貧血の分類・症状

貧血
赤血球の量、ヘモグロビン(血色素)の量、ヘマトクリット値(血液中において赤血球に占められる容積の値)が、それぞれ正常な範囲よりも少なくなった状態が貧血となる。

 

 貧血の症状
赤血球は、酸素を体全体に送る働きをもつ。貧血の場合、赤血球が少ない状態になっている。そのため、体全体で酸素の不足が起こる。

 

貧血によって現れる症状には、心拍数が増える、息切れが生じる、疲労しやすくなる、気を失う、めまいなど、さまざまなものがあげられる。

 

貧血によっては、黄疸が確認されることがある。また、青白い皮膚を示すことがある。

 

 貧血におけるさまざまな分類

 

・貧血の発生原因の分類
貧血の発生原因は、以下の3つに分類することができる。

 

 ・出血性(失血性)
 ・赤血球の産生の異常
 ・赤血球の破壊の亢進

 

・赤血球の産生の異常の分類
貧血の発生原因のうち、「赤血球の産生の異常」には、以下の3つの場合があげられる。

 

 ・赤血球の材料となる物質が足りなくなった場合
 ・赤血球を生成する場が失われた場合
 ・赤血球を生成するシステムに異常が発生した場合

 

・赤血球のサイズの分類
赤血球のサイズは、貧血の原因によって異なる。そして、赤血球のサイズによって、以下の3つの表現に分けられる。

 

 ・正球性 : 赤血球のサイズが正常である
 ・小球性 : 赤血球のサイズが正常よりも小さい
 ・大球性 : 赤血球のサイズが正常よりも大きい

 

・ヘモグロビンの量の分類
「赤血球のサイズの分類」と同じく、ヘモグロビンの量も貧血の原因によって異なる。そして、ヘモグロビンの量によって、以下の3つの表現に分けられる。

 

 ・正色素性 : ヘモグロビンの量が正常である
 ・低色素性 : ヘモグロビンの量が正常よりも少ない
 ・高色素性 : ヘモグロビンの量が正常よりも多い

 

 

鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンをつくるために必要な材料に、鉄がある。鉄が足りなくなると、つくることができるヘモグロビンの数が少なくなる。鉄の不足によってヘモグロビンが減ったことで引き起こされる貧血が鉄欠乏性貧血である。

 

 鉄欠乏性貧血で確認されるもの
鉄欠乏性貧血の場合、主に以下のことが確認される。

 

 ・末梢血(末梢の血管に流れる血液)に存在する赤血球のサイズが小さい(小球性)
 ・末梢血に存在する赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少ない(低色素性)
 ・血清に含まれる鉄の量が少ない

 

 鉄欠乏性貧血の治療
鉄欠乏性貧血の治療法として、鉄剤の使用、出血を起こす原因を取り除くなどがあげられる。

 

 

溶血性貧血
赤血球は、120日ほどの寿命をもっている。赤血球が寿命を迎える前に壊されることで起こる貧血が溶血性貧血である。

 

 溶血性貧血の原因での分類
溶血性貧血を、その原因となるもので分類する場合、先天的、あるいは遺伝的な異常によって起こる先天性溶血性貧血(内因性溶血性貧血)と、後天的な異常によって起こる後天性溶血性貧血とに分けられる。

 

先天性溶血性貧血にあてはまる溶血性貧血には、鎌状赤血球症、遺伝性球状赤血球症などがあげられる。後天性溶血性貧血にあてはまる溶血性貧血には、胎児性赤芽球症、自己免疫性溶血性貧血などがあげられる。

 

 溶血性貧血で確認されるもの
溶血性貧血で確認されるものとして、黄疸、赤血球の寿命が短くなる、脾腫(ひしゅ)、尿に含まれるウロビリノーゲンが増えるなどがあげられる。

 

また溶血性貧血は、赤血球のサイズとヘモグロビンの量が正常な状態で起こる貧血である「正球性正色素性貧血」であることが一般的である。

 

 

再生不良性貧血
骨髄の機能が侵された場合に起こる貧血として、再生不良性貧血がある。再生不良性貧血の場合、骨髄での造血細胞が占める割合が極めて少ない。その代わりに、骨髄での脂肪組織が占める割合が大きくなっている。

 

上記のように、骨髄に含まれる造血細胞が減ることで、赤芽球系細胞、顆粒球系細胞、巨核芽球がそれぞれ減ることになる。

 

 再生不良性貧血の原因
症状が重い細菌感染、抗がん剤などの薬剤の副作用、放射線による被爆(ひばく)など、これらによって起こる骨髄の機能障害が、再生不良性貧血の原因となる場合がある。

 

しかし、再生不良性貧血のほとんどは、原因がわからないものである。

 

 再生不良性貧血で確認されるもの
再生不良性貧血は、血球のサイズとヘモグロビンの量とが正常な場合の貧血である「正球性正色素性貧血」となっている。

 

再生不良性貧血の場合、末梢の血液に存在する赤血球、白血球、血小板のそれぞれの減少が目立つ。

 

白血球の減少により、健康なときには感染しなかった微生物に感染する日和見感染を起こし、それが原因で死に至る恐れがある。また、血小板の減少により、出血が原因で死に至る恐れがある。

 

 再生不良性貧血の治療
再生不良性貧血の治療法として、薬剤の使用があげられる。また、重症化した再生不良性貧血の場合の治療法には、骨髄の移植や輸血があげられる。

 

再生不良性貧血のうち、原因が明確であるものの場合、その原因を取り除くことも治療法にあげられる。

 

 

巨赤芽球性貧血
食事などで摂る葉酸やビタミンB12の量が十分でない場合、巨赤芽球性貧血が起こる。

 

この貧血の名前にもある「巨赤芽球」は、名前の通り大きいサイズの赤芽球である。巨赤芽球は、核の成熟が細胞質の成熟よりも遅いことで発生する。

 

巨赤芽球性貧血の状態では、巨赤芽球が骨髄の内部で確認される。また、巨赤芽球性貧血にあてはまる主な貧血には、悪性貧血があげられる。

 

 悪性貧血
ビタミンB12が不足している場合、巨赤芽球性貧血にあてはまる貧血である悪性貧血が引き起こされる。

 

・ビタミンB12と内因子との関係
胃の粘膜では、糖タンパク質の1種である内因子がつくられる。内因子は、ビタミンB12を吸収するのに必要不可欠な物質である。

 

自己免疫によって内因子に対する抗体がつくられた場合や、胃の手術を受けた場合などで、体内の内因子の不足が起こる。これにより、ビタミンB12が十分に吸収されなくなり、悪性貧血を起こすことになる。

 

 巨赤芽球性貧血の治療法
巨赤芽球性貧血の治療法として、鉄剤の使用、ビタミンB12の投与などがあげられる。また、巨赤芽球性貧血のうち、葉酸の摂取不足で引き起こされたものの場合、葉酸の投与が治療法としてあげられる。