物質沈着 − 健康と医療の情報局

 

物質沈着

 

生体内では、古くなった物質が壊され、そして、新しくつくられた物質に換えられている。この流れのことを代謝という。

 

細胞が傷を負うと、細胞内で行われる代謝に異常が起こる場合がある。すると、細胞内にタンパク質や脂質などの物質が溜め込まれる(物質沈着)。

 

 脂肪沈着(脂肪変性)
細胞が傷つくことで起こる物質沈着には、脂肪の沈着が確認されることがある。脂肪の沈着のことは、脂肪変性ともいう。

 

脂質の代謝が行われる主な臓器として、肝臓がある。肝臓は、脂肪の沈着を起こすことが多い。肝臓が高度の脂肪沈着を起こした場合、その状態の肝臓のことを脂肪肝という。

 

 

 間質でのタンパク質沈着
組織成分のうち、細胞以外のもののことを間質という。

 

間質を構成する主な成分は、線維状のタンパク質のコラーゲンで構成される膠原線維などである。膠原線維などの成分は変性を起こすことがあり、それによってタンパク質が沈着する場合がある。

 

間質でのタンパク質沈着は、そのタンパク質の沈着の仕方や種類などによってさまざまな種類に分けられる。この種類にあてはまるものには、硝子変性(硝子化)、アミロイド変性フィブリノイド変性ムコイド変性などがある。

 

・硝子変性(硝子化)
無構造のタンパク質である硝子質(ヒアリン)が沈着した場合、これを硝子変性(硝子化)という。硝子変性は、慢性の糸球体腎炎の場合の糸球体の間質などで確認される。

 

・アミロイド変性
独特な細線維構造をもつタンパク質であるアミロイド(類デンプン質)が組織に沈着した場合、これをアミロイド変性という。

 

・フィブリノイド変性
フィブリン(線維素)のうちのフィブリノイド(類線維素)という物質に似た物質が組織に沈着した場合、これをフィブリノイド変性という。

 

フィブリノイド変性の場合、その発生に合わせて小さな壊死が起こることが多い。このことから、フィブリノイド変性のことを、フィブリノイド壊死とよぶこともある。

 

・ムコイド変性
ムコ多糖類などの粘液のような物質が間質に沈着し、浮腫が現れたような状態を示すものをムコイド変性という。

 

 

 細胞質内でのタンパク質沈着
タンパク質は、細胞内でも沈着することがある。さまざまな種類のタンパク質が、細胞内にて沈着を起こす。

 

細胞質内でのタンパク質沈着は、沈着する物質の種類や、沈着の起こし方の違いによって、粘液変性硝子滴変性などに分けられる。

 

・粘液変性
細胞内に、糖タンパク質である粘液が沈着した場合、これを粘液変性という。粘液変性は、胃腸に発生する腺がん細胞が独特な形態を示す印環細胞がんで確認される。

 

・硝子滴変性
タンパク質の小顆粒が、細胞内で沈着した場合、これを硝子滴変性という。硝子滴変性は、ネフローゼ症候群の場合に尿細管上皮で確認されることが多い。

 

 

 糖原沈着(糖原変性)
細胞内にて、グリコーゲン(糖原)が異常に多く沈着した場合、これを糖原沈着(糖原変性)という。糖尿病の場合、グリコーゲンの沈着が、尿細管上皮や肝細胞核にて引き起こされる場合がある。

 

 色素沈着
生体の中でつくられるメラニンリポフスチンへモジデリンなどのさまざまな色素や、外部から体内に侵入した炭粉などの異物が、細胞内に沈着することがある。

 

・メラニン沈着
眼や皮膚などには、黒色をした色素のメラニンがある。腫瘍の1種である悪性黒色腫や、ほくろ(黒子、母斑)の場合、腫瘍細胞によってメラニンがつくられる。

 

・リポフスチン沈着
神経細胞や心筋細胞などの細胞質には、リポフスチンという色素が沈着することがある。リポフスチンの沈着は、加齢といった変化などに合わせて発生する。

 

・ヘモジデリン沈着
生体内における鉄代謝物の1種に、ヘモジデリンという物質がある。赤血球のヘモグロビンは、鉄を重要な構成成分としている。赤血球が寿命を迎えて壊れる場合、へモジデリンが発生する。

 

 ・ヘモジデローシス(へモジデリン沈着症)
広い範囲でヘモジデリンの沈着が確認される場合、これをヘモジデローシス(へモジデリン沈着症)という。

 

・炭粉沈着
自動車などの排気ガスやタバコの煙などには、炭粉という物質が含まれている。

 

体内に侵入した炭粉は、マクロファージなどの細胞に貪食される。マクロファージなどの中にあるリソソーム酵素は、細胞内に取り込まれた炭粉を消化できない。そのため、炭粉はマクロファージの中に溜め込まれる。

 

炭粉を溜め込んだマクロファージが死亡するなどにより、そのマクロファージの中に含まれていた炭粉は間質へと沈着する。

 

喫煙者の肺組織が黒っぽくなるのは、数多くの炭粉が肺組織に沈着したためである。