アレルギーの分類(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ型アレルギー)

免疫の機構が働くのは、病原体に対してだけではない。外部から体内に入ったすべての物質に対して、免疫の機構が働く。

 

そのため、免疫反応が生体を守るのに役立つこともあれば、その反対に、免疫反応によって生体に害が及ぶこともある。免疫反応が生体にとって害になってしまう現象のことをアレルギーという。

 

アレルゲンとそれによる疾患

抗原のうち、アレルギーを起こすものをアレルゲンという。アレルゲンとなる物質には、牛乳や卵などの食材の他、花粉や真菌など、さまざまなものが存在する。

 

体の中にアレルゲンが侵入した場合、花粉症や蕁麻疹(じんましん)など、アレルゲンによる疾患が起こる。

 

クームズの分類

それぞれのアレルギーを分ける方法として、クームズの分類がある。クームズの分類では、そのアレルギーが起こるメカニズムごとに以下の4つの型に分けられる。

 

●Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー、アナフィラキシー型アレルギー)

  • 関係する因子 : 好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)、IgE抗体
  • 主な疾患 : アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、ペニシリンショック

 

●Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型アレルギー)

  • 関係する因子 : 抗体、補体
  • 主な疾患 : 重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、新生児溶血性疾患

 

●Ⅲ型アレルギー(免疫複合体型アレルギー)

  • 関係する因子 : 免疫複合体
  • 主な疾患 : 膠原病、急性糸球体腎炎

 

●Ⅳ型アレルギー(遅延型アレルギー)

  • 関係する因子 : Tリンパ球
  • 主な疾患 : ツベルクリン反応、接触性皮膚炎

 

さらに、Ⅱ型アレルギーのなかで、細胞を傷害するものでなく、細胞の機能を亢進させるものをⅤ型アレルギー(刺激型アレルギー)として分けることができる。

 

●Ⅴ型アレルギー(刺激型アレルギー)

  • 関係する因子 : 抗体
  • 主な疾患 : バセドウ病(グレーブス病)

 

Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー、アナフィラキシー型アレルギー)

Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー、アナフィラキシー型アレルギー)は、一度体内に侵入して感作された抗原が体内に侵入した場合に、すぐに働く免疫反応となっている。

 

Ⅰ型アレルギーに関係する抗体は、IgE抗体(免疫グロブリンE)である。

 

Ⅰ型アレルギーの発生メカニズム

Ⅰ型アレルギーの発生に深く関わる細胞として、以下の2つの細胞があげられる。

 

  • 好塩基球 : 血液内に存在する顆粒球系細胞の1種
  • マスト細胞(肥満細胞) : 組織に含まれている細胞

 

好塩基球とマスト細胞(肥満細胞)のそれぞれの細胞質には、顆粒(かりゅう)が数多く含まれている。顆粒の内部には、ヒスタミンなどの化学伝達物質が存在する。この化学伝達物質は、アレルギーを起こす原因になる。

 

好塩基球とマスト細胞のそれぞれの表面には、IgE受容体(IgEレセプタ)が存在する。

 

IgE受容体は、その名の通りIgE抗体と結合できる受容体である。IgE受容体を介して、好塩基球やマスト細胞がIgE抗体と結合する。

 

好塩基球やマスト細胞と結合したIgE抗体に、抗原が結合した場合、抗原と結合したIgE抗体をもつ好塩基球やマスト細胞の内部にある顆粒が、その細胞の外に出される。

 

顆粒の内部にはヒスタミンなどの化学伝達物質が存在する。この化学伝達物質によって炎症が発生する。つまり、Ⅰ型アレルギーを起こす人は、体内に侵入した抗原に対応するIgE抗体をもつ人に限られる。

 

アナフィラキシー

体全体にⅠ型アレルギーの反応が起こると、急に激しい循環不全や呼吸困難が現れ、ショックの状態を起こす場合がある。これをアナフィラキシーという。

 

ペニシリンショック

アナフィラキシーにあてはまるものとして、ペニシリンという抗生物質によって引き起こされるペニシリンショックがあげられる。

 

Ⅰ型アレルギーの予防法

Ⅰ型アレルギーの予防法として、自身にとってアレルゲンとなる抗原を知り、その抗原に触れないようにすることがあげられる。

 

アレルゲンとなる抗原を知る方法には、その抗原に対するIgE抗体をもっているかの調査や、その抗原を少しだけ体内に投与したときの体の反応の調査などがある。

 

Ⅰ型アレルギーの治療法

Ⅰ型アレルギーの治療法として、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、アドレナリン(エピネフリン)など薬剤の使用があげられる。

 

Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型アレルギー)

生体の組織や細胞に対する抗体が産生され、その組織や細胞に結合することで、その組織や細胞がNK細胞(ナチュラルキラー細胞)などによって傷害される場合がある。

 

上記のようなアレルギーをⅡ型アレルギー(細胞傷害型アレルギー)という。

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体型アレルギー)

抗原と抗体が結合したものを抗原抗体複合体という。抗原抗体複合体や、抗原抗体複合体に補体が結合したものを免疫複合体という。

 

免疫複合体が関係するアレルギーのことをⅢ型アレルギー(免疫複合体型アレルギー)という。免疫複合体が発生した場合、その免疫複合体が組織などに沈着を起こす。これにより、その組織が傷害される。

 

Ⅳ型アレルギー(遅延型アレルギー)

アレルゲンとなる抗原に触れた後、2日ほど経過してから起こるアレルギー反応のことをⅣ型アレルギー(遅延型アレルギー)という。

 

Ⅳ型アレルギーは、細胞性免疫反応にあてはまる。また、感作されたTリンパ球によって生じる。

 

Ⅳ型アレルギーにあてはまる主な疾患には、アレルゲンが皮膚に直接触れたことで起こる炎症である接触皮膚炎があげられる。

 

Ⅴ型アレルギー(刺激型アレルギー)

生体の組織や細胞に対応する抗体がつくられ、それが組織や細胞に結合することで、その組織や細胞の機能を亢進させるものを、Ⅱ型アレルギーから分けてⅤ型アレルギー(刺激型アレルギー)とする場合がある。

 

Ⅴ型アレルギーにあてはまる主な疾患として、バセドウ病(グレーブス病)がある。

 

バセドウ病の場合、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体に対する抗体が産生される。

 

その抗体が甲状腺刺激ホルモンの受容体に結合することで、甲状腺が刺激され続ける。その結果、甲状腺の機能が亢進される。