胸膜の構造、胸膜疾患の種類

胸膜の構造
胸膜は、胸壁の内側の面にある壁側胸膜と、肺の表面にある臓側胸膜との2つで構成されている。また、壁側胸膜と臓側胸膜によって、胸膜腔がつくられている。

 

胸膜腔の内側には、透明の液体がわずかに存在している。また、胸膜腔は陰圧をもつ。

 

・胸水
胸膜腔の内側に、液体が異常に多く溜め込まれることを胸水という。胸水の量が多い場合には、肺が圧迫される。これにより、呼吸困難が引き起こされる。

 

肝硬変やネフローゼ症候群などの全身性疾患の場合にも、胸水が確認される。

 

 

胸膜炎
胸膜炎は、細菌・ウイルス・真菌などの微生物、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチなどが原因となって引き起こされる。胸膜炎の種類には、化膿性胸膜炎漿液性胸膜炎線維素性胸膜炎がん性胸膜炎が存在する。

 

・化膿性胸膜炎
化膿性胸膜炎は、胸膜腔で細菌などが増殖し、それに合わせて数多くの好中球が現れた場合に引き起こされる。また、胸膜が線維化を起こす危険性が高い。

 

・漿液性胸膜炎、線維素性胸膜炎
漿液性胸膜炎と線維素性胸膜炎の場合、炎症の度合いにより、漿膜性の炎症から線維素性の炎症へと進行することがある。そこからさらに、胸膜の線維化にまで進行する場合がある。

 

また、漿液性胸膜炎と線維素性胸膜炎は、どちらも非化膿性である。

 

・がん性胸膜炎
がんが転移することで引き起こされる胸膜炎として、がん性胸膜炎がある。

 

 

 胸膜悪性中皮腫
胸膜は、中皮によっておおわれている。この中皮で起こる腫瘍として、胸膜悪性中皮腫がある。発病することが比較的めずらしい腫瘍である。また、男性に起こることが多い。

 

胸膜悪性中皮腫に関係するものとして、アスベスト(石綿)の粉塵(ふんじん)の吸入があげられる。また、アスベストの吸入がなくなったとしても、そこから約20~40年経った後で、胸膜悪性中皮腫が引き起こされる場合がある。

 

胸膜悪性中皮腫の症状には、体重の減少、呼吸困難、乾いた咳(せき)、体全体のだるさなどがあげられる。また、胸膜悪性中皮腫が進行した場合、病変が肺を囲むように、広い範囲で拡大する。

 

 

気胸
胸膜腔の内部に空気が入り込み、それによって胸膜腔の陰圧がなくなることを気胸という。気胸によって起こる症状として、呼吸困難、胸痛があげられる。また、気胸には、外傷性気胸自然気胸医原性気胸が存在する。

 

 外傷性気胸
気胸のうち、外傷を負ったことで、胸膜腔に外部からの空気が入り込むことで起こるものを外傷性気胸という。

 

 自然気胸
気胸のうち、胸膜腔における気腫性病変などの肺の病変の破裂によって起こるものを自然気胸という。

 

 医原性気胸
気胸のうち、開胸手術などの手術や生検(疑いのある病変の一部を切り取り、腫瘍や病原体などを調べて病気の診断を行うこと)などの医療行為が原因となって発生するものを医原性気胸という。