甲状腺・副甲状腺ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド

甲状腺ホルモン
器官の上部の前方の位置に甲状腺がある。甲状腺は、蝶(ちょう)のようなかたちをしている。甲状腺から分泌されるホルモンを甲状腺ホルモンという。

 

甲状腺ホルモンの名称とそのおもなはたらきを下に示す。

 

・トリヨードチロニン(T₃)、チロキシン(T₄)
トリヨードチロニンとチロキシンのおもなはたらきは、酸素消費・熱産生の促進、生体の成長・基礎代謝の維持である。

 

・カルシトニン
カルシトニンのおもなはたらきは、骨のリン酸カルシウムの放出を抑える、腎のリン酸・カルシウムの排泄を促進、血漿(けっしょう)のカルシウムとリン酸の濃度を低下である

 

 甲状腺ホルモンの違い
甲状腺ホルモンには、アミノ酸構造をもち、アミノ酸誘導体であるホルモンと、ペプチド構造をもつペプチドホルモンがある。

 

 ・アミノ酸構造をもち、アミノ酸誘導体である甲状腺ホルモン
 トリヨードチロニン(T₃)、チロキシン(T₄)

 

 ・ペプチドの化学構造をもつ甲状腺ホルモン
 カルシトニン

 

・トリヨードチロニン(T₃)、チロキシン(T₄)
トリヨードチロニン(T₃)とチロキシン(T₄)は、甲状腺で生成される糖タンパク質であるチログロブリンがもつチロシン残基のヨウ素化や、ヨウ素化したチロシン残基同士の縮合などの反応を経て生成される。

 

トリヨードチロニンの記号表記T₃と、チロキシンの記号表記T₄の数字の部分は、ヨウ素原子の数を示している。

 

チロキシンは、トリヨードチロニンに比べて甲状腺での分泌量が多い。

 

しかし、チロキシンの大部分は末梢の組織による脱ヨウ素化の反応を受けることで、トリヨードチロニンに変化する。その結果、トリヨードチロニンが作用する割合の方が大きくなる。

 

トリヨードチロニンとチロキシンは、どちらも視床下部ホルモン、下垂体前葉ホルモンによって調節される。

 

 甲状腺の異常
甲状腺の異常によっておこる病気としてバセドウ病(グレーブス病)がある。

 

・バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺の異常によって増加する自己免疫疾患である。

 

バセドウ病では、甲状腺に存在する甲状腺刺激ホルモンの受容体に対応する自己抗体がつくられる。その自己抗体は、甲状腺刺激ホルモンと同じく、甲状腺に刺激を与え続ける。

 

これにより、血液に含まれるトリヨードチロニン(T₃)とチロキシン(T₄)の量が、それぞれ増やされるのである。

 

バセドウ病のおもな症状としては、動悸や神経過敏、眼球の突出などがあげられる。

 

副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン、パラトルモン)
甲状腺の裏側にある米粒くらいの大きさの器官を副甲状腺(上皮小体)という。通常では、甲状腺の左右の上下に1個ずつの副甲状腺がある。

 

副甲状腺で分泌されるホルモンを副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン、パラトルモン)という。副甲状腺ホルモンは、ペプチド構造をもつペプチドホルモンである。

 

副甲状腺ホルモンのおもなはたらきは、腎からのリン酸の排出を増やす、腎からのカルシウムの排出を抑える、腎でのビタミンDの活性化の促す、骨からのリン酸カルシウムの放出を促すことである。

 

心臓ホルモン
心臓で分泌されるホルモンには、心房性ナトリウム利尿ペプチドがある。

 

 心房性ナトリウム利尿ペプチド
心房性ナトリウム利尿ペプチドは、ペプチド構造をもつペプチドホルモンである。心房性ナトリウム利尿ペプチドのおもなはたらきは、血管の平滑筋弛緩によって血圧を下げる、腎血管の拡張による利尿である。