免疫の仕組み、免疫に関わる細胞

免疫の仕組み
免疫とは、普通、体の中に入り込んだ異物を取り除き、病気を起こさないようにする作用のことを指す。

 

何らかの感染症を引き起こし、その感染症が治った場合。その感染症を引き起こした微生物と同じ微生物が体に侵入しても、感染症を起こさなくなる。この現象は、免疫の働きによって現れる。

 

 抗原
免疫から、自己でないもの(非自己)と判断される異物のことを抗原という。

 

 免疫応答
抗原が体の内部に入り込んだ場合、その抗原を識別できるリンパ球によって、その抗原が認識される。すると、その抗原を取り除くために免疫が作用する。このような反応を免疫応答という。

 

 免疫記憶
体内に侵入し、リンパ球に認識された抗原は、リンパ球に記憶される。同じ抗原が、また侵入した場合、その抗原に対する免疫応答は、初回よりも速く、さらに強く起こる。

 

その結果、初めてその抗原が体内に侵入したときに比べて、抗原を取り除く速さが上がる。このことを免疫記憶という。

 

免疫記憶によって、以前侵入した病原体と同じ病原体が侵入した場合、その病原体によって起こる疾患などを起こさずに済むようになる。

 

その一方で、2回目以降に侵入した病原体が、以前侵入した病原体の型などに違いがあるとき、たとえ同じ種類の病原体であっても免疫応答が成り立たない。

 

上記にあてはまるものとして、インフルエンザウイルスの予防接種などがあげられる。

 

 

免疫に関わる細胞
免疫に関わる細胞には、Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球(B細胞)、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、マクロファージ(大食細胞)など、さまざまな細胞が存在する。

 

 Tリンパ球(T細胞)
白血球に属する細胞の1つに、リンパ球がある。このリンパ球の基になる細胞をリンパ球前駆細胞という。骨髄では、このリンパ球前駆細胞が産生される。

 

産生されたリンパ球のうちのいくつかは、胸腺に移動する。胸腺に入ったリンパ球は、胸腺で特殊な分化を行う。こうして、胸腺で分化してできたリンパ球をTリンパ球(T細胞)という。

 

つくられたTリンパ球は、さまざまな組織や末梢血(末梢の血管に存在する血液)に広く分布するようになる。また、末梢血に存在するリンパ球のうち、約60~70%がTリンパ球によって占められている。

 

・Tリンパ球の作用
Tリンパ球が担当している主な作用として、がん細胞などのように傷害された細胞の除去、真菌などの病原体に対する防御などがあげられる。

 

・T細胞レセプタ(T細胞受容体)
Tリンパ球は、その表面にT細胞レセプタ(T細胞受容体)というものをもつ。これにより、そのTリンパ球自身が対応できる抗原に反応を起こし、さらに免疫応答を発揮させることができる。

 

・Tリンパ球の分類
Tリンパ球のなかには、ヘルパーT細胞キラーT細胞などの種類が存在する。それぞれ、異なる作用をもつ。さらに、T細胞レセプタ以外の特別な分子を、それぞれその表面にもつ。

 

 ・ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞がもつ作用として、別のTリンパ球が関わる免疫反応を促す、抗体をつくる作用をもつBリンパ球の抗体の生成の支援があげられる。ヘルパーT細胞の表面には、CD4という分子が存在する。

 

 ・キラーT細胞
キラーT細胞がもつ作用として、病原体によって傷害された細胞などの処理があげられる。キラーT細胞の表面には、CD8という分子が存在する。

 

 Bリンパ球(B細胞)
骨髄でつくられたリンパ球前駆細胞が、そのまま骨髄にとどまって分化して完成したリンパ球をBリンパ球(B細胞)という。末梢血に存在するリンパ球のうち、約10~20%がBリンパ球によって占められている。

 

・Bリンパ球がもつ受容体
Bリンパ球は、その表面に、ある決まった抗原とだけ結合できる受容体をもつ。

 

Bリンパ球がもつ受容体と特定の抗原とが結合した場合、そのBリンパ球が増殖を行う。さらにそのBリンパ球は、ヘルパーT細胞の作用を受け、形質細胞へと分化する。

 

形質細胞は、特定の抗原だけに対応できる作用をもつタンパク質である抗体(免疫グロブリン)の生成と分泌を行う。

 

・表面免疫グロブリン
Bリンパ球の表面にある受容体のことを、表面免疫グロブリンという。それぞれの表面免疫グロブリンの構造は、その表面免疫グロブリンをもつBリンパ球が分泌できる抗体の構造と同じになっている。

 

・Bリンパ球の分化、形質細胞
特定の抗原とBリンパ球がもつ受容体とが結合した場合、そのBリンパ球は、ヘルパーT細胞の働きにより、形質細胞に分化する。形質細胞は、抗原に対応できる抗体をつくる。また、形質細胞の表面には受容体がない

 

 NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
リンパ球のうち、Tリンパ球とBリンパ球のどちらにもあてはまらないリンパ球のグループとして、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)がある。

 

NK細胞は、病原体に感染した細胞やがん細胞などを、見つけ次第、無差別に破壊する作用をもつ。また、末梢血に存在するリンパ球のうち、約10~15%がNK細胞によって占められている。

 

 マクロファージ(大食細胞)
白血球の1種に、マクロファージ(大食細胞)が存在する。末梢血では、マクロファージではなく単球となって存在している。体に炎症が起こった場合、単球は組織に入り込んでマクロファージに変化する。

 

・食作用
炎症を起こした場合、その場所にマクロファージが向かう。

 

炎症を起こした場所に着いたマクロファージは、そこに存在する病原体や壊死した細胞などを取り込み、その中で処理する。マクロファージがもつこの作用を食作用という。

 

・抗原提示細胞
抗原を取り込んだマクロファージは、自身が取り込んで処理した抗原をTリンパ球に向けて提示する。このマクロファージのように、抗原を提示する作用をもつ細胞のことを、抗原提示細胞という。

 

抗原提示細胞として作用する細胞には、マクロファージの他にBリンパ球などがあげられる。

 

Tリンパ球がもつT細胞レセプタ(T細胞受容体)が認識できる抗原は、抗原提示細胞が提示したものだけである。抗原提示細胞に提示された抗原が、T細胞レセプタに認識されることで、Tリンパ球の免疫応答が作用する。

 

 樹状細胞
リンパ球が集まった組織をリンパ組織という。リンパ組織にあてはまるものとして、扁桃(へんとう)やリンパ節などがあげられる。

 

リンパ組織には、樹状細胞という細胞が存在する。樹状細胞には、マクロファージと同じく食作用と抗原を提示する作用がある

 

樹状細胞がもつ食作用は、マクロファージほど強力ではない。その一方で、樹状細胞がもつ、抗原を提示する作用はとても強力である。