細胞の損傷とその原因、細胞の適応現象 − 健康と医療の情報局

 

細胞の損傷とその原因、細胞の適応現象

 

特定の内因や外因によって、細胞が損傷を負うことがある。それにより、細胞の機能や形態に変化が起こる。細胞の損傷がわずかで、外部から与えられる刺激が弱いときには、肥大や萎縮などの適応現象が発生する。

 

細胞の損傷がひどく、その細胞を元通りに治せない場合、その細胞は死ぬ。

 

上記の反対に、細胞が損傷を受けたとしても、その細胞を元通りに治せる場合、その細胞自身に起こるすべての変化のことを変性という。変性を起こした細胞の場合、さまざまな物質がその細胞に沈着をおこす。

 

細胞の死と変性については、「壊死、アポトーシス、変性」のページで解説している。

 

細胞の損傷とその原因
細胞が損傷を負う原因となるものには、さまざまなものが存在する。そのうち、主なものを以下に示す。

 

 ・病原体の感染

 

 ・遺伝的な異常

 

 ・栄養障害

 

 ・酸素の欠乏

 

 ・老化

 

 ・免疫系での異常

 

 ・特定の化学物質や薬剤によって起こる中毒

 

 ・電気や熱などの刺激

 

 酸素の欠乏によって起こる細胞の損傷
細胞の損傷の原因となるもののうち、酸素の欠乏はとくに多いものとされる。

 

酸素が欠乏した場合、まず最初に、呼吸を担当する細胞内小器官にあるミトコンドリアが障害される。細胞内での呼吸が障害を受けた場合、エネルギー供給が止まる

 

細胞膜には、細胞内に存在するナトリウムを細胞外へ送り、細胞外のカリウムを細胞内に送るナトリウムポンプがある。エネルギーの供給が止まると、ナトリウムポンプの作用が行われなくなってしまう

 

上記により、細胞内ではカリウムが足りなくなり、ナトリウムが過剰に存在する状態になる。この状態になると、細胞が腫脹を起こし、代謝系にさまざまな障害が起こる。

 

 

細胞の適応現象
体を構成しているそれぞれの細胞は、外部からの刺激をつねに受け続けている。

 

細胞に与えられる外部の刺激が慢性的なものである場合、細胞は慢性的な刺激に対して、特定の範囲のなかで適応することができる。細胞の適応にあてはまる現象には、萎縮肥大過形成化生といったものが存在する。

 

その一方で、細胞が適応できる範囲を超えた刺激が、細胞に与えられた場合、その刺激を受けた細胞は変性を起こすか死滅してしまう。

 

 萎縮
一度、成熟した臓器や組織の容積が、後天的に少なくなることを萎縮という。萎縮が起こるのは、細胞の数が減る場合と細胞の容積が減る場合のどちらかが発生するか、両方が発生したときである。

 

萎縮は原因によって分けることができ、栄養障害による萎縮、加齢による萎縮、圧迫萎縮、神経性萎縮、無為萎縮などがある。

 

・栄養障害による萎縮の例
腎動脈の動脈硬化による狭窄が起こると腎臓が萎縮を起こす。これは、栄養障害による萎縮にあてはまる。

 

動脈硬化などの狭窄が起こると、血液の流れが少なくなる。それによって、組織や細胞がその形態を保つために必要な酸素や栄養が十分に供給されなくなる。その結果、その細胞や組織が萎縮を起こしてしまう。

 

・圧迫萎縮の例
体の局部にある細胞や組織が圧迫を長く受け続けることで、その部分で循環障害が起こ。それにより、萎縮が引き起こされる。この場合は、圧迫萎縮にあてはまる。

 

・無為萎縮の例
長期間寝たきりの状態になると骨格筋が萎縮を起こす。この場合は、無為萎縮にあてはまる。

 

 肥大
細胞の容積そのものが増えることで、臓器や組織の容積が増すものを肥大という。

 

・作業性肥大
体の組織のうち、骨格筋や伸筋などの筋組織は、分裂や増殖の能力をもっていない。

 

上記の筋組織に運動負荷などが与えられた場合、この組織に含まれるそれぞれの細胞が肥大を起こし、その負荷に適応を示す。その結果、その組織の機能が向上する。

 

上記のように、運動負荷を与えられたことで組織が肥大を起こすことを作業性肥大という。

 

・ホルモン性肥大
末端肥大症(先端巨大症)などのホルモンの過剰症により、特定の組織などに肥大が生じる場合がある。これをホルモン性肥大という。

 

・代償性肥大
臓器のうち、対になっているもの(腎臓など)のうちの片方を手術で摘出した場合、残ったもう片方の臓器が肥大を起こすことがある。この肥大を代償性肥大という。

 

 過形成
細胞が過剰な分裂や増殖によって増えることで、臓器や組織の容積が増えるものを過形成という。

 

過形成は、外部から刺激を受けなくなることで、増殖が止まり、もとの状態に戻ることがある。その一方で、腫瘍も細胞の増殖であるが、腫瘍は外部からの刺激に関わらず、自律的に増殖を行っている。

 

・胼胝(べんち)
ある程度の長い時間、持続的に皮膚が摩擦(まさつ)や圧迫などの刺激を受け続けた場合、刺激を受け続けた場所の角質が厚くなることがある。これを胼胝(べんち)という。

 

胼胝には、足にできる靴ずれだこや、手の指にできるペンだこなどがあてはまる。

 

 化生
長い期間、特定の刺激を受け続けることで、本来の組織とは違う組織に変わる場合がある。これを化生という。

 

・腸上皮化生
年齢を重ねていくと、胃が本来もつ粘膜上皮が萎縮を起こす。さらに、胃の粘膜上皮は、小腸の粘膜に似た上皮へと換えられる。このように胃粘膜上皮が置き換えられることを、胃粘膜上皮の腸上皮化生という。

 

・扁平上皮化生
長期間の喫煙などの慢性的な刺激により、気管支の表面の上皮である線毛円柱上皮が、丈夫な重層扁平上皮に変わることがある。このように上皮が置き換わることを、扁平上皮化生という。

 

扁平上皮化生は、気管支だけでなく、他の組織や臓器にも起こりうるものである。

 

・骨化生
線維性の結合組織に対して、機械的な刺激が慢性的に与えられ続けられた場合、刺激を受け続けた結合組織に骨が形成される場合がある。これを骨化生という。