産生組織ごとのホルモン、サイトカイン

産生組織ごとのホルモン
内分泌系では、特定の化学物質によって情報が伝達される。内分泌系で、情報を伝える化学物質のことをホルモンという。一方、神経系でも、特定の化学物質によって情報が伝達されている。神経系で、情報を伝える化学物質のことを、神経伝達物質という。

 

内分泌系や神経系、免疫系が生体の一定の状態に保とうとする(恒常性の維持)機能をホメオスタシスという。

 

それぞれの産生組織でつくられるホルモンについて、以下に示す。

 

・視床下部で産生されるホルモン

 

・成長ホルモン放出ホルモン(GRH、もしくはGHRH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 44個)

主な働き

  • 下垂体前葉での成長ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 3個)

主な働き

  • 下垂体前葉での甲状腺刺激ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(GRH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 41個)

主な働き

  • 下垂体前葉での副腎皮質刺激ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 10個)

主な働き

  • 下垂体前葉での黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・ソマトスタチン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 14個)

主な働き

  • 下垂体前葉での成長ホルモンの合成と分泌を抑える。

 

・下垂体前葉で産生されるホルモン

 

・成長ホルモン(GH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 191個)

主な働き

  • 肝でのインスリンの成長因子であるソマトメジンの合成を促す。
  • 体の成長を促す。

 

・甲状腺刺激ホルモン(TSH)
構造 : 糖タンパク質(アミノ酸の数 : 198個)

主な働き

  • 甲状腺ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 39個)

主な働き

  • 副腎皮質ホルモンの合成と分泌を促す。

 

・黄体形成ホルモン(LH)
構造 : 糖タンパク質(アミノ酸の数 : 215個)

主な働き

  • 精巣でのアンドロゲンの合成と分泌を促す。
  • 卵巣での排卵と黄体の形成を促す。

 

・卵胞刺激ホルモン(FSH)
構造 : 糖タンパク質(アミノ酸の数 : 207個)

主な働き

  • 精巣での精子の形成と精細管の成熟を促す。
  • 卵巣での卵胞の発育と成熟を促す。

 

・プロラクチン(PRL)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 198個)

主な働き

  • 乳汁の分泌を促す。

 

・下垂体後葉で産生されるホルモン

 

・バソプレッシン(抗利尿ホルモン、ADH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 9個)

主な働き

  • 血圧を上げる。
  • 腎での水の再吸収を促す(抗利尿作用)。

 

・オキシトシン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 9個)

主な働き

  • 乳汁の射出を促す。
  • 子宮の平滑筋の収縮を行う。

 

・甲状腺(上皮小体)で産生されるホルモン

 

・トリヨードチロニン(T3)、チロキシン(T4)
構造 : アミノ酸誘導体

主な働き

  • 酸素の消費を促す。
  • 熱の産生を促す。
  • 成長と基礎代謝を維持させる。

 

・カルシトニン(CT)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 32個)

主な働き

  • 腎からのカルシウムとリン酸の排泄を促す。
  • 血漿に含まれるカルシウムとリン酸の濃度を下げる。
  • 骨からのリン酸カルシウムの放出を抑える。

 

・副甲状腺で産生されるホルモン

 

・パラトルモン(副甲状腺ホルモン、PTH)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 84個)

主な働き

  • 腎からのカルシウムの排泄を抑える。
  • 腎からのリン酸の排泄を増やす。
  • 腎でのビタミンDの活性化を促す。
  • 骨からのリン酸カルシウムの放出を促す。

 

・心臓で産生されるホルモン

 

・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 28個)

主な働き

  • 血管の平滑筋を弛緩して血圧を下げる。
  • 腎血管を拡張させることによる利尿。

 

・すい臓(膵臓)で産生されるホルモン

 

・インスリン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 51個)

主な働き

  • 脂肪組織での脂肪の合成と糖の吸収を促す。
  • 筋肉の糖の吸収を促す。
  • 肝・筋肉でのグリコーゲンの合成を促す。
  • 肝での、アミノ酸などで糖をつくる糖新生を抑える。

 

・グルカゴン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 29個)

主な働き

  • 肝での糖新生を促す。
  • 肝でのグリコーゲンの分解を促す。

 

・胃で産生されるホルモン

 

・ガストリン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 17個)

主な働き

  • 胃酸の分泌を促す。

 

・小腸で産生されるホルモン

 

・コレシストキニン(CCK)
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 33個)

主な働き

  • 膵(すい)からの消化酵素の分泌を促す。
  • 胆のう(胆嚢)の収縮を促す。

 

・セクレチン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 27個)

主な働き

  • 膵からの重炭素塩の分泌を促す。

 

・副腎皮質の球状層で産生されるホルモン

 

・鉱質コルチコイド(アルドステロン)
構造 : C₂₁ステロイド

主な働き

  • 腎での水素イオン・カリウムイオンの排泄を促す。
  • 腎での塩素イオン・ナトリウムイオンの再吸収を促す。

 

・副腎皮質の束状層で産生されるホルモン

 

・糖質コルチコイド(コルチゾールや、コルチコステロン)
構造 : C₂₁ステロイド

主な働き

  • 顔・胴の脂肪沈着を促す。
  • 体タンパク質の分解を促す。
  • アミノ酸などから糖をつくる糖新生を促す。

 

・副腎皮質の網状層で産生されるホルモン

 

・アンドロゲン(男性ホルモン)
構造 : C₁₉ステロイド

主な働き

  • 精子形成を促す。
  • 男性の二次性徴の発現(男性らしい体つきになる)。

 

・副腎髄質で産生されるホルモン

 

・アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
構造 : アミン

主な働き

  • 糖質・脂質の代謝を促す。
  • 平滑筋の収縮。
  • 心拍出。

 

・卵巣の黄体で産生されるホルモン

 

・ゲスターゲン(黄体ホルモン)
構造 : C₂₁ステロイド

主な働き

  • 乳腺の発育を促す。
  • 性周期の後半を維持させる。

 

・卵巣の卵胞で産生されるホルモン

 

・エストロゲン(卵胞ホルモン)
構造 : C₁₈ステロイド

主な働き

  • 性周期と生殖機能を維持させる。
  • 女性の二次性徴の発現(女性らしい体つきになる)。

 

・胎盤で産生されるホルモン

 

・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
構造 : 糖タンパク質(アミノ酸の数 : 237個)

主な働き

  • 妊娠の維持。

 

・精巣で産生されるホルモン

 

・アンドロゲン(男性ホルモン)
構造 : C₁₉ステロイド

主な働き

  • 精子形成と生殖機能を促す。
  • 男性の二次性徴の発現(男性らしい体つきになる)。

 

・脂肪組織で産生されるホルモン

 

・レプチン
構造 : ペプチド(アミノ酸の数 : 146個)

主な働き

  • 食欲を抑える。
  • 脂肪の分解を促す。

 

サイトカイン
体の免疫に関係する細胞によってつくられ、細胞同士の情報伝達に関わるタンパク質をサイトカインという。免疫に関係する細胞には、リンパ球マクロファージなどがある。

 

サイトカインはホルモンと同じように、それぞれ対応する受容体に結合することで様々なはたらきを行う。

 

サイトカインの種類とおもな作用

 

・インターロイキン(IL)
IL-1 : リンパ球B細胞の活性化

 

IL-2 : リンパ球T細胞の増殖と分化を促す

 

IL-3 : 造血系の細胞の増殖と分化を促す

 

IL-4IL-5IL-6 : リンパ球B細胞の増殖と分化を促す

 

・インターフェロン(IFN)
IFNαIFNβIFNγ : 抗ウイルス作用を示す

 

・コロニー刺激因子
エリスロポエチン(EPO) : 幹細胞から赤血球への分化を促す

 

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) : 幹細胞から好中球への分化を促す

 

マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF) : 幹細胞から単球への分化を促す

 

・腫瘍壊死因子
TNFαTNFβ : 腫瘍細胞の増殖を抑える

 

・増殖因子
上皮増殖因子(EGF) : 上皮細胞の増殖を促す

 

線維芽細胞増殖因子(FGF) : 線維芽細胞の増殖を促す

 

神経成長因子(NGF) : 神経細胞の増殖を促す

 

サイトカインには、1つの種類で複数の活性を示すものが多く存在する。上記には、IL-1のおもな作用はリンパ細胞Bの活性化となっている。しかしIL-1には、破骨細胞の活性化、繊維芽細胞の増殖の促進、腫瘍細胞の増殖の抑制など、他にも様々な作用を示す。

 

また、別のサイトカインの分泌を促すサイトカインや、複数のサイトカイン受容体をもつ細胞が存在することによって、サイトカインに関する細胞間相互作用が複雑になることもある。