液性免疫、抗体(免疫グロブリン)の種類・特徴、抗体の産生

抗体(免疫グロブリン)
生体内で抗原の刺激が生じることで、抗体(免疫グロブリン)が産生される。抗体は、対応できる抗原だけを選んで反応を示すタンパク質である。

 

・抗原抗体反応
体に侵入した抗原は、その抗原に対応できる抗体とだけ結合する。これにより、抗原抗体複合体が形成される。

 

 血清とグロブリン
血液のうち、血球と血漿を除いた液体成分のことを血清という。血清の主成分は、アルブミングロブリンという2つのタンパク質である。

 

グロブリンは、αグロブリンβグロブリンγグロブリンの3つに分類される。このうち、とくに抗体を含むのがγグロブリンとなっている。

 

 抗体の種類
抗体には、いくつかの種類が存在する。そのうち、主な抗体とその働きを以下に示す。

 

 ・凝集素 … 細菌や赤血球などの凝集を行う

 

 ・沈降素 … タンパク質や毒素などの沈降を行う

 

 ・補体結合抗体 … 抗原と結合した後に、補体と結合させる

 

 ・オプソニン … 細菌にくっ付き、その細菌を白血球に取り込まれやすくする

 

 ・溶菌素 … 細菌を溶かす

 

 ・抗毒素 … 毒素と結合し、その毒素を無毒化する

 

 ・中和抗体 … ウイルスに結合し、そのウイルスがもつ感染力を失わせる

 

 ・溶血素 … 赤血球を溶かす

 

 

免疫グロブリンの特徴
グロブリンのうち、抗体として働く性質をもつものをまとめて、免疫グロブリン(Ig)という。免疫グロブリンは、IgGIgMIgAIgDIgEの5つに分けられる。

 

・免疫グロブリンの構造
免疫グロブリンの基本構造はY字形をしており、4本のポリペプチドの鎖で構成されている。抗原と結合する方の短い鎖をL鎖(軽鎖)といい、細胞と結合する方の長い鎖をH鎖(重鎖)という。

 

 免疫グロブリンの種類と働き

 

・IgG
抗菌性の抗体や抗ウイルス性の抗体の多くが、それぞれIgGにあてはまる。また、抗体のうち、胎盤を通過できるのはIgGだけである。IgGは、移行抗体となって母胎の免疫を新生児に伝える。

 

今まで侵入したことがない抗原が、体内に侵入した場合、IgMの次にIgGがつくられる(これを一次応答という)。

 

その後、再び同じ抗原が侵入した場合、今度は大量のIgGがすみやかにつくられる。このときのIgGの産生は、一定の期間続く(これを二次応答という)。

 

・IgM
IgMの構造は、4本のポリペプチドで構成される基本構造が5つ集まった形になっている。この構造のため、IgMは、細菌や赤血球を凝集させる作用に優れている。またIgMは、抗体のなかで1番大きな分子量をもつ。

 

IgMにあてはまる抗体には、抗IgG自己抗体(リウマトイド因子)、同種血球凝集素(抗A抗体、抗B抗体)、グラム陰性菌がもつO抗原に対応する抗体などがある。

 

一般的には、抗原が侵入したときには、IgMが最初につくられる。このことにより、IgMがつくられているかを確認することで、その感染症が初感染であるかを判断できる。

 

また、IgMはIgGのように胎盤を通過できない。そのため、IgMが新生児の血清にて確認された場合、その新生児が子宮内感染を起こしている疑いがある。

 

・IgA
IgAには、血清IgA分泌型IgAとが存在する。

 

血清に含まれているIgAのうち、1分子(単量体)のIgAは、J鎖の働きで2分子(二量体)のIgAに変わる。その2分子のIgAに、粘膜で生成される分泌片という物質が結合する。それによって、分泌型IgAがつくられる。つくられた分泌型IgAは、体液へと送られる。

 

分泌型IgAは、粘膜における感染防御を担当している。また、分泌型IgAを多く含むものには、唾液・涙・母乳といった液体や、気道・消化管・泌尿器などの粘膜があげられる。

 

 ・IgD
IgDは、ごくわずかしか血液中に存在しない。また、IgDには重要な働きがあると考えられている。

 

 ・IgE
IgEが血液に含まれる量は、IgDの量よりもさらに少ない。

 

IgEは、自身のH鎖の部分(Fcの部分)によって、好塩基球やマスト細胞(肥満細胞)にくっ付く。この状態のIgEに抗原が結合した場合、IgEと結合している好酸球やマスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出される。この化学伝達物質により、アレルギーが起こる。

 

 

抗体の産生
今まで侵入したことのないタイプの抗原が体に侵入した場合、1週間ほど経過した後に、その抗原に対応するIgM抗体がつくられ、その次に、その抗原に対応するIgG抗体がつくられる。こうした、初回の免疫反応のことを一次応答という。

 

前に侵入した抗原と同じものが体に侵入した場合、最初から、その抗原に対応できるIgG抗体が主につくられる。この場合、大量のIgG抗体がすばやくつくられ、さらに長い間、IgG抗体がつくられ続ける。こうした、2回目の免疫反応のことを二次応答という。

 

この二次応答の働きによって、以前感染したものには二度と感染しなくなる。

 

ワクチンの予防接種では、同じワクチンを複数回注射する方法がある。この方法は、二次応答を起こさせて、免疫が高まった状態を保つのに有効である。この効果のことをブースター効果という。