翻訳の流れ

翻訳、コドン
mRNAがもつ、アミノ酸1つあたりの情報となる3つの塩基の組み合わせをコドンという。このコドンをtRNAが認識して、アミノ酸を運ぶ。運ばれてきたアミノ酸が、リボソームに結合することでタンパク質がつくられる。ここまでの流れを翻訳という。

 

また、tRNAがもつ、mRNAのコドンを認識してそのmRNAと結合する領域のことをアンチコドンという。アンチコドンは、3つのヌクレオチドの組み合わせである。

 

・tRNA、アミノアシルAMP
アミノ酸1種類に対して1つ以上のtRNAが対応する。また、真核生物には、それぞれ60種類ほどのtRNAが存在する。

 

tRNAがアミノ酸を運ぶ際、最初に、アミノ酸がATPと反応することで、活性化したアミノ酸であるアミノアシルAMPがつくられる。

 

次に、アミノアシルAMPがtRNAと結合してアミノアシルtRNAとなる。tRNAの3’末端の場所にあるヌクレオチドの塩基3つは、必ずアデニン、シトシン、シトシン(ACC)という組み合わせになる。

 

・サブユニット
真核細胞におけるリボソームは、細胞質内とミトコンドリア内に存在する。リボソームはサブユニットとよばれる粒子として存在し、小さいサイズの小サブユニットと大きいサイズの大サブユニットがある。

 

それぞれのサブユニットの特徴

 

細胞質内では、40Sが小サブユニットとなり、60Sが大サブユニットとなる。

 

・開始コドン、終止コドン
タンパク質をつくらせるコドンはAUGであり、これを開始コドンという。開始コドンはメチオニンに対応するコドンになる。

 

真核生物の場合、tRNAにメチオニンが結合したMet-tRNAMetが開始コドンに結合する。原核生物では、ホルミルメチオニンがtRNAMatについたfMet-tRNAMetが結合する。

 

一方、UAA、UAG、UGAの3つがタンパク質の生成を止めるコドンであり、これらを終止コドンという。

 

 

 翻訳の順序
翻訳には、開始→延長→終結の3つの段階に分けることができる。

 

・開始段階の流れ
開始段階にはeIF(開始因子)というタンパク質が関与する。eIFには1~5までの種類がある。

 

リボソームがeIF3によって、大サブユニットの60Sと小サブユニットの40Sに分けられる。次に、eIF3が40Sに結合し、eIF4が関与することで、40SにmRNAの開始コドンが結合する。

 

tRNAにeIF2が結合しているとき、開始コドンにMet-tRNAMetが結合して40S開始複合体がつくられる(真核生物の場合)。このときに、eIF1がmRNAとtRNAの結合を促す。

 

GTPが加水分解され、40S開始複合体からeIFの1~4が外れる。eIF5の関与で、40Sと60Sが結合し、80S開始複合体をつくる。

 

・延長段階の流れ
延長段階にはeEF(延長因子)が関与する。eEFにはeEF1とeEF2の2種類がある。

 

リボソームがもつサブユニットの60Sには、アミノアシルtRNAの結合場所であるA部位と、ペプチドと結合したtRNAであるペプチジルtRNAの結合場所であるP部位が存在する。

 

 ・1番目
 eIF1の関与で、2つめのコドンに対応するアミノ酸が結合したtRNAがA部位に入る。

 

 ・2番目
 リボソームの60Sのサブユニット内に存在するタンパク質の酵素によって、tRNAMetからメチオニンが離れる。そのメチオニンは、セリンとペプチド結合をつくる。

 

 ・3番目
 mRNAに沿う形で3’末端に向かって、1コドン分だけリボソームが動く。それにあわせて、P部位の位置にいたtRNAがリボソームから離れる。そして、ペプチジルtRNAが、A部位からP部位の位置に移動する。この反応にはeEF2が関わっており、GTPがこの反応のエネルギー源となっている。

 

 ・4番目
 次のコドンに対応したアミノ酸が付与されたtRNAが、A部位に結合する。その後、2番目と3番目の反応が再び行われる。

 

2番目~4番目の反応は何度も繰り返される。それによって、ペプチド鎖が長くなっていく。

 

・終結段階の流れ
終結段階にはeRF(終結因子)が関与する。

 

A部位に終止コドンが入ることで、eRFの関与により、ペプチジルtRNAからリボソームが遊離する。このペプチジルtRNAは、加水分解される。このような形で、ペプチドがつくられる。

 

最後に、mRNAからリボソームが離れて、リボソームが翻訳を行なう場所として再度使われる。

 

ここまでの流れによって、リボソームがmRNAの5’末端から3’末端へと移動する。それにあわせてペプチド鎖ものびていく。

 

その結果、1つのリボソームが終止コドンに着く前に、リボソームが次々mRNAに結合する。このように、mRNA1本に対して、複数のリボソームが結合した状態のものをポリソームという。