過敏症(アレルギー)、自己免疫疾患

過敏症(アレルギー)
生体が特定の抗原からの刺激を受け、さらに同じ抗原に再び刺激された場合、その生体に役立つ免疫反応ではなく、その生体に害となる免疫反応が起こることがある。これを過敏症(アレルギー)という。

 

・アレルゲン
過敏症(アレルギー)を起こす抗原のことをアレルゲンという。

 

・感作
アレルゲンである抗原に対して、生体が敏感になることがある。その状態のことを感作という。

 

・即時型過敏症
生体が感作の状態になってから、抗原に2回目の刺激を与えられたとする。このとき、数分ほど経ってから過敏症(アレルギー)の反応が起こり、それが数時間経つと消えることがある。この過敏症のことを、即時型過敏症という。

 

即時型過敏症は抗体(免疫グロブリン)の作用で起こる液性免疫反応にあてはまる。

 

・遅延型過敏症
上記の即時型過敏症の最初の方と同じく、生体が感作の状態になってから、抗原に2回目の刺激を与えられたとする。

 

このときに、数時間ほど経ってから過敏症(アレルギー)の反応が起こり、それが1~2日で最大の反応になり、そこから数日で消えることがある。この過敏症のことを、遅延型過敏症という。

 

遅延型過敏症は、主に感作T細胞(感作Tリンパ球)の働きによって起こる細胞性免疫反応にあてはまる。

 

 過敏症の種類
過敏症(アレルギー)には、Ⅰ型過敏症(アナフィラキシー反応)、Ⅱ型過敏症(細胞障害反応)、Ⅲ型過敏症(免疫複合体病)、Ⅳ型過敏症(遅延型過敏症)の4つの型がある。

 

また、Ⅱ型アレルギーのなかで、細胞を傷害せず、細胞の機能亢進を行うものを、Ⅴ型アレルギー(刺激型アレルギー)として分ける場合もある。

 

・Ⅰ型過敏症(アナフィラキシー反応)
Ⅰ型過敏症(アナフィラキシー反応)は、即時型過敏症に分類される。Ⅰ型過敏症には、IgE抗体が関与する

 

初めて接触したアレルゲンの刺激によってIgE抗体がつくられると、そのIgE抗体は好塩基球やマスト細胞に結合した状態になる。

 

この状態となったIgE抗体に、以前侵入したものと同じアレルゲンが結合した場合、IgE抗体と結合しているマスト細胞から活性物質(ヒスタミンなど)が放たれる。これによって、アナフィラキシー反応が引き起こされる。

 

アナフィラキシー反応には、局所的に起こるものと全身に起こるものとがある。

 

気管支喘息やアレルギー性鼻炎などは、局所的に起こるアナフィラキシー反応にあてはまる。また、ペニシリンによって起こるペニシリン・ショックなどは、全身に起こるアナフィラキシー反応にあてはまる。

 

・Ⅱ型過敏症(細胞傷害反応)
Ⅱ型過敏症(細胞傷害反応)は、即時型過敏症に分類される。Ⅱ型過敏症には、IgM抗体とIgG抗体が関与する

 

最初に、赤血球などの細胞性の抗原に、IgM抗体、IgG抗体が結合する。ここから起こる細胞傷害反応には、以下の2通りがある。

 

 ・補体のすべての成分の反応によって起こる細胞傷害反応

 

 ・IgG抗体に対応する白血球が結合することで起こる細胞傷害反応(こちらは補体が関与しない

 

また、Ⅱ型のアレルギーのうち、細胞の機能を亢進させ、細胞を傷害しないものが、Ⅴ型アレルギー(刺激型アレルギー)として分けられることがある。

 

・Ⅲ型過敏症(免疫複合体病)
Ⅲ型過敏症(免疫複合体病)は、即時型過敏症に分類される。Ⅲ型過敏症には、IgM抗体とIgG抗体が関与する

 

最初に、可溶性の抗原と、それに対応するIgM抗体やIgG抗体とが結合する。こうしてつくられた抗原抗体複合体のことを免疫複合体という。

 

免疫複合体は、血液の中でつくられるものである。また、細胞に対する親和性がない。

 

血液の中でつくられた免疫複合体は、血管の壁に沈着する。それによって、補体が活性化される。すると、炎症性の反応が起こり、生体の組織が傷害を受ける。

 

上記のように、免疫複合体によって引き起こされる組織の傷害や疾患などのことを、免疫複合体病という。

 

・Ⅳ型過敏症(遅延型過敏症)
Ⅳ型過敏症には、感作T細胞が関与する

 

生体に侵入したアレルゲンと、それに対応する感作T細胞とが結合した場合、その感作T細胞が分化し、それぞれ増殖する。感作T細胞からは、サイトカインとよばれるさまざまな活性物質が放出される。

 

放出されたサイトカインにより、炎症反応が引き起こされる。その一方で、リンパ球やマクロファージの集合、および活性化も起こる。この反応のことをⅣ型過敏症という。

 

Ⅳ型過敏症が現れるまでには、数時間~数日かかる。このことにより、Ⅳ型過敏症は遅延型過敏症ともいわれる。

 

 

自己免疫疾患
特定の原因によって、その個体自身の成分が「非自己」とみなされ、抗原としての作用を起こすことがある。すると、非自己とみなされた成分に対応する抗体である自己抗体や、感作リンパ球が産生される。

 

この結果、自己免疫反応が起こる。自己免疫反応により、過敏症反応(アレルギー反応)が引き起こされて、その個体自身が傷害を受ける。

 

上記のようなメカニズムで、生体自身の成分が抗原とみなされ、自己免疫反応が起こることで引き起こされる疾患のことを、自己免疫疾患という。

 

・免疫寛容、免疫寛容原
何らかの抗原に対し、その抗原に対応する免疫応答が起こらないことがある。それを免疫寛容という。また、このときの抗原のことを、免疫寛容原ともいう。

 

健康な状態のときに、生体自身がもつ成分に対して免疫応答が起こらないのは、その成分自体が免疫寛容の状態になっているからである。

 

・自己免疫反応
自己免疫反応は、以下にあげられることなどが原因となって起こる。

 

 ・ウイルス感染や薬剤との結合などにより、自己成分が変化して異物になること。

 

 ・本来、血液に入り込めない場所にある特定の自己成分が、血液に侵入すること。

 

 ・自己成分に対して、免疫反応が起こらないようにするサプレッサーT細胞の働きが弱まること。

 

 ・自己成分に共通する抗原が生体に入ったことなどにより、免疫寛容が停止すること。