遺伝性疾患の種類・特徴

親から子へと遺伝子の異常が伝えられ、それが疾患を起こす原因となることがある。伝えられた遺伝子の異常によって引き起こされる疾患を、遺伝性疾患という。

 

遺伝性疾患のうちのほとんどは、生まれた段階では異常が確認されない。したがって、生まれたときに見た目の奇形が確認されることは少ない。

 

遺伝性疾患のなかには、小児期に症状を示すもの(血友病、フェニルケトン尿症など)や、成人に達してから症状を示すもの(ハンチントン病など)などがある。

 

 単一遺伝子の異常によって起こる疾患
遺伝性疾患にあてはまるものは、一般的には、遺伝子1つに異常が起こることで発生するとされる。

 

・常染色体優性遺伝病
常染色体のうちの、1対の相同である遺伝子のなかで、どちらか一方の遺伝子の異常だけが伝えられたことが原因で発病する疾患を、常染色体優性遺伝病という。

 

常染色体優性遺伝病にあてはまる疾患には、ハンチントン病、マルファン症候群、神経線維腫症(レックリングハウゼン病)、家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)、家族性高コレステロール血症、遺伝性球状赤血球症などがある。

 

 ・ハンチントン病
ハンチントン病は、精神障害、舞踏運動などの無意識に起こす運動、進行性の知能障害、性格の変化などの症状を示す。ハンチントン病のほとんどは、30~40代で発病する。

 

また、成人に達する前に発病する場合もある。その場合、パーキンソン病の症状が現れることがある。また、ハンチントン病の患者の子のうち、その半数に変異を生じた遺伝子が、親から伝えられることになってしまう。

 

・常染色体劣性遺伝病
遺伝子の異常が、相同である遺伝子のうちの両方の遺伝子に伝えられて発病する疾患を、常染色体劣性遺伝病という。

 

常染色体劣性遺伝病にあてはまる疾患には、フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、色素性乾皮症、メープルシロップ尿症、糖尿病、ウィルソン病、ガラクトース血症などがある。

 

 ・フェニルケトン尿症
フェニルケトン尿症は、アミノ酸の1種であるフェニルアラニンを、チロシンに変化させる酵素が失われることで発病する。アミノ酸代謝異常症の1種にあてはまる。

 

フェニルケトン尿症を放置し続けると、体内でフェニルアラニンが溜っていき、重い知能障害を起こす恐れがある。そのため、なるべく早く治療を行うのが望ましい。

 

フェニルケトン尿症を早期発見し、フェニルアラニンを少なくする食事療法を生後6ヶ月以内に行うことで、知能障害が発病を防げる。

 

・伴性遺伝病
性染色体(X遺伝子)に遺伝子の異常があり、その異常による疾患の発生が、性別に依存する形で決定されるものを伴性遺伝病という。

 

伴性遺伝病に含まれる疾患には、血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどがある。

 

伴性遺伝病は、一般的には劣性遺伝をあらわす。血友病を例にあげると、血友病の多くが男性だけに起こる。一方、女性は血友病の遺伝因子の保因者になることはあっても、血友病を引き起こすことはほとんどない。

 

 多因子性の遺伝によって起こる疾患
発病することが多い生活習慣病のなかには、遺伝子の異常のいくつかが同時に関わって起こる疾患が含まれているとされる。

 

上記の例にあてはまる疾患には、糖尿病、痛風、高血圧症などがある。こうした疾患が発病する場合、遺伝的要因に加えて、特定の外因(環境要因など)が関係している。