メタボリックシンドロームと動脈硬化

メタボリックシンドロームになった場合、体内に溜め込まれた内臓脂肪から、大量の脂質が送り出されることになります。

 

それによって、HDLコレステロールが減ってしまったり、中性脂肪が増えてしまったりといった状態がもたらされます。そして、動脈硬化が進んでしまうのです。

 

動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞などの原因となる恐ろしいものです。

 

脂肪の蓄積

食事などで摂った栄養のうち、過剰なエネルギーは脂肪へと変換されて、体内に溜め込まれます。

 

体内に脂肪が溜め込まれる場合、最初に肝臓や腸間膜(小腸や大腸を支える膜)に脂肪が溜め込まれます。腸間膜に溜め込まれた脂肪は、内臓脂肪と呼ばれます。

 

そして、肝臓や腸間膜の次に、余った脂質が皮下脂肪として溜め込まれることになります。

 

内臓脂肪と皮下脂肪の違い

皮下脂肪よりも内臓脂肪の方が、合成と分解がより活発に行われます。食事などで摂った栄養のうち過剰なものは、まず内臓脂肪として溜め込まれます。そして脂肪が必要になった場合に、内臓脂肪が分解されて使われます。

 

内臓脂肪では、脂肪が蓄積しやすく、また脂肪の分解も活発に行われます。そのため、内臓脂肪が増加した場合、内臓脂肪に含まれる脂質が、血液の中へとただちに送り出されます。それにより、血液に含まれる脂質の量が増えることになるのです。

 

すると、結果的に中性脂肪の数が増加してしまいます。そして一方では、HDLコレステロールが減ることになります。このような状態を脂質異常症といいます。高脂血症は、動脈硬化を進行させる原因でもあるのです。

 

内臓脂肪と動脈硬化の関係

内臓脂肪が分解されることで、遊離脂肪酸が発生します。発生した遊離脂肪酸は、すぐさま肝臓へと送り込まれます。

 

そして、血液に含まれる脂質を運ぶ働きをもつリポタンパクの中に取り込まれます。それによって、大量にVLDL(超低比重リポタンパク)が生成されることになります。

 

VLDLは、中性脂肪をもっています。そのため、VLDLが増加することで、血液に含まれる中性脂肪の量が多い状態になるのです。

 

VLDLは、体中を巡りつつ中性脂肪をばらまきます。そして、ばらまく中性脂肪がなくなったVLDLは、LDL(低比重リポタンパク)へと変化します。

 

またこのとき、ばらまく中性脂肪がなくなったVLDLの数が多いほど、結果的に大量のLDLが発生することになるのです。

 

LDLが主として溜め込んでいるのは、コレステロールです。そのため、LDLが多くなることで、血液に含まれるLDLコレステロールの量も多くなるのです。

 

LDLは、体中を巡りつつコレステロールをばらまきます。そして、もっているコレステロールの量がわずかになったLDLは、HDL(高比重リポタンパク)へと変化します。HDLは、体内に過剰に存在するコレステロールの回収を行います。

 

しかし、あまりにもLDLの数が多いと、体中のコレステロールが余分になってしまいます。そのため、LDLの数が多過ぎる場合には、LDLはコレステロールを少量しかばらまけなくなります。そして、ほとんどのLDLが、HDLに変化できなくなるのです。

 

LDLコレステロールのうち古くなったものは、活性酸素によって酸化されます。そして、サイズが小さくなって、血管の内皮に入り込んでそこに溜め込まれます。このことが、動脈硬化を進行させてしまいます。

 

その一方で、VLDLがばらまいた中性脂肪が燃やされた場合に、レムナントというものが発生します。このレムナントも、血管の内皮に侵入します。そしてこのことも、動脈硬化を進行させる原因の1つになるのです。

 

また、多くのLDLがHDLに変化できないことで、結果的にHDLコレステロールの量が減少してしまいます。

 

このような形で、メタボリックシンドロームになると脂質異常が起こり、結果的に動脈硬化を進めてしまうことになるのです。