無機質、水

無機質について
無機質は、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)以外の生理機能をもつ元素である。

 

生体にある主な無機質とその量を表で示す。

 

無機質 体重に対する割合(%)
カルシウム(Ca) 1.4
リン(P) 1.1
硫黄(S) 0.2
カリウム(K) 0.16
ナトリウム(Na) 0.16
塩素(Cl) 0.14
マグネシウム(Mg) 0.03
鉄(Fe) 0.006
フッ素(F) 0.004
ケイ素(Si) 0.003
亜鉛(Zn) 0.003
銅(Cu) 0.0001
マンガン(Mn) 0.00002
ヨウ素(I) 0.00002

 

 カルシウム
カルシウムは、その約99%が炭酸塩、リン酸塩、フッ化物の形で骨や歯の成分になる。残りの約1%は、血液などの細胞の液体中にカルシウムイオン(Ca²⁺)の形で存在する。

 

カルシウムイオンは、生体の恒常性や細胞の機能維持に重要なものである。また、ホルモン作用の情報伝達に関与する場合もある。さらに、血液の凝固に欠かせない物質でもある。

 

 リン
リンは、約80%が歯や骨の中にリン酸カルシウムの状態でおもに存在し、一部がリン酸マグネシウムの状態で存在する。残りの約20%は、核酸、リン脂質、リンタンパク質、ヌクレオチド、補酵素などの構成成分になる。

 

 硫黄
硫黄は、含硫アミノ酸、補酵素、グルタチオンなどの構成成分になる。

 

 カリウム
カリウムは、カリウムイオン(K⁺)の状態で細胞内液の陽イオンとなって存在している。そして、水分平衡や細胞内液の浸透圧を保つことに関わっている。また、酵素の活性化、筋肉の活動、神経伝達などにも関わっている。

 

 ナトリウム
ナトリウムは、そのほとんどが細胞外液にナトリウムイオン(Na⁺)の状態で存在する。細胞外液の浸透圧を保つのに関わっている。また、水分の代謝や神経伝達などにも関わっている。

 

 塩素
塩素は、塩素イオン(Cl⁻)の状態で、細胞外液の陰イオンとなって存在している。水分平衡に関わっている。さらに、ナトリウムイオンと同じく細胞外液の浸透圧を保つのに関わっている。また、胃液の構成成分でもある。

 

 マグネシウム
マグネシウムは、約70%がリン酸マグネシウムの状態で骨や歯に含まれている。他にも、細胞内液や細胞外液に、マグネシウムイオン(Mg²⁺)の状態で存在している(細胞内液に多い)。マグネシウムイオンは、酵素の補助や神経の興奮を抑えたりするなどのはたらきをもつ。

 

 鉄
は、約70%がヘモグロビン内のヘムの構成成分になる。残りの内訳として、約25%が貯蔵鉄となり、約5%がミオグロビン内のヘムの構成成分になる。また、ヘムタンパク質の構成成分にもなる。

 

 亜鉛
亜鉛は、炭酸脱水酵素やアルコール脱水素酵素などの補助因子になる。生体の成長や生殖に関わっている。亜鉛2原子にインスリン6分子が結合した状態で、すい臓のランゲルハンス島β細胞の分泌顆粒に含まれている。

 

 銅
は、血漿の中でセルロプラスミン(フェロオキシダーゼ)というタンパク質に結合している。セルロプラスミンは、酸化によって第一鉄イオンを第二鉄イオンにするはたらきをもつ。

 

銅は、アミン酸化酵素などの特定の酵素の補助因子になるはたらきをもつ。また、ヘモグロビンによるヘム合成には、銅を補助因子とする酵素が関わる。このことから、体内の銅が欠乏した場合には、貧血をおこす恐れがある。

 

 マンガン
マンガンは、生殖や骨の形成に必要なものである。また、アルギナーゼなどの特定の酵素の補助因子になるはたらきをもつ。

 

 ヨウ素
ヨウ素は、甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン、チロキシン)の構成成分である。体内のヨウ素が足りなくなってくると、甲状腺腫になる恐れがある。

 


水は、人間の体重の約60%を占めている。水は、生体でさまざまな反応を起こすのに必要不可欠な物質である。1日に約2.5?もの水が体に入ることになり、体の外に出る水の量も約2.5?である。

 

・不感蒸泄
肺・皮ふから無意識で外に排出している水分を不感蒸泄という。

 

・不可避尿
体内の老廃物などの排泄に必要となる1日あたりの最少尿量を不可避尿という。

 

・代謝水
体内で栄養素の酸化によって発生する水のことを代謝水(酸化水)という。

 

・水素結合
水分子の酸素原子にはわずかに負の電荷があり、逆に水素原子にはわずかに正の電荷がある。これにより、ある水分子の水素原子と、他の水分子の酸素原子が、互いがもつ電気のはたらきで結合する。この結合を水素結合という。