口・舌・食道・胃がもつ役割

口・舌がもつ役割
口の中に入れた食べ物は、口の中に一旦とどまる。このように、一旦、入った食べ物をとどめておく場所になるのが口である。一方、舌は、食べ物の甘さなどの味を感じとる役割をもっている。

 

口と舌は、食べている物の形や大きさなどを感じとる。そして、それを食道へと移動させていく。

 

腐っていた食べ物を間違って口に入れた場合、それを口の粘膜と舌によって感知し、その食べ物の情報が脳に伝えられる。その結果として、その食べ物の吐き出しが起こる。

 

口に入ったもののうち、間違って入った髪の毛などの異物や魚の骨などは、以前、それらが口に入ったときの記憶からそれを判別し、それらの飲み込みが止められる。

 

口の中では、唾液(だえき)が分泌される。唾液は、口と舌での上記のような作用のために、必要不可欠なものとなっている。さらに、唾液があることで、粉状のものなどが口の外に出るのを防ぐことができる。

 

唾液によって、味物質が食べ物から取り出される。また、食べ物が食道を通過する際、唾液があることで、その移動がよりスムーズになる。

 

 

食道がもつ役割
咽頭からその胃の間をつなぐものとして、食道がある。食道は、全長25cmほどの管となっている。

 

食道の上部の端では、咽頭につながっている。咽頭から続く食道は、気管の後ろ側を下に向かって通行している。そして、途中で横隔膜を通り抜けてから、食道が胃につながる。

 

食道が始まる場所(起始部)、気管が分岐する位置、食道が横隔膜を通り抜ける部分では、それぞれ食道の幅が狭い状態になっている。これらの、食道が狭くなっている部分を、生理的狭窄部という。

 

生理的狭窄部のうち、食道が始まる部分にあるものは、異物が食道内に入り込むのを防止している。

 

食道が横隔膜を通り抜ける部分の生理的狭窄部は、胃の中に入った食べ物などが、食道側に逆流しないようにする役目をもっている。

 

食塊と食道とが接触するのは、食道がもつ粘膜の層となっている重層扁平上皮細胞である。重層扁平上皮細胞により、粘膜そのものが、熱い飲食物や硬い食べ物が与える刺激から保護される。

 

粘膜の下側には、筋で構成される層がある。食道の筋層のうち、咽頭側のものは、横紋筋で構成されている。そこから胃の方に進むごとに、筋層に平滑筋が含まれるようになる。そして、胃の近くの部分の食道の筋層は、平滑筋だけで構成されている。

 

食道に入り込んだ食塊は、食道壁が収縮することによって行われる食道の蠕動(ぜんどう)運動により、食道の中から胃の中へと運ばれる。

 

食道が終わる部分で、なおかつ食道から胃につながる部分を噴門という。噴門を通り抜けた食塊は、胃の中に入る。

 

 

胃がもつ役割
胃は、袋のようにふくらんでいる器官である。食道から胃へと続く部分を噴門という。胃から十二指腸へと続く部分を幽門という。

 

胃そのもののことを、胃体という。胃体のうち、左側の上部に向かってふくらんだ場所のことを胃底という。

 

胃の右側の短く彎曲(わんきょく)した部分を小彎(しょうわん)という。また、胃の左側の長く彎曲した部分を大彎(だいわん)という。

 

 胃腺で分泌されるペプシン
胃には、胃腺というものがある。胃腺からは、タンパク質消化酵素であるペプシンが分泌される。ペプシンは、ペプシノーゲンというものが活性化されることでできる消化酵素である。

 

胃には、食べたものを一時的に蓄える作用がある。胃に蓄えられた食塊は、ペプシンによる消化を受ける。その間に、十二指腸へと、少しずつ食塊が運ばれていく。

 

 胃腺で分泌される塩酸
胃の胃腺では、塩酸の分泌も行われる。塩酸は、強酸の物質である。

 

胃が塩酸を分泌することで、食べ物と一緒に胃の中に入った細菌などが、塩酸によって死滅する。しかし、すべての菌が塩酸で死滅するわけではない。酸性に耐えられる菌の場合、塩酸でも死滅せずに、生き残る場合がある。

 

 食べ物が胃から十二指腸に運ばれる時間と量
食塊の内容によって、胃から十二指腸へと運ばれる時間が異なる。これにより、すべての食塊が、同じ時間をかけて十二指腸の中に入ることは、起こりえない。

 

一般的には、人が食事を行う場合には、複数の食材を食べることが多い。そして、純粋に糖質だけの食事や、純粋に脂質だけの食事などを摂ることは、基本的にはほぼありえない。

 

胃は、それぞれの栄養素ごとに、はっきりと送り出す時間を区切って十二指腸に運ぶわけではない。食べ物が胃から十二指腸に運ばれる時間と量を、それぞれ以下に示す。

 

 ・糖質  1時間30分:全体の約60% 3時間:全体の約95%

 

 ・脂肪(オリーブオイル)  1時間30分:全体の約25% 3時間:全体の約50% 4時間30分:全体の約60%

 

 ・タンパク質(魚肉)  1時間30分:全体の約30% 3時間:全体の約85% 4時間30分:全体の約95%

 

 ・タンパク質(獣肉)  1時間30分:全体の約40% 3時間:全体の約80% 4時間30分:全体の約90%

 

 ・タンパク質(卵白)  1時間30分:全体の約75% 3時間:全体の約85% 4時間30分:全体の約90%

 

 胃で分泌される内因子
胃で分泌されるもののうち、ペプシンや塩酸以外のものの1つに内因子(キャッスル因子)がある。内因子は、ムコタンパク質にあてはまる。

 

胃の噴門部や胃底部にある壁細胞では、内因子の分泌が行われる。ビタミンB12を吸収するには、内因子が必要である。内因子があることによって、ビタミンB12を、小腸のうちの回腸から吸収することができる。

 

 ガストリン、胃壁の神経
胃では、ガストリンというホルモンが分泌される。ガストリン、さらに胃壁に存在する神経は、それぞれ胃の中に入った食べ物の情報を感じ取る。そしてその情報を、脳やその他の器官や臓器のうちのいくつかに伝達する。

 

 上記以外の胃の働き
上記以外の胃の働きとして、粘液の分泌、食べ物に存在する鉄やカルシウムなどを溶かすといった働きがある。