沈降反応、中和反応、細胞溶解反応、補体結合反応
沈降反応
水溶性であり、肉眼で確認できない抗原と、それに対応する抗体とを反応させたとする。このとき、その抗原と抗体とが、ある特定の比率ですべて結合し、不溶性の抗原抗体複合体を形成する。
上記の場合、白っぽい沈降物の状態を示す抗原抗体複合体を、肉眼で確認できる。この反応のことを沈降反応という。そして、沈降反応を起こす抗原と抗体との比率のことを最適比という。
ゲル内沈降反応
抗原と抗体との反応を、アガロースや寒天のようなゲルの中で起こすことをゲル内沈降反応という。ゲル内沈降反応を起こす方法には、オクタロニー法などがある。
・オクタロニー法
寒天でつくった平板に、決まった間隔で円のくぼみを掘り、抗原と抗体とをそれぞれのくぼみに入れておく。
すると、寒天の中で、抗原と抗体がそれぞれ散らばっていく。そして、抗原と抗体との比が最適比になる場所で沈降反応が起こる。沈降反応が起こった場所には、沈降線という白い線がみられる。
この沈降線を確認する方法のことを、オクタロニー法という。オクタロニー法では、抗原を識別でき、それぞれの抗原の識別などができる。
・一元放射免疫拡散法(SRID、マンチニ法)
抗体を均一になるように埋め込んだ寒天の板を用意し、その板にくぼみをつくる。そのくぼみに抗原を入れて、周りに散らばらせる。すると、抗原と抗体との最適比になった場所に、沈降線が輪を描くように発生する。
沈降線の円の直径を計測することで、抗原の定量が可能である。この方法を、一元放射免疫拡散法(SRID、マンチニ法)という。また、血清に含まれる免疫グロブリンなどの場合、一元放射免疫拡散法によって定量できる。
・免疫電気泳動法
複数の抗原が混ざった液体で、沈降反応を起こして抗原を識別する方法として、免疫電気泳動法がある。
最初に、寒天に抗原を含ませ、その寒天に対してゲル内電気泳動を行う。これにより、寒天の中の抗原を散らばった状態にする。
上記の状態で、ゲル内沈降反応をする方法が免疫電気泳動法である。血清に含まれるタンパク質は、この免疫電気泳動法によって調べることができる。
中和反応
抗原には、ウイルスや毒素などのように、独自の生物活性をもつものが存在する。
独自の生物活性をもつ抗原に対して、その抗原に適する抗体が結合した場合、その抗原の生物活性が失われる。この反応のことを中和反応という。そして、中和反応を起こす抗体のことを中和抗体という。
また、ウイルスに対して中和反応が起こることで、そのウイルスの感染力が失われる。
・毒素抗毒素反応、抗毒素
中和反応のうち、毒素を中和してその活性を消失させる(中和する)反応を毒素抗毒素反応という。そして、毒素抗毒素反応を起こす抗体のことを抗毒素という。
毒素は、毒作用と抗原性の2つをもつ物質である。毒素にあてはまるものには、生物がつくる毒素の他、特定の化学物質があげられる。
細胞溶解反応(細胞障害反応)
血球や細菌などの細胞が抗原となっており、その抗原に対応する抗体が結合したとする。このことに加えて、補体の成分がC1~C9まですべて反応すると、その抗原となっている細胞の膜が壊される場合がある。
上記の反応を細胞溶解反応(細胞障害反応)という。また、細胞溶解反応を起こす抗体のことを細胞障害抗体という。また、細胞溶解反応にあてはまるその他の反応として、溶血反応、溶菌反応があげられる。
溶血反応
赤血球を抗原として起こる細胞溶解反応を溶血反応という。この場合、溶血反応を起こす抗体のことを溶血素という。また、溶血素と結合した赤血球のことを感作赤血球という。
溶菌反応
細菌を抗原として起こる細胞溶解反応を溶菌反応という。この場合、溶菌反応を起こす抗体のことを溶菌素という。
補体結合反応(CF)
抗原と抗体とが結合したもの(抗原抗体複合体)に、補体が結合したとする。このとき、その抗原が細胞以外のものの場合、結合した補体が消費されるのみで、肉眼で確認できるような反応がみられない。
上記のように、抗原抗体複合体に補体が結合し、その補体が消費される反応のことを補体結合反応(CF)という。そして、補体結合反応に関わる抗体のことを補体結合抗体という。
細胞である抗原(赤血球や細菌など)と抗体との抗原抗体複合体に、補体が結合した場合であれば、細胞溶解反応(細胞傷害反応)が起こる。