脳腫瘍の分類(原発性脳腫瘍・転移性脳腫瘍)

脳腫瘍
頭蓋の内部に生じる腫瘍のことを脳腫瘍という。

 

・脳腫瘍の症状
脳腫瘍の症状として、頭蓋内圧亢進症状(ものが二重に見える複視、嘔吐、頭痛、視力障害の4つ)があげられる。また、てんかん発作が現れることもある。

 

脳腫瘍では、腫瘍が生じた場所によって、感覚障害や失語症など、異なる症状が現れる。腫瘍を生じた場所が、視床下部や下垂体である場合には、内分泌症状が現れる場合がある。

 

 脳腫瘍の分類
脳腫瘍を大きく分けると、脳から発生した腫瘍である原発性脳腫瘍と、他の臓器の腫瘍が脳に転移したものである転移性脳腫瘍とに分類される。

 

・原発性脳腫瘍
脳から発生した腫瘍のことを、原発性脳腫瘍という。原発性脳腫瘍には、神経膠腫(グリオーマ)と神経膠腫ではない原発性脳腫瘍とがある。

 

 ○神経膠腫(グリオーマ)
神経外胚葉性腫瘍のうち、脳の実質から生じるものをまとめて神経膠腫(グリオーマ)と呼ぶ。神経膠腫に含まれるものには、星細胞腫、膠芽腫、上衣腫などが存在する。

 

 ・星細胞腫
星細胞腫の多くは、良性腫瘍となっている。星細胞腫では、腫瘍の発育はゆるやかである。

 

星細胞腫が起こりやすい場所は、小児と成人とで異なる。小児の場合は、脳幹小脳半球に生じやすい。成人の場合は、大脳白質の前頭葉に生じやすい。

 

 ・膠芽腫
膠芽腫は、神経膠腫(グリオーマ)のなかで、悪性度が1番高い脳腫瘍である。膠芽腫の進行は速い。また、成人の大脳の前頭葉に発生することが多い。

 

 ・上衣腫
上衣腫は、良性腫瘍の場合もあれば、悪性腫瘍の場合もある。上衣腫が起こりやすい場所として、小児の第4脳室があげられる。

 

 ・乏突起膠腫
乏突起膠腫は、良性腫瘍の場合もあれば、悪性腫瘍の場合もある。乏突起膠腫では、腫瘍の発育がゆるやかである。乏突起膠腫が起こることが多い場所として、成人の大脳半球があげられる。

 

 ・髄芽腫
髄芽腫は、悪性の脳腫瘍である。髄芽腫の多くは、小児の小脳虫部に生じる。

 

 

 ○神経膠腫ではない原発性の脳腫瘍

 

 ・髄膜腫
髄膜腫は、良性腫瘍の場合もあれば、悪性腫瘍の場合もある。髄膜腫では、腫瘍の発育がゆるやかである。また、髄膜主の発育が進むたびに、その周りに位置する脳の実質が圧排されていく。

 

 ・神経鞘腫(シュワン鞘腫、シュワノーマ)
末梢神経の神経線維のうち、有髄神経の軸索は髄鞘によって包まれている。この髄鞘を構成するものとして、神経鞘細胞(シュワン細胞)がある。

 

神経鞘細胞(シュワン細胞)から生じる良性腫瘍のことを神経鞘腫(シュワン鞘腫、シュワノーマ)という。神経鞘腫は、成人の女性に発病することが多い。

 

神経鞘腫が生じることが多い場所として、第8脳神経(聴神経)があげられる。第8脳神経(聴神経)での神経鞘腫の場合、顔面神経の麻痺や難聴などの症状が引き起こされる。

 

 ・下垂体腺腫
下垂体腺腫は、良性腫瘍である。成人が発病する場合が多い。下垂体腺腫が生じる場所は、下垂体前葉に存在する内分泌腺組織である。

 

下垂体腺腫のうち、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)をつくる腫瘍の場合、クッシング病が引き起こされる。成長ホルモンをつくる腫瘍の場合には、高血糖、高血圧、巨人症などが引き起こされる。

 

 

 転移性脳腫瘍
他の臓器から脳に転移した腫瘍を、転移性脳腫瘍という。転移性脳腫瘍には、髄膜にて髄膜がん腫症を引き起こすものと、結節を脳の実質の中につくるものとが存在する。

 

がんのうち、肺がんや乳がんは、それぞれ脳に転移することが多いがんである。これら以外にも、腎臓がんや消化管のがんなども脳に転移することがある。