肺炎の種類と症状、塵肺症 − 健康と医療の情報局

 

肺炎の種類と症状、塵肺症

 

肺炎
肺での炎症をまとめて肺炎という。

 

 肺炎の炎症部位での分類
肺炎を炎症が起きている場所で分類する場合、肺胞性肺炎間質性肺炎とに分けられる。

 

・肺胞性肺炎
肺炎のうち、肺胞の内部で炎症が生じているものを肺胞性肺炎という。また、肺胞性肺炎は拡大の仕方によって、気管支肺炎大葉性肺炎とに分類される。

 

 ・気管支肺炎
気管支肺炎の場合、巣状かつ散らばって存在する炎症が確認される。気管支肺炎は、細気管支からその周りの肺胞へと炎症が少しずつ広がっていく。

 

 ・大葉性肺炎
肺胞性肺炎のうち、右上葉や左下葉などの肺葉1つ以上に、肺炎の病変が速い速度で広がっていくものを大葉性肺炎という。大葉性肺炎では、重い症状が引き起こされる。

 

・間質性肺炎
肺炎のうち、肺胞の壁(間質)に炎症が生じているものを間質性肺炎という。間質性肺炎の原因となるものは、微生物の感染に限らず、さまざまである。

 

 ・特発性間質性肺炎
間質性肺炎のうち、原因がわからないものを特発性間質性肺炎という。

 

 ・肺線維症
間質性肺炎が慢性期に入った場合、侵されている肺胞が線維組織に置き換えられ、元に戻らなくなる。この状態を肺線維症という。

 

肺線維症を発病すると、低酸素血症や拘束性換気障害などが引き起こされる。また、何かの作業を行ったときに、呼吸困難、乾いた咳(せき)、息切れなどの症状が起こる。

 

 肺炎を発病した患者による分類
肺炎がどのような者に発病したものかによって、市中肺炎院内肺炎とに分けられる。

 

・市中肺炎
肺炎のうち、一般社会での生活を送っている者に発病するものを市中肺炎という。

 

・院内肺炎
肺炎のうち、病院で入院生活を送っている者に発病するものを院内肺炎という。

 

 嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)
口腔の内部に含まれていたもの(内容物)などが、間違って肺に送られてしまい、それによって肺炎が引き起こされることがある。このような肺炎のことを嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)という。

 

 

肺炎の種類と症状
肺炎にあてはまる疾患のうち、主なものを以下に解説していく。

 

 細菌性肺炎
細菌が原因となって引き起こされる肺の急性炎症として、細菌性肺炎がある。細菌性肺炎は、肺胞性肺炎となっている場合が多い。

 

宿主がもつ抵抗力の強さと、細菌性肺炎を引き起こした細菌の毒の強さとの兼ね合いによって、気管支肺炎で抑えられるか、大葉性肺炎まで広がっていくかが変わる。

 

加齢によって、唾液の分泌量が減ると、病原菌が口腔内で増殖する可能性が高くなる。これを抑えるためには、食後などに口腔内をきれいにする習慣をつけることが望ましい。

 

また、76歳以上の高齢者の場合には、肺炎での死亡率がとくに高いとされる。

 

・細菌性肺炎の起炎菌
細菌性肺炎の場合、市中肺炎か院内肺炎かによって、重要視される起炎菌が違う。

 

 ・市中肺炎である細菌性肺炎の起炎菌
市中肺炎である細菌性肺炎の場合、ヘモフィルス菌肺炎球菌が、重要視される起炎菌としてあげられる。

 

 ・院内肺炎である細菌性肺炎の起炎菌
院内肺炎である細菌性肺炎の場合、クレブシエラ緑膿菌などが、重要視される起炎菌としてあげられる。

 

また、院内肺炎の原因となる細菌として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)があげられる。大部分の抗菌薬は、MRSAに対して効果がない。

 

 

 マイコプラズマ肺炎
病原菌であるマイコプラズマ・ニューモニエによって引き起こされる肺炎のことをマイコプラズマ肺炎という。マイコプラズマ肺炎のほとんどは、間質性肺炎となる。さらに、症状が軽い場合が多いとされる。

 

また、マイコプラズマ・ニューモニエは、市中肺炎の原因となることが多い。

 

・マイコプラズマ肺炎の症状
マイコプラズマ肺炎の症状として、乾いた咳(せき)があげられる。

 

・マイコプラズマ肺炎の治療
マイコプラズマ肺炎の治療法として、抗菌薬の投与があげられる。

 

 

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)
レジオネラ菌によって引き起こされる肺炎として、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)がある。新生児や高齢者のように、比較的抵抗力が低い人の場合、大葉性肺炎にまで広がる恐れがある。

 

1976年にアメリカ在郷軍人会の会合があり、その会合で多くの人に肺炎が引き起こされた。そして、この肺炎の患者の肺で、レジオネラ菌という病原菌が見つかった。

 

 

 ウイルス性肺炎
ウイルスが原因となって引き起こされる間質性肺炎のことをウイルス性肺炎という。ウイルス性肺炎では、ウイルスの感染の後に細菌の感染を起こすことが多い(重複感染、二次感染)。

 

・ウイルス性肺炎の原因
ウイルス性肺炎の原因になるウイルスとして、インフルエンザウイルスサイトメガロウイルス麻疹ウイルスがあげられる。

 

 ・インフルエンザウイルスによる肺炎
インフルエンザウイルスの場合、一般的には、細菌との混合型の肺炎を引き起こす。インフルエンザウイルスによるウイルス性肺炎は、命に関わる危険性が高く、罹患(りかん)率も高めである。

 

 ・サイトメガロウイルス肺炎
サイトメガロウイルスによる肺炎の場合、サイトメガロウイルス肺炎という。

 

サイトメガロウイルス肺炎は、個体の抵抗力の低下などで感染する日和見感染によって発病することが多い。また、サイトメガロウイルス肺炎は、間質性肺炎にあてはまる。

 

 ・麻疹ウイルスによる肺炎
麻疹ウイルスによって引き起こされる肺炎は、間質性肺炎にあてはまる。麻疹ウイルスによる肺炎をとくに起こしやすいのは、免疫力が失われている小児である。

 

 

 ニューモシスチス・カリニ肺炎
ニューモシスチス・カリニという真菌によって引き起こされる肺炎として、ニューモシスチス・カリニ肺炎がある。間質性肺炎にあてはまる。免疫力が弱っている場合、ニューモシスチス・カリニの日和見感染を起こす恐れがある。

 

 

塵肺症
特定の鉱物の粉塵を吸い込んだ場合、吸い込んだ鉱物が原因となって、肺が傷害される。このような疾患が塵肺症である。塵肺症には、アスベスト症珪肺症などがある。

 

 アスベスト症
塵肺症のうち、アスベスト(石綿)の粉塵を吸い込んだことで発病するものをアスベスト症という。また、アスベストの粉塵を吸い込んだ場合、肺腺がんを引き起こす危険性が高くなる。

 

 珪肺症
塵肺症のうち、結晶シリカという鉱物を吸い込んだことで発病するものを珪肺症という。

 

一般的に、珪肺症が発病するまでにかかる期間は、約20年以上とかなり長くなっている。さらに、その20年以上の間、原因となる鉱物の曝露(ばくろ:さらされること)を受けるような生活を送ることも、発病に必要となる条件になる。

 

珪肺症における呼吸器の症状は、比較的に軽い傾向にある。また、珪肺症の場合、同じ時期に多発性の小さな結節の発生が、肺門リンパ節や胸膜などの場所で起こる。