凝集反応、赤血球凝集反応、標識抗体法

凝集反応
赤血球や細菌などの粒子の抗原を、その抗原に対応する抗体と反応させたとする。すると、抗原と抗体とが結合して凝集し、肉眼で確認できるほどのかたまりを形成する。この反応のことを凝集反応という。

 

・受身赤血球凝集反応(PHA、間接赤血球凝集反応)
溶ける性質をもつ抗原(タンパク質など)を、赤血球などの表面にくっ付けたとする。この場合、その抗原に対して、対応する抗体を反応させた場合、凝集反応を確認できる。

 

上記のような凝集反応のことを、受身赤血球凝集反応(PHA、間接赤血球凝集反応)という。

 

・逆受身赤血球凝集反応
抗体を赤血球の表面にくっ付けておき、そこに対応する抗原を加えたとする。この場合、抗原による、赤血球の凝集を確認することができる。この方法を、逆受身赤血球凝集反応という。

 

 

赤血球凝集反応

 

 同種血球凝集素

 

・血球凝集原
抗原のうち、赤血球の表面に存在するものを血球凝集原という。

 

・血球凝集素
抗体のうち、赤血球凝集反応を起こすものを血球凝集素という。

 

・正常同種血球凝集素
血球凝集素のうち、健康な状態の動物の一個体あたりがもつ血清の中に存在し、同じ種類の動物で別の個体がもつ赤血球を凝集させるものを、正常同種血球凝集素という。

 

正常同種血球凝集素は、人がもつ血清の中にも、自然に含まれている。この血球凝集素は、その人の血液型を判断するのに活用できる。

 

 ABO式血液型
正常同種血球凝集反応をもとにして、血液型をABOABの4つに分けたものをABO式血液型という。それぞれの血液型の人がもつ血球凝集原と血球凝集素とを、その血液型ごとに以下に示す。

 

血液型

血球凝集原

血球凝集素

A型

Aをもつ

β(抗B抗体)をもつ

B型

Bをもつ

α(抗A抗体)をもつ

O型

AもBももたない

αとβの両方をもつ

AB型

AとBの両方をもつ

αもβももたない

 ※O型の赤血球には、Hという抗原がある。ただし、血清の中には、抗Hという正常同種血球凝集素はない

 

・血液型の遺伝
血液型の決定に関わる遺伝子のうち、遺伝子Aと遺伝子Bは、それぞれ遺伝子Oよりも優勢である。一方、遺伝子Aと遺伝子Bとでは、お互いに優劣がない。

 

 Rh式血液型
アカゲザルがもつ赤血球で、ウサギがもつ血清を免疫させ、そのウサギの血清を人の赤血球に作用させたとする。

 

上記のときに、その人の赤血球が凝集を起こした場合、その赤血球をRh陽性という。逆に、その人の赤血球が凝集を起こさない場合、その赤血球をRh陰性という。

 

・免疫血球凝集素
人の免疫によってつくられ、自然には存在しない血球凝集素のことを、免疫血球凝集素という。免疫血球凝集素にあてはまるものとして、抗Rh抗体があげられる。

 

・抗Rh抗体の産生
抗Rh抗体は、IgG抗体であり、自然には存在しないものである。

 

Rh陰性の母親が、Rh陽性の父親との間で、Rh陽性の胎児を妊娠したとする。この場合、母親が胎児のRh抗原に感作される。そして、その母親の体に抗Rh抗体がつくられる。

 

その後、その母親が2人目以降の胎児を妊娠した場合、母親がもつ抗Rh抗体が、胎盤を通過して胎児に移る(抗Rh抗体はIgG抗体であり、胎盤を通過できる抗体はIgG抗体だけである)。

 

上記により、その胎児がもつ赤血球が壊されて、胎児赤芽球症という疾患が起こる。

 

 ※胎児赤芽球症 … 新生児に、症状が重い溶血と黄疸(おうだん)を起こす疾患である

 

また、Rh陽性の人の血液が、Rh陰性の人に輸血されたとする。この場合、輸血を受けたRh陰性の人の体で抗Rh抗体がつくられる。

 

上記の状態のRh陰性の人が、次回以降の輸血をするとき、つくられた抗Rh抗体によって抗原抗体反応が起こり、副作用が現れる。

 

 クームス試験(抗グロブリン試験)
赤血球の表面にあるRh抗原に、人がもつ抗Rh抗体を結合させたとする。この場合、赤血球凝集反応は起こらない。ここに、抗ヒトIgG抗体を加えることで、赤血球の表面の抗原に結合したRh抗体同士が組み合わさる。そして、赤血球凝集反応が起こる。

 

上記の反応を使って抗体を調べることを、クームス試験(抗グロブリン試験)という。クームス試験には、直接クームス試験間接クームス試験とがある。

 

・直接クームス試験
抗IgG抗体を、患者の赤血球に直接加えて、患者の赤血球が凝集するかを確認する方法を直接クームス試験という。直接クームス試験によって、患者の赤血球に抗Rh抗体が結合しているかがわかる。

 

・間接クームス試験
患者の血清、Rh陽性の赤血球の他に、抗IgG抗体を加えて凝集が起こるかを確認する方法を間接クームス試験という。間接クームス試験によって、患者の血清に抗Rh抗体が含まれているかがわかる。

 

 

標識抗体法
抗原と、その抗原に対応する抗体とを反応させるとき、前もってその抗体に標識(目印となるもの)を付けておくことで、付けておいた標識を頼りに、抗原抗体反応が起こったかを確認できる。

 

上記のような確認を行うために用いる標識には、蛍光色素や酵素などがある。

 

 蛍光抗体法
紫外線を当てることで光る蛍光色素を、標識として抗体に付けて、その抗原抗体反応などを調べる方法を蛍光抗体法という。蛍光抗体法には、直接法間接法などがある。

 

・蛍光抗体法の直接法
目的である抗原に対応する抗体そのものに、蛍光色素を付ける。この方法が、蛍光抗体法の直接法である。

 

・蛍光抗体法の間接法
目的である抗原と、それに対応する抗体とを結合させておく。この抗体に対して、対応する抗ヒト免疫グロブリン抗体を、蛍光色素を付けた状態で反応させる。この方法が、蛍光抗体法の間接法である。

 

 酵素抗体法
抗体に標識として酵素を付けて、抗原抗体反応などを調べる方法を酵素抗体法という。また、標識として酵素を付けた抗体のことを酵素標識抗体という。

 

・酵素抗体法の手順
酵素標識抗体を、目的である抗原に結合させておく。ここに、標識としている酵素に反応を起こす基質を加え、反応を起こさせる。そして、その反応から抗原抗体反応などを調べる。

 

 ELISA
ELISAは、以下の手順で行う標識抗体法である。

 

 ①まず、抗原か抗体のどちらかを、特定の固体に吸着しておく。

 

 ②上記のものに、検体(調べたいもの)を加える。

 

 ③吸着しておいたものが抗原であれば検体の抗体と、抗体であれば検体の抗原と結合させる。

 

 ④上記のものに、酵素標識抗体を加える。そして、結合させる。

 

 ⑤上記のものに、酵素標識抗体の酵素に反応する基質を加える。そして、反応させる。

 

 ⑥上記の反応から、抗原抗体反応などを調べる。