タンパク質代謝障害・疾患
タンパク質の代謝異常が現れる疾患には、ネフローゼ症候群、尿毒症、痛風、高アンモニア血症、アミロイドーシス(アミロイド症)がある。
腎不全、尿毒症
腎不全
1日あたりに排出される尿の量が、400ミリリットル未満である場合を乏尿という。一方、1日あたりに排出される尿の量が、50ミリリットル未満である場合を無尿という。
腎機能が高度の障害を負い、乏尿や無尿を起こした場合、その状態を腎不全という。
尿毒症
本来、尿へと排出される老廃物は、尿の排泄が起こらなくなることで血液内に溜め込まれる。それにより、体のさまざまな臓器が障害を受ける。このような状態を尿毒症という。
腎不全の原因
腎不全の原因となるものには、腎臓の疾患、尿の流れの閉塞、腎血流の低下などがあげられる。
腎不全の分類
腎不全を大きく分ける場合、急性腎不全と慢性腎不全とに分類できる。
・急性腎不全
腎不全のうち、その腎不全の原因となるものを取り除くことで回復するものを急性腎不全という。
・慢性腎不全
腎不全のうち、腎機能が廃れて止まることで発病し、回復ができないものを慢性腎不全という。慢性腎不全の進行は、比較的ゆっくりである。
腎不全の症状
腎不全の場合には、体全体の浮腫、高リン血症、高カリウム血症などの症状が現れる。
尿毒症の症状
尿毒症の場合には、肺水腫や脳水腫などが起こる。肺水腫を生じた場合、呼吸障害などが引き起こされる。脳水腫を生じた場合、中枢神経障害などが引き起こされる。
ネフローゼ症候群
腎臓の糸球体の濾過(ろか)機能の異常によって、高度のタンパク尿や低タンパク血症などが現れる疾患のことをネフローゼ症候群という。
ネフローゼ症候群を引き起こした場合、低タンパク血症に合わせて高脂血症と浮腫が現れることが多い。
血液に含まれるタンパク質の濃度が低下し、低タンパク血症を起こした場合、肝臓で行われるタンパク質の合成と脂質の合成が、それぞれ活発になる。それにより、高脂血症が引き起こされる。
一方、低タンパク血症を起こしたことで、血管からその外側へと水分が漏れる。これにより、浮腫が引き起こされる。
高アンモニア血症
消化管においてタンパク質が、複雑な構造の物質を簡単な構造の物質に分解する異化を受けることで、アンモニアが生じる。アンモニアは強い毒性をもつ。
つくられたアンモニアは、肝臓に送られて尿素に変えられる。その尿素は、腎臓から尿へと排出される。
消化管から肝臓に送られるはずの血液が、肝臓を通らずにそのまま大循環へと送られた場合や、肝臓を構成する肝細胞が障害を受けた場合には、血液に含まれるアンモニアを肝臓で尿素に変えられなくなる。
それにより、血液に存在するアンモニアの尿が増え、高アンモニア血症の状態になる。
高アンモニア血症になり、アンモニアによって脳が障害されると、意識障害である肝性昏睡が起こる。重度の肝不全の場合、この肝性昏睡が現れる。
アミロイドーシス(アミロイド症)
タンパク質の1種として、アミロイド(糖タンパク質)が存在する。体全体のあらゆる場所で、異常にアミロイドが沈着した場合、これをアミロイドーシス(アミロイド症)という。
アミロイドーシスが示す症状は、アミロイドが沈着した場所によってさまざまである。
心臓にアミロイドが沈着した場合、不整脈や心筋症を生じる。そして最悪の場合、突然死が起こる。腎臓にアミロイドが沈着した場合、それが腎不全を起こす原因になる。
アミロイドーシスの病型の種類
アミロイドーシス(アミロイド症)は、アミロイドを形成しているタンパク質の種類などによって、いくつかの病型に分類される。アミロイドーシスには、全身性アミロイドーシスや、アミロイドが局所的に沈着を起こす病態がある。
・全身性のアミロイドーシスの病型
アミロイドーシスのうち、体全体に影響する全身性のアミロイドーシスについて以下に示す。
・原発性アミロイドーシス
アミロイドを形成しているタンパク質 : 免疫グロブリンのL鎖
・多発性骨髄腫に合わせて起こるアミロイドーシス
アミロイドを形成しているタンパク質 : 免疫グロブリンのL鎖
・続発性アミロイドーシス
アミロイドを形成しているタンパク質 : アミロイドに関係するタンパク質
特徴 : 慢性消耗性疾患に続発する
・透析アミロイドーシス
アミロイドを形成しているタンパク質 : β₂-ミクログロブリン
・家族性アミロイドーシス(遺伝性アミロイドーシス)
アミロイドを形成しているタンパク質 : トランスサイレチン変異タンパク質
・アミロイドが体の局所に沈着する病態
アミロイドが体の局所に沈着する病態の1つとして、老人斑がある。老人斑は、脳の組織の局所にアミロイドが沈着を起こしたものである。また、アルツハイマー症などの場合に老人斑が現れる。
痛風
血液に含まれる尿酸の量が多い場合、その状態のことを高尿酸血症という。
高尿酸血症の状態が続いた場合、尿酸塩という物質が体の関節などの組織に沈着する。すると、関節炎が急激に現れ、それによって痛風という疾患を発病する。
足の母指関節は、痛風によって障害されることが多い。また、尿酸塩が沈着すると、それによって体の局部に、炎症巣である痛風結節が生じる場合がある。
痛風の場合、突然の激痛などの症状を示して発病するのが一般的である。
・痛風の原因
核酸が分解されることでつくられるプリン体の代謝産物に、尿酸がある。尿酸は、最後に尿酸塩となり、腎臓から排出される。
痛風の原因となるのは、尿中に排出される尿酸塩の量が減ったり、尿酸が過剰につくられたりすることである。