補体の経路・性質・成分、モノクローナル抗体(単クローン抗体)

補体
細菌に対して、抗体とともに感染防御作用を起こす成分が、正常な状態の血清に存在する。この成分のことを補体という。

 

補体は、血清の成分のうちの、βグロブリンというタンパク質の分画に含まれている。また、血清のタンパク質のうち、約0.5%ほどを補体が占めると考えられている。

 

・古典経路
異物が侵入して抗体がつくられた場合、抗原抗体複合体によって補体が連鎖的に反応を示す。それにより、さまざまな活性物質がつくられる。

 

上記の補体の経路のことを古典経路という。また、古典経路では、IgMIgGの2つの抗体によって補体が活性化される。

 

・別経路(副経路)
異物が侵入したときに、抗体がつくられる前であれば、その異物によって補体が活性化を起こす。そして、その異物を取り除く。このように、抗原抗体反応に関係なく、補体が活性化する経路のことを別経路(副経路)という。

 

 補体の性質
補体は熱に弱い。30分ほど約60℃の熱が、補体に与えられ続けた場合、その補体の活性が失くなる。このようにして、補体の活性が失くなることを補体の非働化という。

 

補体が活性化して消費されると、補体の量が減ることになる。また、免疫の作用で、補体が増えることはない。

 

 補体の成分
補体を構成する主な成分は、C1(補体第1成分)~C9(補体第9成分)の9つである。これらの補体の成分が正常な血清に含まれているときには、それぞれ活性がない状態になっている。

 

古典経路の場合(抗原抗体複合体の場合)には、補体の成分のうち、C1→C4→C2の順に結合して活性化される。そして、それに続いてC3の活性化が行われる。

 

別経路の場合には、C1、C4、C2の3つの成分の活性を抜かして、C3が活性化される。

 

 補体の成分の働き

 

・C3の働き
補体を構成する成分のうち、C3が1番多い成分となっている。C3は、C3aC3bとの2つに分解される。C3aとC3bは、それぞれ同時に以下の働きを示す。

 

・C3aの働き
C3aは、抗原抗体複合体の周りに散らばって、アナフィラトキシンとなる。アナフィラトキシンによって、ヒスタミンがマスト細胞から遊離した状態となり、毛細血管の透過性が大きくなる。

 

・C3bの働き
抗原抗体複合体にC3bが結合した状態で、C5以下の成分が活性化される。その一方で、C3bが抗原抗体複合体を白血球に取り込ませやすくする。この作用のことをオプソニン作用という。

 

オプソニン作用が起こるのは、C3bを結合するレセプターが、白血球であるマクロファージと好中球のそれぞれの表面に存在するためである。

 

・C5aの働き
C5aは、補体成分のうちのC5から発生する。C5aは以下のような働きをもつ。

 

 ・アナフィラトキシンとなり、毛細血管の透過性を大きくし、白血球をより動員されやすくする。

 

 ・走行性因子となり、白血球を誘導して、食菌作用を支援する。

 

・C5b~C9の働き
補体の成分が、C9まですべて反応した場合、C5b~C9が結合して膜傷害性複合体を構成する。

 

膜傷害性複合体は、抗原が細菌、腫瘍細胞、赤血球、ウイルスに感染した細胞などの細胞膜である場合に、その細胞膜に穴を開けて破壊する。

 

 

モノクローナル抗体(単クローン抗体)
抗原は、自身と結合できる抗体が表面にあるB細胞を選んで刺激を与え、そのB細胞1つに増殖を起こさせる。この場合に、増殖によって増えたB細胞は、もとの1つのB細胞の抗体産生細胞群(クローン)である。

 

抗体産生細胞群(クローン)によって、抗体が1種類だけつくられる。この抗体のことをモノクローナル抗体(単クローン抗体)という。

 

モノクローナル抗体は、1つの決まった抗原だけに対応する抗体である。そのため、細菌などの特定の病原体を調べるなどの場合に役立つ。

 

また、無限に増殖するが抗体をつくらない骨髄腫細胞と、増殖しづらいが抗体をつくることができる抗体産生細胞とを細胞融合することで、抗体の産生と増殖の2つを行える細胞ができる。

 

上記の細胞の培養を続けることで、モノクローナル抗体を獲得できる。また、上記の細胞のように、複数の細胞を融合させてできる細胞のことを、ハイブリドーマという。