほとんどは、壮年期を過ぎてから起こり、年齢を重ねるごとに進んでいく。また、本態性高血圧症の発病に関わるものとして、遺伝的素因があげられる。

 

・悪性高血圧症
本態性高血圧症のうち、速い進行を示し、わずかな経過で死に至るものを悪性高血圧症という。悪性高血圧症を起こすことが多いのは、若い人である。また、悪性高血圧症の場合、フィブリノイド壊死が確認されることが多い。

 

 続発性高血圧症(二次性高血圧症)
何らかの疾患に合わせて起こる高血圧症のことを続発性高血圧症(二次性高血圧症)という。続発性高血圧症には、いくつかの種類が存在する。

 

・腎性高血圧症
腎性高血圧症の場合、そのほとんどが、腎動脈硬化症などの腎血管性疾患や、慢性糸球体腎炎などの腎実質性疾患などによって起こる。

 

腎動脈の内腔は、動脈硬化症によって狭くなる。そして、糸球体に入る血液の量が減る。すると、糸球体に送られる血液の量を正常な状態にするため、ホルモン物質であるレニンの分泌が傍糸球体装置で行われる。

 

レニンの分泌により、血圧を上げる働きをもつ物質であるアルドステロンアンギオテンシンの放出が促進される。その結果、血圧が上げられる。

 

・内分泌性高血圧
内分泌性高血圧の場合、クッシング症候群、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症などによって、引き起こされる。

 

・神経性高血圧
神経性高血圧の場合、脳出血や脳腫瘍などの脳圧亢進の他、血管運動神経刺激などによって、引き起こされる。

 

・心臓血管性高血圧
心臓血管性高血圧の場合、大動脈硬化症や大動脈炎症候群などによって、引き起こされる。

 

 

高血圧症による変化
高血圧症によって、結果的に起こる変化として、心肥大、体全体の臓器での細動脈硬化があげられる。

 

 心肥大
心肥大については、「心臓の構造、心肥大、心不全」のページで解説している。

 

 細動脈硬化
臓器の中では、細動脈の収縮や細動脈の弛緩により、末梢の血管の血圧と臓器の中を流れる血液の量とが、それぞれ調節される。

 

高血圧症になると、細動脈が行う血圧の調節に大きな負荷がかかる。その結果、内膜の肥厚や内膜の硝子様変性が引き起こされる。この状態が細動脈硬化である。

 

細動脈硬化が確認されることが多い場所として、脳や腎臓があげられる。脳での細動脈硬化を原因とするものには、脳出血がある。また、腎臓での細動脈硬化を原因とする疾患には、腎硬化症がある。

 

 

高血圧症の治療
高血圧症の治療法として、食事療法、生活環境の改善、薬物療法があげられる。

 

 食事療法
体重を増やさないために、食事の量を制限する。その他にも、血圧を下げるために、塩分を摂る量を1日あたり6g未満に抑える。

 

 生活環境の改善
ストレスは、血圧を上昇させる原因になる。そのため、ストレスをなるべく感じない生活環境に改善することが重要である。

 

 薬物療法
血圧のコントロールが、食事療法や生活環境の改善だけでは不十分な場合、薬物療法が行われる。高血圧症の治療に用いられる薬剤のうち、そのいくつかを以下に示す。

 

・利尿薬
利尿を促して、循環する血漿の量を減少させる作用をもつ。

 

・Ca拮抗薬
血管の収縮を行う筋肉の作用を阻害する作用をもつ。

 

・α受容体刺激薬、β遮断薬、末梢交感神経抑制薬などの薬剤
交感神経の刺激を抑制し、末梢血管の収縮を抑制する作用をもつ。