消化器系の概要、口腔がん、舌がん、食道の疾患

口腔と食道における炎症は、非特異性のものである場合が多い。また、口腔と食道で起こるがんは、扁平上皮がんであることが多い。これは、口腔と食道が、それぞれ扁平上皮によっておおわれているためである。

 

消化器系の概要

 

 消化器系
口腔線、消化管、膵臓(すいぞう)、肝臓、胆管、胆嚢をまとめて消化器系という。消化器系は、食べたり飲んだりしたものの消化、吸収、代謝、排泄を担当している。

 

 消化管
口腔から肛門までの管状を示す器官のことを消化管という。消化管の全体の長さは、約9mとなっている。

 

・消化管壁
粘膜筋層外膜の3層か、粘膜・筋層・漿膜の3層によって、消化管壁は構成されている。

 

消化管壁の粘膜のうち、円柱上皮でおおわれているものとして、胃から直腸までの粘膜があげられる。また、扁平上皮でおおわれている消化管壁の粘膜として、口腔から食道までの粘膜と、肛門の内側の面の粘膜があげられる。

 

 食道
気管の後ろ側をほぼまっすぐ下に通るように、食道が存在する。食道は咽頭から続いており、第10胸椎~第11胸椎までの位置で横隔膜を通過する。そして、横隔膜を通過してからへとつながっている。

 

食道の長さは、成人の場合で約24~25cmとなっている。また、食道の位置によって、頸部食道胸部食道腹部食道の3つに区分される。

 

・生理的狭窄
食道には、狭窄している部分(狭くなっている部分)が3ヶ所ある。それは、食道の入口の部分、気管が分岐する部分、食道と胃との境い目(噴門)の部分である。食道における3ヶ所の狭窄している部分のことを生理的狭窄という。

 

口腔がん、舌がん

 

 口腔がんと舌がんの症状
口腔がんと舌がんでは、口腔や舌にある皮下組織や上皮などに硬くなった場所がつくられる硬結が、初発症状となっている場合が多い傾向にある。

 

 口腔がんと舌がんの原因
口腔がんと舌がんをまねく原因とされているものには、飲酒、喫煙があげられる。

 

 白板症(ロイコプラキー)
口腔がんや舌がんに、病変の見た目が似ることがあるものとして、扁平上皮が増殖を起こして硬くなり、白い色を示す白板症(ロイコプラキー)があげられる。

 

口腔がんや舌がんであるか、もしくは白板症であるかを見分ける方法として、生検(病変の一部を切り取って、腫瘍や病原体などを調べて病気を診断する方法)がある。

 

 口腔がんと舌がんの組織型
口腔がんと舌がんの場合、その腫瘍の組織型が扁平上皮がんとなっている。また、ケラチンという物質が腫瘍細胞で増加する現象である角化が確認される場合が多い。

 

 口腔がんと舌がんの治療
口腔がんと舌がんの治療法として、外科的な治療法である根治術の他、放射線治療があげられる。

 

しかしながら、口腔がんや舌がんの原発巣の治療が済んだ後で、遠い部位にがんが転移したり、再発を起こしたりすることが多い。

 

 

食道の疾患
食道の疾患として、食道炎食道がん食道静脈瘤があげられる。

 

 食道炎

 

・食道炎の型
食道炎の型には、色調変化型びらん潰瘍型隆起肥厚型の3つがあげられる。

 

・逆流性食道炎
胃に含まれているもの(内容物)や胃液が食道へと流れ込むことで起こる食道炎として、逆流性食道炎がある。逆流性食道炎の場合、その病変は食道の下の方の部分で確認される。

 

逆流性食道炎の主な原因とされるものには、下部の食道括約部の機能が不完全になることがあげられる。また、逆流性食道炎を起こしやすいのは、強皮症の患者や食道裂孔ヘルニアの患者である。

 

逆流性食道炎を起こすと、ほとんどの場合、のどの違和感、胸焼けといった症状が現れる。

 

 

 食道がん
食道がんの場合、その多くが扁平上皮がんとなっている。また、食道がんの発生が多い場所としては、食道の中央部から下部の間があげられる。

 

食道がんが起こった場合、そのがんによって食道が狭窄を起こすことがある。それにより、嚥下障害が引き起こされる。また、食道がんのほとんどは、進行するがんとなっている。このことから、食道がんの予後は良くない。

 

・食道がんの原因
食道がんの原因とされているものには、熱いものを食べる習慣、暴飲暴食の習慣、度数が強いアルコールを摂取する習慣があげられる。

 

・食道がんの進行
食道には、漿膜が存在しない。そのため、食道がんが食道の筋層を通過すると、血管や気道などの器官が集まっている縦隔の内部へと、すぐに腫瘍が広がってしまう。

 

食道がんが進行する場合、腫瘍が食道の内腔の周りを囲むような形に広がることがある。また、食道の内腔の方へと腫瘍が進むこともある。

 

・食道がんの治療
食道がんの治療法としては、放射線治療、手術療法があげられる。

 

 

 食道静脈瘤

 

・食道静脈瘤が発生するメカニズム
食道と胃との境い目には噴門がある。噴門には、食道の静脈と胃の静脈との間を結ぶ吻合枝(ふんごうし)が存在する。

 

門脈から肝臓を介して肝静脈を通る血流が、特定の異常や疾患(肝硬変症など)などによって妨害されることがある。この場合、門脈の圧が亢進し、血液の流れを吻合枝を介して保とうとする側副循環が起こる。

 

側副循環が起こることで、食道の静脈に大量の血液が流れ込むことになる。すると、食道の静脈が伸び広げられ、静脈瘤が発生することになる。

 

静脈瘤は破れることが多い。静脈瘤が破れた場合、その場所で大量の出血が起こってしまう。その結果、死亡してしまうこともある。

 

・食道静脈瘤の治療
食道静脈瘤の治療法として、以下のものがあげられる。

 

 ・静脈瘤への硬化剤の使用

 

 ・手術療法
  胃上部切除術、食道離断術などがある。

 

 ・食道静脈瘤結紮法(しょくどうじょうみゃくりゅうけっさつほう)
  静脈を縛ることで静脈の血流を止めて静脈瘤を壊死させ、さらに脱落を起こさせる方法。

 

食道静脈瘤結紮法は、静脈瘤の破裂の予防法となる。さらに、静脈瘤からの出血を止めるのにも有効である。